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【第8話・花を咲かせてみようか】

 「ここは、俺に任せな。」


 草相手に、どこで情報を仕入れたのか、心の金庫に、がっちりしっかりしまっておいたハズの、思い出したくない過去を、ほじくり返され、力尽き、項垂(うなだ)れていると、いつの間にかレーベンが横に来て私に言った。

 思わず、顔を上げると、私の肩に手を置いた。


 「レーベン?」


 「リステル、コイツは『セイカクガモノスゴクワル草』と言ってな、元々は、ただの薬草だったんだが、学者が色々といじくって、万能薬として、改造した草なんだ。効き目は抜群なんだが、まぁ、アレだ、薬としての効能を追求したあまり、その他の所に、悪いところが凝縮してしまったらしくてな、簡単に言うと、草自身の性格が、ひん曲がってしまったってヤツだ。平たく言うと、『物凄い美人なんだけど、性格が残念』、そんな感じか。」


 「へぇ・・・この草って、薬なんだ。」


 「あぁ、ちゃんと開花させた時の花びらを、煎じて飲むと、風邪だろうが、切り傷だろうが、イボだろうが、内臓の疾患だろうが、失恋の心の傷だろうが、厨二病だろうが、たちどころに・・・って噂だぞ。」


 「・・・すごいね。」


 「まぁな、でもそれなりの効果を得るんだ、リスクは伴うのさ。」


 と、言いつつ、レーベンが、(つぼみ)に戻ってしまった草の茎をつまんだ。

 

 「あれ?レーベンも、『樹木使い』なの?」 


 「違ぇよ、そういえば、お前に言ってなかったな。俺は『変換師』じゃないが、ちょっと特殊な体質でな、リステル、俺の手首を握れ。」


 「あ?え?・・・えぇ。」


 彼に言われたまま、手首を握った。すると


 「そのまま、いつもやってるように、力を使うんだ。ただ、今までの半分以下の力だ、やれるか?」


 「どういう意味?」


 「俺自身、変換の力は使えない、俺の能力は、『増幅』ってヤツだ。」


 「ぞうふく?」


 「簡単に言うとだ、俺自身じゃ変換師の力は使えねぇ、でも、俺の体を通すとだ、アラ不思議、能力が倍以上になるんだよ。本来は、力の弱い変換師のための力なんだがよ、こういった使い方も出来るとは思ってなかったぜ。まぁ、物は試しだ、俺の心がいくらブレようが、術者はお前、邪魔が入んなきゃ、集中力は途切れないだろ?」


 「そういうことなのね・・・。」


 彼の言葉に頷くと、弱めに力を開放する。


 『サブスタンスチェンジ。』


 すると、私の力に呼応するかのように、蕾が膨らみ、花が咲いた。

 そして、案の定、花の中心から、一杯歯の生えた、口が現れる。


 「・・・来た。」


 見ていると、その口が、モゴモゴと動くものの、何を言っているのかは私には、聞こえない。

 彼に、何か言っているのだろう、すると、彼が涼しい顔をしながら、独り言のように呟いた。


 「だからどうした?」


 その後も、花が変化をする度に、彼に何かを言っているのだが、当の本人は、人事のように『ふぅん。』とか『あー、そんなこともあったっけ、忘れてたなー。』とか、全く気にしていない様子だった。

 終始、そんな調子が続き、気が付くと、目の前には、金色の花びらを纏った、一本の花が出来上がった。すると


 「リステル、もういいぜ。」


 レーベンが私を見て、笑った。


 「え?あ、はい。」


 彼の言葉に、手首を離すと


 「やれやれ、こんなもんか、一体何を言われるかと思ってたけどな、あっけないもんだな。」


 「レーベン、一体、何を言われたの?」


 「ん?聞きたいか?」


 「聞きたい。」


 「じゃあ・・・」


 と、彼が喋り出した。それはもう、聞いている私でも小っ恥ずかしくなるような、厨二病前回の思い出話。

 

 「いや、もういいです、お腹いっぱいになりました。」


 「そうか?」


 「アンタ、そんな痛い話、よく恥ずかしげもなく人に話せるわねぇ。」


 すると


 「はぁ?リステル、考えてみろよ、大体、生きてりゃ、色々やらかすだろ?みんなそうだ、でもよ、お前、元の世界、『日本』っていったか?友達とか、色々とやらかしてんの、見てるだろ?でも、すぐに思い出せるか?」


 彼の言葉に、友達がやらかしたことを、思い出してみる。うーん、イマイチ覚えてないんだよなぁ。

 そんな私の表情を見て


 「思い出せねぇだろ?大概、周りってのは、自分のことなんて、見ているようで見てねぇもんだ。さっきすれ違った人すら、ちゃんと覚えてねぇくらいさ。今した話だって、明日になりゃ、ほとんど忘れてるはずさ、そんなもん、いちいち気にしてたら、身が持たねぇよ。」


 そう言って笑っていた。

 確かに、いちいち気にしていても、しょうがないのか。

 まぁ、反省はすれど、後悔はしない、そんな風に思っていればいいのかな?そう、思うことにした。



  □■□



 「おぉ!ありがとうございます!お二方には何とお礼を申し上げていいのやら!」


 金色に色づいた花を見て、歓喜の声を上げる、食堂の店主、テカテさん。

 これで、依頼はこなしたことになるんだろう、食事代もチャラになって、無罪放免、しかも報酬も入って、心もサイフの中身もホックホク。

 しかし、気になるのは、この万能薬と言われるこの花びら、店主はどこを見ても、健康そのものなんだけど、一体、何に使うつもりなのかしら。

 まぁ、あまり、人のプライベートに踏み込むのは良くないのか、異次元の世界とはいえ、この辺は、一緒みたいだし。


 その後、テカテさんのはからいで、報酬を貰い、ここに併設されている、宿の代金までタダにしてもらった。

 もう、願ったり叶ったり、今回は、野宿は避けられないと思っていただけに、私にとっては、ビッグなプレゼントになった。

 とりあえず、宿と、食事の心配をしなくてよくなった私は、レーベンに言った。


 「ありがとね、レーベン、お陰で助かったわ。また、どこかで会ったら、お茶くらいは付き合ってあげるわよ。」


 すると


 「何言ってんだ、さっきお前、言ったろ?『彼はパートナーです。』って。決めた、俺はお前についていく。色々と面白そうだしな。」


 「はぁ?それって確定なの?」


 「あぁ、そんじゃこれからもよろしくってことで、リステル、とりあえず、飯でも食うか!」


 そう言いつつ、レーベンは私の腕を引っ張った。


 「ちょっ!ちょっと何でよ!どうしてそうなんのよー!」


 そんなわけで、ひょんなことから、パートナーが出来た。

 余談だけど、その後、二人でご飯を食べているときに、店の外から若い男性の大声がした。


 「いよーっし!体に力が(みなぎ)るっ!今日から、バリバリ働くぞー!そんで、ついでに彼女も作って、リア充街道まっしぐらだー!もう、引きこもり生活とはオサラバするぞ!うっひょー♪」


 その声に続いて


 「おぉ!やっとこの店を継いでくれる気になってくれたか!息子よ!」


 どこかで、聞き覚えのある声がした。


 「勿論さ!父ちゃん、色々苦労かけたな!今日から俺は、この『42ビロウ』を大きくして、楽させてやるから!」


 ・・・うん、すごい効き目だなぁ、あの薬。


 つづく

今回のお酒の紹介。

 

 『42(フォーティツー)ビロウ』(ニュージーランド)

 

 ウオッカでね。

 今まで、使ったお酒の名前の、元となるものは、飲んだことのあるお酒でしたが、今回は、飲んだことがありません。

 まぁ、ワタクシ、毎日、仕事をしながら、小説の筋書きを考えつつ、何か物語に使えないかと、酒の並んだ棚を眺めとるわけなんです。

 今回のお酒、前々から、ずっと気になっていたんですよ。

 デカデカと、『42』って書いてありますし、瓶も綺麗だなーって思ってました。

 しかも、種類が多くて、パッションフルーツや、キウイフルーツの風味がつけてあったりします。

 何とも不思議な感じのお酒ですが、機会があれば、飲んでみたいと思ってます。


 それではまた、作者でした。


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