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【第37話・仲間を加えてみようか】


「それでは、お気をつけて。」


 私達に深々と頭を下げるのは、魔王の側近で秘書的な存在の格好がエロいお姉さん。そして、私が勝手に心の中で、『ポークビッツ』と名付けた彼女が、門の外まで見送りに来てくれていた。


「はい、色々とありがとうございました。」


 するとその時、私の頭上から声がした。


「ここからは俺っちの出番だな。」


 その声に、思わず上を見ると、真っ赤な悪魔みたいな格好のモノが、フヨフヨと浮いていた。

 まさしくそれは、この城に私達を拉致した張本人。こちらを見ながらニタニタと笑っている。


「アリマ、この者達を森の出口付近まで頼むぞ。」


 ポークビッツが赤い悪魔に言うと、彼が私達の目の前に降りてきて言った。


「任せておきなって。この森は俺っちの庭みたいなものさ。きっちり仕事はするぜ・・・って、あれ?タケツルも一緒なのか、ってことは、魔王様、本格的に動くことにしたんだな。」


「そういうことだ。タケツルはともかく、万が一にもお前の姿はあのPTAに見られてはならんぞ。アイツ等と、我々の戦争になりかねんのでな。」


 二人のやりとりを聞いていると、どうやら魔族とPTAってのは、かなり微妙な関係にあるらしいな。

 これから向かうのは、あくまで小さな支部の一つ。とはいえ、慎重に事を運ばないと厄介なことになるな・・・と、いつの間にか前を行くアリマと呼ばれた魔族、彼の後ろをみんなでついて行きながら、その姿をボーっと眺めていた。

 全身真っ赤な体、黒い羽根、そして坊主頭。しかも名前が『アリマ』。・・・あれ?どこかで見たようなことがあるようなないような。


「ときにアリマさん?」


「なんすか?ってゆうか『さん』付けは要らないっすよ。」


「え?あ、そう。ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかしら?」


 そう言うと、彼が振り向き、私を見た。


「なんすか?」


「いや、あの、その・・・ヒゲ面の騎士に槍やら斧やら投げつけられた挙句、『スクロール消し』とかされたことってあったりする?」


 するとアリマは不思議そうな顔をしながら言った


「無いっす。ってゆうか、そもそもウチら魔族は基本、戦いってのを好まないっす。」


 へぇ、そうなんだ。私がイメージしている魔族とは、随分違うんだなぁ。


「とはいえ、同族には厳しいっすね。ここら一帯でヘタなことやらかしたら、大変な事になるっす。魔王様はキレさせたら怖いっすからね。」


 ・・・マジ?

 私、結構お城の中でアホみたいなこと言ってたけど、無事で済んで良かったわ。ってか、アリマの口ぶりから、魔族には厳しくても、人間にはそうでもないのか。あぁ良かった。

 そして、彼の事もなんとなくわかった。姿格好はいかついけど、いきなり空から襲われた揚句、鎧を一瞬で剥がれてパンツ一丁になる心配な無いんだ。

 まぁ、オフの日の悪徳商会の役者さんみたいなものか。

 そうなると気になるのは、ついさっき紹介されて、旅に同行することになった、タケツルとかいうネコの存在。

 魔王は『足を引っ張ることはない』とは言っていたものの、二足歩行をすることを除けば、見た感じタダのネコ。

 ふっとタケツルを見ると、愛くるしいその姿がいたく気に入ったのか、マリブが一方的にじゃれついていた。


「きゃあ!モッフモフ、モッフモフ、かわいい!にゃんにゃんおー♪」 


「ぎにゃっ!ボクの尻尾を掴むんじゃないニャ!人の嫌な事をしたらダメって言われなかったニャか?」


「嫌なのぉ・・・?あたしはこんなに楽しいのに。」


 悲しそうな顔をするマリブに、人・・・いやもといネコがいいのか


「いや、あの・・・ちょっとだけなら・・・いいニャ。」


「やったぁ♪」


「ぎにゃっ!だからもうちょっと優しく・・・ってニャー・・・。」


 はは・・・は、この世界じゃ精霊族の方が好戦的ってことなのかな。

 その間にもマリブに尻尾を掴まれまくっているタケツルがちょっと不憫になり彼女に言った


「マリブ、その辺でやめたげなよ。」


「えー、だって、モッフモフで気持ちいいんだもん。」


「気持ちはわかるけど、嫌がってんじゃん。アンタ、自分でいつも言ってんじゃん、大人だ!って。大人なら人の嫌がることしちゃダメなのよ。」


 子供と言われることを、ことのほか嫌がるマリブを諭すには、これが一番。するとマリブは『わかった。』と言いながら、タケツルの尻尾から手を離した。


「た・・・助かったニャー。」


 それに安堵のため息をつくタケツル。

 落ち着いたのを見計らって、彼に質問することにした。


「ねぇ、アンタって、魔王・・・様のところでは、どんな仕事をしてたの?」


 するとタケツルが


「ボクかニャ?ボクの仕事は主に偵察だニャ。体も小さいし、アリマと違って小回りも利くニャ。それに、空も飛べるし、土にも潜れるニャ。」


「空?ってゆうか見た感じ羽根なんてどこにも無いじゃない、どうやって飛ぶの?」


 見た感じ、ただのネコ、日本に連れ帰ったとしても、喋らなければわからない風体に驚いていると、タケツルが言った。


「こうするニャ。」


 声と同時に、彼の背中から真っ黒な羽根が突然開き、宙を舞う。

 

「なっ・・・!?」


「羽根なんて歩くのに邪魔なだけだからニャー、普段はしまっているニャ。こう見えてもボクは・・・アンパイヤー?」


「それは野球とかの審判。」


「それじゃあエンパイヤー?」


「それはクリーニング屋。」


「えぇとニャ・・・アンパン屋?」


「牛乳とよく合うわね。大人になったら理解できる組み合わせよ。ってか単品だったら店として成り立たないわよ。それで?結局何が言いたいの?」


 この子は結構バカかもしれない、そう思った時、レーベンが割って入ってきた。


「ヴァンパイアって言いたいのか?」


 するとタケツルの目が輝き


「そうニャそうニャ!『ヴァンパイア』だニャ。」


 ・・・自分のことを忘れるなんて、魔族ってのは本当にのんびりとした種族なんだなぁ。

 ってか、タケツルの場合、『ヴァンパイア』じゃなくてニャンパ・・・いや、これは版権やらひっかかるから『ヴァンパイニャ』ってことかしら。

 何か一気に凄みが皆無に等しくなっちゃったわね。

 でも・・・アレ?待てよ。ホンモノのヴァンパイアなら太陽の光とかマズいんじゃなかったっけ?


「ねぇタケツル。」


「何ニャ?」


「アンタ、太陽の光とか浴びて大丈夫なの?」


「不思議な事言う人間だニャ、ボクは陽だまりで昼寝をするのがライフワークだニャ。」


「いや、その、私の世界の『ヴァンパイア』ってのは闇の住人で、人を襲って血を吸ったりする魔物なのよ。映画・・・いや、物語では太陽の光を浴びせて倒すってことがあってね。」


「異世界の同族ってのは恐ろしいことするニャー。それに血を吸うってのは大昔の話ニャ、今のボクらはちゃんと三食バランス良く食べて、栄養にも気を遣うってのが周知の常識だニャ。元の世界に還ったら言っておいてくれニャ、血だけじゃ鉄分しか摂れないニャって。ちゃんとタンパク質や脂質もとりつつ野菜を多めに食べて・・・あ、生じゃなくて、軽く火を通したほうがからだに吸収されやすいニャ。それに食べ過ぎると逆に体に悪いからニャ、腹八分目がベストだってニャ。」


「・・・あ、はい。伝えておきます。」


 異世界に来てまで、ネコに食生活について言われるとは思ってなかったわ。

 その間も、アリマに続き、おどろおどろしい森の中を進む。

 最初は、草をかきわけかきわけ進んだ道も、次第に背が低くなり、とうとう土が露わになった一本道に出た。

 するとその時、アリマが振り向き、森の外だと思われるところを指さしながら


「俺っちはここまでっす。後は道なりに進むと、例の街の外れに出るっす。くれぐれも騒ぎは起こさない方が身のためっすよ。それじゃ、この辺で。」


 そう言うと、元来た道を戻って行った。

 そんな彼の背中を見送った後、アリマの指した方を見ると、うっすらと明るくなっているところが見える


「レーベン、とうとう来たわね。」


「あぁ。」


「あそこに先生が居るのかな。」


「だといいな。そして、ちゃんと話が出来るといいな。でも、どういうい結末が待っているかはわからんぞ?それでもいいのか?」


 そう言いながら、レーベンは私の頭をポンと叩いた。


「うん・・・。ちょっと怖いけど、先生のこと、信じてるから。それに、レーベンやマリブも居るしね。」


 私は頭に置かれたままのレーベンの毛むくじゃらの手を、そっと握った。


「そいじゃ、いっちょ行くか。マリブ、タケツル、真実を確かめに行くぞ!」


 レーベンが元気に言ったその時。


「ボクは偵察に行くだけなんだけどニャ。ま、乗りかかった船ってとこかニャー・・・。」


 タケツルがボソっと言った。


 ‐つづく‐

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