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【第28話・遭遇してみようか、その2】

 「リステルちゃん、この服、あたしには小さいのだが。」


 「いいから着てなさい。」


 とりあえず、グラビアアイドルもびっくりな格好の大人マリブにと、私が普段、着ているシャツを着せ、腰にはパレオを巻かせた。

 でも、私が着ると、丁度よい大きさなのに、彼女が着ると、胸がデカくなったからなのか、単に、身長の違いなのか、完全にヘソが出てしまっている。


 

 ・・・畜生、これはこれで、何かエロいんですけど。



 私の考えをよそに、初めてのシャツに、窮屈そうな、大人マリブ。

 しっかしこの格好、湘南あたり行ったら、顔立ちも良く、しかも、パーフェクトボディの彼女が波打ち際を歩くだけで、サーファーとかがすれ違いざまに、振り返るんだろうな。


 

 ・・・とりあえず、ここが、日本じゃなくて良かった。


 

 と、その時。

 

 「まぁ、万が一、海に落ちるようなことがあっても、マリブは術が使えなくなるだけで、命に別状は無さそうだし、リステルが変換術を使えるから、何とかなるだろ。俺も、短剣を持っているしな。」


 レーベンが、そう言った。


 「で?とりあえずどうすんの?船、乗るの?」


 「あぁ、早いとこ動いておかないと、例の村、オカルト好きなヤツでごった返して、異次元の扉の搜索どころじゃなくなりそうだからな。それに、人が増えると俺も動きづらくてたまらん。さっさと行って、さっさと帰ってくる、これしかねぇさ。」


 そう言いつつ彼は、いつものフード姿に戻ろうと、私の鞄から、自前のフードを取り出していた。

 

 「それじゃあ私も・・・。」


 と、着替えようとしたところ、レーベンが


 「リステル、とりあえずお前、そのままの格好しておけ。」


 「何でよ。」


 「俺は、獣人だから体を隠す必要があるが、お前は人間。体を隠す必要ねぇだろ?」


 「は・・・?アンタ、なんだかんだで、女の水着姿に興味あんの?レーベンったら、見かけによらずムッツリなんだ、ってかえーろーいー。」


 「違ぇよ!人間の女になんか興味はねぇって!だからな、お前まで着込んだら、マリブが浮くだろ?コイツは精霊だぞ、この間だって、正体がバラしたら、不思議そうな顔してたじゃねぇか。」


 あー・・・この間のヘーゼルバーンさんのことね。

 何かちょっと、納得したような私の顔を見て


 「だろ?良く見りゃ、普通の人間じゃねぇってことはバレちまう。それを、少しでも緩和するためにだな・・・。」


 その後、彼が何か、くどくどと言っていたが、聞き流した。

 

  □■□


 「レーベン、アンタが一番浮いてるじゃないの。」


 「はは・・・。」


 私達が今居るのは、大きな船の甲板。

 結構な乗客がいるのだが、何故かみんなの格好は、水着だった。

 ちゃんと服を着たり、鎧を纏っているのは、職員や、海賊対策の衛兵くらい。

 すれ違う人、すれ違う人が、フードを目深にかぶったレーベンを見ると、二三度、振り返る。

 あからさまに、『こんなところで、こんな格好。何?この人。』みたいな視線を感じていた。

 

 「一体どうなってんだ。普通は、着るだろ?服。」


 その好奇の眼差しに、私の耳元で、そっとレーベンが、言った。

 

 「普通はね、私だって、信じらんないわよ。ここが大きなクルーザーじゃないんじゃないかって、未だに疑ってるわ。」


 「俺もだ、何度も乗船券を見直したが、ただの連絡船、兼、貨物船だぞ、これ。」


 二人で目の前の風景のアンバランスさに、首を捻っていると


 「レーベンに、リステルちゃん、しかしコレ、船っていうのか?すごいな。水に浮いてる。」


 さすがに、大人マリブも、初めての船で、多少気分が高揚しているのか、ちょっと興奮ぎみに、私達に話しかけた。

 大人の姿になると、無表情になり、あまり感情を表に出さなくなるマリブでこうなんだ。子供の姿だったら、大変な事になっていただろうな。

 ある意味、あの時、大人になっておいて良かったんだろうか。そんなことを思っていると、急にアナウンスが入った。


 『えー、今回はこの、【メリーゴーイング号】をご利用いただき、ありがとうございます・・・。』

 

 

 メリーゴーイング・・・だと?



 ちょっ!それはちょっと、際どいネーミングじゃないのか?

 ここが日本だったら、指さして笑われるぞ。

 思わず、近くの柱に、もたれかかる私に、レーベンが


 「リステル、もう船酔いか?」


 「違うわ、ちょっとね・・・それにしてもアンタ、私のリアクションに、腹具合を探らなくなっただけ進歩したのね。でも何だか安心した。船の名前からすると、こっちが襲う方みたいだし。海賊に襲われる心配は、無さそうね。」


 「何だそりゃ?わけがわからん。」 

  

 そうこうしている間に、私達を乗せた船は、ゆっくりと帆を開き、滑るように進み出した。


  □■□


 「風が気持ちいいね。マリブ」


 「あぁ、そうだな。」


 船の舳先にやや近いところで、私とマリブは陣取って、船が水をかきわけ進む時に出来る、波を見ていた。

 一方、レーベンといえば、最初、元気が良かったものの、数分もしないうちに、船に酔ってしまったらしく


 「俺、ちょっと横になってくる、うえっぷ。」


 私達に、そう言い残すと、船室の中に引っ込んでいってしまった。

 ふと横で、遠くを眺めている、大人マリブの横顔を見た。明るい緑色の髪に、緑色の瞳。地なんだろうけど、健康的に焼けたような、浅黒い肌。そして、モデルと言っても違和感の無い、体型と、顔立ち。

 はー・・・どうしてこう、同じ女でも違うんだろ。とはいえ、人間じゃないんだけどさ。

 それに引き換え、私ときたら・・・。いやいやいや、考えるのはよそう。

 そういえば、私、マリブと二人で、じっくり話す機会があまり無かったな。

 たまには、女同士の話でも、と彼女に話しかけた。


 「ねぇ、マリブ・・・。」

 

 と、その時



 【ズドォン!】



 何かが、爆発する音とともに、船が大きく揺れた。


 「ナニナニナニナニ!?何が起こったの?」


 突然、地面が揺れたため、思わず尻もちをつく私に


 「リステルちゃん、大丈夫か?」


 そう言って私に手を差しのべる、大人マリブ。その手を握り


 「ありがと、でも、何なんだろ?」


 「さぁ。」


 首を捻るマリブ、するとまた


 

 【ズドォン!】



 爆発音と共に、船が大きく揺れる。私は必死に、手近な物にしがみついていると。


 『乗船中のお客様に緊急連絡します!ただいま、海賊の襲撃を受けております!甲板に、おいでのお客様は、至急、避難してください・・・ぐわっ!』


 放送の締めが、すごく不安になる感じだったけど、大丈夫なのだろうか?

 すると、その直後、再び放送が流れる


 『フハハハハ、この船は、たった今から、大海賊、【キャプテン・モルガン】の物となった!殺されたくなければ、我々の言う事に、逆らわないことだな!』


 ってゆうか、占拠されるの・・・早っ!

 一体どうなってんのよここの警備は!ちゃんと鎧姿の警備兵も居たでしょうに!船に『メリーゴーイング』なんて、大層な名前つけてんだから、あらゆるところが伸び縮みする船長や、足癖の悪い戦うコックとか乗せてなさいよね!・・・と、一瞬思ってみたものの、やっぱり名前はアレでも、所詮は貨物船なのか。と、


 「リステルちゃん。リステルちゃん、ってば。」


 大人マリブが私を呼んでいた。


 「何よ!今、忙しいの!どうしたのよ、一体。」


 と、振り向いたところ・・・

  

 


 私の周りをグルっと、下品な笑みを浮かべた男達に、取り囲まれていた。


 


 しかも、いつの間にか大人マリブが、男の一人に後ろ手に抑えつけられている。


 「・・・嘘でしょ?」


 思わず呟くと、男達の中から、いかにも『キャプテンです!』という格好の、ツバの広い帽子を被り、ヒゲの男が私の前に出てくると


 「ところがどっこい嘘じゃありません。現実です!貴様等は、我の人質として、我々の【スパイスト・ラム号】に、ご招待しますよ、お嬢さん。」


 ニヤニヤと、笑っていた。

 思わず、顔が凍りつく私に、男達から声が上がる


 「船長、この緑の髪の女、なかなか上玉ですよ。」

 「いやいや、この黒髪もなかなか、大人になりきれていない体つきとか、たまりませんな。」

 「お前は、趣味が悪いな、やっぱりコイツ(マリブのこと)だろ。」

 「わかってねぇなぁ、この黒髪みたいなガキっぽい女ってのは、化けるんだぜ。なぁ。」

 

 なんだかんだで、どっちがいい女なのかの軍配は、結局のところ大人マリブに上がったようだ。

 絶対的なピンチのど真ん中に居るにも関わらず、何だろうこの、何とも言えない憤りは。

 ちくしょうっ・・・!顔の内容はそんなに変わらない(自画自賛)ハズなのに、男ってのは、どうしてこう、チチのデカい、メリハリのきいた体が好きかね。

 私がそんなことを思っているとは、つゆ知らず、男たちはギャアギャア騒いでいた。

 決着がついたにも関わらず、サッカーのロスタイム的な感じで、未だイイ女談義を続ける海賊たちに、だんだん腹が立ってきて、その勢に任せ、圧倒的有利な状況に油断しきっていた、近くに居る男の股間を蹴り上げた。

 

 『ギャアっ!』


 対男相手には、股間を蹴り上げるのが、一番効く。実際、リアルでやったことはないが、マンガやゲームなら、常套手段。

 怒りに任せてやってみたものの、効果は抜群だったらしく、蹴られた男は股間を押さえつつ、甲板の上をゴロゴロとのたうち回っていた。

 それを見た、船長は、ニヤリと笑い


 「ほう・・・随分と跳ねっ返りの強いお嬢さんだこと。おい、お前達、とりあえずふん縛ってしまえ、残りは、他の乗客を捕まえろ。抵抗するなら、斬り捨ててもかまわん。」


 そう言うと、『おう!』と言いつつ、それぞれ、散っていった。

 これで、私の所に残ったのは、船長を含め5人ってとこか。この数ならもしかして・・・と、大人マリブがうっかり海に落ちた時用に、パレオの陰に隠してあった、草を取り出した。そして


 「いっけー!サブスタンスチェンジ!」


 私の手の中から、しなやかに伸びた、草の鞭が、男達に襲いかかったその時。

 

 「ククククク・・・サブスタンスチェンジ。」


 声と同時に、私の目の前に、一味を守るように水の壁が出来た。

 私の草の鞭が、水の壁に届いたその時、そのせいで勢いが止まってしまい、男達に届く頃には、ただのロープになっていた。

 その先を、船長は、ゆっくりと掴み、濁った笑を浮かべる。

 

 「・・・嘘。」


 思わず呟く私に


 「驚いたよ。変換師御用達の鞄を持っていなかったから、すっかり油断してしまったようだ。これはこれは、手厚く扱ってあげないとねぇ。」


 「アンタ・・・水の・・・。」


 「そうだ。樹木の変換師風情が、こんなところに居るとは珍しい。しかも隙をついて、吾輩に一撃を入れようとするとはな。だが、所詮は樹木。吾輩には逆立ちしても適わないのだよ。」


 と、言い終わると、船長が、水の壁に触れながら


 「サブスタンスチェンジ。水球弾。」


 今まで、水の壁だったものが、無数のサッカーボールくらいの大きさの丸い物体になり、一斉に私に襲いかかった・・・。


 つづく

 -ここから後書き的なものです-


 28話目にして、やっと水の変換師の登場となりました。

 すごいスローペース、未だに、土は、カケラも出てきておりません。

 ま、まぁ、そのうち出るでしょうね。ってことで


 今回のお酒の紹介

 【キャプテンモルガン・スパイストラム】

 

 ラム酒です。そしてバニラ風味で、やたら甘いそうです。

 とはいえ、ワタクシ、最初、このどこかの船長を、あしらったラベルを見たとき、正直な感想は


 バーボン系の何かかな?


 なんて思い、ラム酒だと知ったのは、それから数箇月後のこと。

 自分で商品を補充するようになってから、気づきました。

 とはいえ、ラム酒ファンの方には、結構ポピュラーなものらしく、結構な人気もあるそうです。

 やっぱりこれも、変に割らないで、ロックで飲むのが一番なんでしょうね?

 ってことで、作者でした。

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