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【第29話・遭遇してみようか その3】

 【ドドォォン・・・ドォォン・・・】


 少し離れたところで、何かが壊れるような音がすると、その度、船が揺れる。

 その揺れを感じる度に、胃の中から色々とこみ上げる。それを慌てて何とか抑えて、飲み込んだ。


 「うえっぷ・・・もう、吐くものがねぇって・・・。」


 この体勢も、限界か・・・。

 

 横向きの状態から、仰向けになった。

 薄汚れた天井が、ぼやけて見えた。しかし、一体何が起こってんだ?

 そういえば、何か船からアナウンスがあったようだったが、ちょうどトイレに篭っていて、良く聞き取れなかったんだよな。

 それに、帰ってくると、さっきまでポツリポツリといた客もみんな、どこか行っちまって客室内が、ガランとしていた。

 まぁ、その方が、気兼ねなく静かに横になれて、嬉しいんだがよ。

 

 「もうちょっと、寝るとしますかね。」


 一人呟き、フードを深く被り直した。

 うっかり誰かが戻ってきて、獣人の俺の姿を見たら、何言われるかわかったもんじゃねぇしな。

 顔をフードですっぽりと覆い、目をつぶったその時


 「おい!まだここに人が残ってるぞ!早くふん縛ってしまえ!」


 いかにも、ガラの悪いことが伺える男の声がした。

 

 ・・・『ふん縛る』だと?


 俺の正体がバレたのか?一瞬思った・・・が、いや、そんなハズはない。しっかりと顔は隠して歩いていたはずだ。

 横になるときも、周囲から不思議そうな目で見られていたが、騒ぐ様子も無かった。・・・ってか待てよ


 『人が残っている』って言ってなかったか?


 吐き気と戦いながら、ゆっくりと立ち上がった。そして、声の方を見る。すると、白地に青い縞模様のシャツを着た、数人の男が、俺を見ていた。

 そして、一番前に立っている男が、俺に向かって言った。


 「ヘッヘッヘ・・・お休みのところ、起こして悪かったな。お頭の命令でな、この船の人間には、人質になってもらうことになってんだ。お前も大人しくしてりゃあ手荒なマネはしねぇ、素直に縛られるんだな。」


 そう言いながら、ジリジリと、近づいてきている。

 ったく何だよ。誰かと思えば海賊じゃねぇか・・・って、待てよ?ここに海賊が入り込んでいるってことは、だ。



 リステルとマリブが危ねぇ!


 

 こうしている場合じゃねぇ、さっきのアナウンスは、海賊襲来のものだったのか!

 アイツらは、間違いなく甲板に居る。そして、リステルが黙って捕まるとは考えられん。

 アイツのことだ、まっ先にマリブのことを庇う、そして無茶するハズだ。

 

 

 こうしちゃいられねぇ!



 状況を把握した途端、吐き気がすっ飛んだ。慌てて駆け出そうとする俺の背後から、再びさっきの男の声がした。


 「ヘッヘッヘ、逃げられると思ってんのか?」


 「うるせぇ!お前みたいなザコと、遊んでる余裕なんてねぇんだよ!」


 振り返り、怒鳴り返すと、怒りを露にした男が声を張り上げた。


 「ザコって言う方がザコなんですぅーそうなんですぅー!」


 「ガキかっ!」


 「えぇいお前ら!やっちまえっ!」


 その掛け声で、待っていたかのように、もう一つのドアから男が数人、入ってきた。そして、俺の周りをグルっと取り囲むように、陣取る。


 「お前ら、そのセリフと登場の仕方。ここにリステルがいたら、ブチ切れられるぞ。もうちょっと捻りやがれ。」


 ったく、これだから三流の悪党っていうのは、嫌だね。とはいえ、単品では弱いくせに、群れると面倒なんだよな。

 しょうがねぇ、ちょっと相手してやっか。と、男たちに見えないよう、剣の柄を握った。

 すると、相手にはただ立っているように見えるのか


 「何だぁ?ボケっと突っ立ったままとはな。しかし、その気持ち、わからんでもない。我々の恐ろしさに、動けなくなったのだな。フハハハハハ!」


 最初、皆に指示を出したザコの中でのリーダーだろう、その男が、高笑いをしている。

 ・・・たく、やっぱりザコはザコか、見ただけで、実力差がわからんとは。しゃあねぇ、今後のために、ちょっと教えといてやるか、と、男に手招きをしながら言った。


 「あー、ああー、そこのお前、そう、そこのヒゲ面、いや、キョロキョロすんじゃねぇ、そう、いまそこで、自分の事を指さしたお前だ。そう、お前だお前。ちょっとこっち来い。」


 急に呼ばれて、びっくりしたのか、多少挙動不審になるも、ノコノコと、やってきて言った。


 「あンだよ。」


 「あのな・・・って、だーかーらー、キョロキョロすんな、お前だお前、お前に言ってんだ。この状況、周りを囲まれているにも関わらず、落ち着いている俺を見て、どう思ったよ?」


 ザコのリーダーから見ると、出口を全部塞いで、完全包囲をしている状況だ。


 「あぁ?そんなことは、関係無いね。どっちにしろお前はこれから、俺達にボッコボコにされるんだからよ、フヒヒヒヒ・・・。」


 あー、このザコの大将、頭悪ぃわ。しょうがねぇ、仲間にでも聞いてみっか。と、とりあえず、近くに居た別の男に手を振りつつ


 「あー、えー、コホン、お前、そう、そこの細いの、ちょっといいか?だからっ!お前もキョロキョロすんじゃねぇ!そう、お前だ、何度も同じこと言わすんじゃねぇぞ。あのな、パッと見、絶対不利なこの状況で俺は落ち着いています。そこんところ、どう考えますか?はい、答えをどうぞ!」


 そう言うと、すると、突然、話を振られたことに、ちょっとびっくりしたのか、おどおどと答えた。


 「はっ・・・はいっ!あ、えーと・・・恐怖でおののきまくっていると思います!」


 「はい、残念、不正解です。」


 あちゃー、コイツもダメか。と、その時


 「お前らっ!やっちまえ!」


 シビレを切らしたザコの大将が、号令をかけた。その言葉に呼応するように、一斉に襲いかかってくる、その他大勢。

 ふーやれやれだぜ。ザコごときが、剣で俺に勝てると思ってんのか?


 「せっかちなヤツだな、しょうがねぇ、正解は、体で教えてやるよ。」


 フードを放り、体勢を低く構えた。そして


 『剣技、コシヒカリ!』

 『剣技、ササニシキ!』

 『剣技、ホシノユメ!』


 

 【ちゅどーん!】



 ・・・。

 ・・・。



 俺の目の前には、ボロボロになった、海賊達。

 ま、あまり人間相手に、剣を振るいたくなかったが、しょうがねぇよな。


 「お前・・・獣人だったのか・・・。俺の命もここまでか・・・。」


 目の前で大の字になって、倒れているザコの大将が少し起き上がると、息も絶え絶えに言った。


 「今頃気づいたのか?ってかよ、大袈裟なンだよ。ってか誰も斬ってねぇぞ。剣から出した衝撃派を当てたか、みね打ちしただけだ。それにな、お前に至って柄で小突いただけだぞ。骨なんて折れてねぇし、血すら出てねぇって。それにしても、お前、頭張ってる割に弱すぎんぞ。」


 ヒゲの男にそう返すと、突然、プルプルと右腕を高々と突き出し、叫んだ。


 「我が生涯に、一片の悔い無あぁしっ!グフッ!」


 そして、言い終わると、体を小刻みに震えさせながら、崩れてく。

 

 「だーかーらー!斬ってねぇって言ってんだろ!ったく、それにちょっとは自分の弱さを悔やめってんだ。まぁいい。気絶してないヤツだけちゃんと聞いとけな。コホン・・・。今後の教訓を言っておくからちゃんと聞いとけ。こういった状況で、落ち着き払っているヤツには、戦いを挑まない。わかるな?コレ、中間テストに出るから。よく覚えておくように。」


 「・・・わかりましたぁー・・・先生。」


 「完全回答で5点くらいの配点になるからな、重要だぞ。」


  □■□


 「リステル・・・マリブ・・・無事で居てくれよ。」


 廊下に出ると、まだザコ海賊が色んなところをたむろしていた。それををなぎ倒しつつ、廊下を走る。

 多分、アイツらのことだ、まだ、甲板に居るんだろうな。

 他の乗客のことは気になるが、さっきの賊の口ぶりから危害は加えるつもりはないらしいし、とにかく、二人の事が心配だ。

 走り続けるとそのうち、光が差し込む階段を見つけた。

 

 「あそこから、外にでられそうだな。」


 急ぎ階段を上りきると、青空が広がる。そして、ふと目をやると、少し離れたところに大人マリブの姿が見えた。

 そしてマリブが何者かの前に立ちはだかっている、すぐ後ろ。そこには、地面に崩れるようにへたりこんでいるリステルの姿が見えた。その時


 「これ以上、リステルちゃんに手は出させないわ。」


 マリブの声がした。それに続いて


 「・・・マリブ・・・だめ、アンタまで・・・やられちゃう。」


 息も絶え絶えな、弱々しいリステルの声が聞こえてきた。

 これはかなりマズい。状況から察するに、リステルとマリブに向かい合っている、あのヒゲの男に襲われているのだろう。

 そして、何かの時のために草を隠し持っている、リステルですら適わなかったということは、素人じゃねぇな、変換師か何かか?

 とにもかくにも、俺に注意を引きつけよう。そう思い、叫ぼうとしたその時


 「ククククク・・・サブスタンスチェンジ、水球弾。」


 ヒゲの男が言うと、それに呼応するように、彼の周囲には、水の球が、何個も現れた。そして


 「行け・・・。」


 彼が腕を振った。すると、水の球が、まるで生きているかのようにマリブに襲いかかっていくのが見えた。


 「やめろっ!」


 俺が叫ぶのと同時に、全ての水球がマリブに直撃していく。

 それが、幾度となく彼女にぶつかっていき、マリブの体から、水しぶきを上げ、その水しぶきが、完全に彼女の体を被っていった。


 「うそ・・・だろ?」


 俺はただ呆然と、その光景を眺めることしか、出来ないでいた。


 つづく

 ‐ここから後書き的なものです‐


 ・・・とはいっても、同時進行で書いている小説の宣伝。

 以前、雑誌に投稿したものを、再編集して載せてます。タイトルは『カメラマンとして、仕事で廃墟に行ったら、大変なことになった。』です。

 まだ、続いておりますが、もう少しで完結します。よろしければ、そちらにも目を通してみてくださいね。よろしくお願いします。

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