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【第24話・働いてみようか。】


 「お帰りなさいませ、ご主人様♪」


 「おかえり・・・なさんませ、ごしゅじんさま」


 制服に着替え、カウンターに着いた矢先、扉を押して、入ってきた、二人の男性客に深々と頭を下げつつ、先輩にするように、と、言われた挨拶をした。すると


 「おっ!?見ない顔だねぇ、新人さんかい?よろしく。その二つに縛った髪の毛、可愛いね。」


 青いチェックのシャツを着た男が、先輩の指示で、髪をツインテールにした私を見て言った。

 するともう一人、ラフな格好をした男が、マリブを見て


 「緑色の髪の毛の子、ちっちゃくてかわゆすなぁ、ふっふははは、設定の勝利ですな。」


 何やら一人、盛り上がっている。

 とりあえず、カウンター越しに座った二人に、お茶と、少々のお菓子を出した。

 チビチビと、お茶をすする、男性二人、飲んでは私達をチラチラ見て、飲んでは、私達を、チラチラ見る。

 

 何か話しかけて欲しいようだ。

 

 とはいえ・・・何をしゃべったらいいものか。相手は初対面、その上、名前すら、知らないのに。すると


 「おにーさん達は、お名前、何て言うのー?」 


 さすが子供、マリブが物怖じもせず、口火を切った。すると、最初の口ぶりから、マリブのことを事のほか気に入った、ラフな格好の男が

 

 「んっ!?僕はマカロン、んで、こっちは、クッキー。」


 ・・・随分と、甘ったるい名前ね。と、マリブが、口火を切ったことにより、場が少し、和んだのか、今度はクッキーと呼ばれた男性が言った。


 「君、かなり子供っぽく見えるけど、こんなところに居て、大丈夫なの?」


 すると、マリブは、子供っぽいと、言われたことに、少し、腹を立てたのか、膨れっ面で言う。


 「子供って言うなぁ!あたしはこう見えて、ひゃく・・・」


 やばっ!本当の歳バラしてどうすんのよ!到底、信じられるとは思えないけど、万が一のことがある、私は咄嗟に、マリブの口を塞いで


 「ひゃく・・・ひゃく数えるまで、ちゃんと肩までお風呂に浸かれる20歳の女の子だもんねー!マリブ。」


 と、言ったところで、マリブの耳元でそっと言った。


 「(アンタ、124なんて言ったら、折角のお客さんがドン引きするでしょ?)」


 すると、マリブが潤んだ目で私を見ながら言う。


 「(だってー、あの人が、アタシの事、子供扱いするんだもん。)」


 「(だってじゃない。とりあえず、ここは二十歳で通しなさい。私たちは、ちゃんとアンタの事、わかってるんだから、それでいいでしょ?)」


 と、モゴモゴやっていたら


 「何二人でコソコソやってんの?」


 マカロンと名乗った男性客が、不思議そうな目で、私たちを見ていた。


 「あ、え・・・っと、ごめんなさい。ちょっとまだ、新人なもので慣れてなくて。と、ところで・・・ご主人様。私達も、なにか頂いていいかしら?オホホホホ・・・。」


 慌て繕った私の言葉を、最初は不思議がっていたものの、順応するのがこの世界の特徴なのか、はたまたそうでないのか、少し間を置いてから『どうぞ。』と二人が言った。

 

  □■□


 時を遡ること、一日前。

 とある街に着いた私達、早速、日本に還るための情報を集めに赴いた、変換師ギルドの直営の酒場で、面白い事を聞いた。何でも



 この街の、とあるお金持ちの所有する林の中に、一度だけ何でも願いが叶うという、『願いの泉』らしきものが、あるらしいということ。



 日本にも、こういった類のものがある。噴水に、小銭を入れたりする、例のアレ。

 とはいえ、何となく小銭を入れたら、『そんな気がする』みたいな気休めのもの、私も学生時代、好きな男子と両思いになれますように・・・みたいな願い事をしたような、そうでなかったような。

 そりゃあこの異世界に来る前に、そんな事を聞いても大人になった今、鼻で笑うだろう。

 しかし、ここは何でもアリの、ファンタジーど真ん中の世界。

 獣人や、亜人が居て、魔法みたいなものも実際使えて、現に、私の隣に居るマリブは樹木の精霊。

 うっかり七つの竜の玉を集めようものなら、虚空からギャルのパンティくらいは、バッカバッカ落ちてきてもおかしくなはい。

 と、なると、『願いの泉』その効力は、計り知れないものだろう。

 そんなわけで、最初は閉じることを知らない門を堂々とくぐり抜け、長に会い、要件を伝える、ドラ○エ方式で、その泉の所有者に会いに行こうとしたところ、門の前に居た、屈強な男に


 「ヌヌっ!怪しい奴!ここは、貴様のような者が、来るところではない、早々に、立ち去れぃ!」


 モブキャラ丸出しのセリフで、凄い剣幕で怒鳴られ、あっさり追い返されてしまった。

 まぁ、そりゃそうか、当たり前だよな。見ず知らずの人が、ホイホイ家に上がってしまうようでは、ちょっと心配だもんね。

 半分は、がっかりしたものの、もう半分は、この世界もちょっとマトモで良かったな・・・と、思った。

 

 「それにしても・・・どうやって、ここの家の人に会おうか、ねぇ、何かいい知恵とか無い?レーベン。」


 困った時の、レーベン頼み。最近、すっかり『歩く異世界の辞書』的なポジションの彼に、相談すると


 「おいおいおい、俺は便利屋じゃねぇんだけどな。とはいえ・・・考えが無ぇわけでもないんだよな。」


 「さっすがレーベン、それでその心は?」


 「それは・・・」


 と、私達を引き連れ、彼が向かった先は、さっきまで居た、ギルド直営の酒場。

 戻ってくるや否や、レーベンが私達に、『ちょっとここで待ってろ。』そう言い残し、彼が奥へと、消えていった。

 その間、私と、マリブは、部屋の隅のテーブルで、何やら飲みながら、彼の帰りを待っていると


 「やっぱりな、さすが酒場だぜ、いい情報が、揃っていやがった。」


 手には、酒の入ったジョッキと、肉を持ったレーベンが戻ってきた。


 「さすがね、こんな短時間で、良く情報を仕入れてこれたわねぇ。」


 私が、彼の持った、皿を受け取りながら言うと


 「まぁな、ちょっとここのマスターに握らせてみたんだよ。そうしたら、出るわ出るわ。ま、どこの家にも、何かしらあるってこったな。」


 そう言いつつ、レーベンは、空いた席に、ドカっと座った。


 「『握らせて』・・・って、アンタ、もしかして買収・・・?」


 「そういう事。こうでもしねぇと、いい情報は、得られねぇってこった。」


 そこまで言うと、やっぱりお腹が空いていたのか、もう彼は、食べ始めていた。


 「さすが、元悪党。」


 「それは言うなって・・・。」


  □■□


 彼が得た情報、それは今、この街で流行りつつある、『使用人喫茶』。そこに、例の家の息子が、お忍びで来ているということ。

 その息子さんと仲良くなれば、もしかしたら、友人・・・とはいかなくても、知り合いとして、堂々と、屋敷に潜入出来るかも、みたいな。

 そんなわけで、偵察がてら、その店に行ってみたわけだが・・・



 やっぱりといえば、やっぱり、『使用人』って聞いた時点で、そんなこったろうとは思ったよ!



 「何コレ!ただの『メイド喫茶』じゃん!」


 なんだかもう、訳がわからなくなり、荒ぶる私にレーベンが言った。


 「『メイド』?メイドって何だ?死んだ後に行くと言われている、黄泉の国的なアレか?」


 「それは『冥土』。ファンタジーの世界でも、死後の世界の呼び方が日本と一緒なのがびっくりよ!」


 「わけがわからん。ともかく、今回、俺は出番無しだな。それで?どうするんだ?通うのか?通わんのか?」


 「どーして女の私が、客として、通わないといけないのよ。でも、もしかして・・・ウフフフフフ。」


 一度、あの、フリフリのメイド服というのを着てみたかったのよね。

 この世界なら、うっかり知り合いに目撃される心配も無いし、ダメもとで・・・。と、思っていると


 「どうした?変な含み笑いをして、ハラでも痛いのか?」


 レーベンが、不思議そうな顔で、私を見ていた。


 「だーかーらー、事あるごとに、腹具合を探るのは止めてって言ったでしょ。決めた!ちょっとここで働いてみる。お金も稼げるかもしれないし、そしてマリブ、アンタも一緒に来んのよ。」


 と、マリブを見ると


 「えー・・・。あたしも?」


 働きたくないでござる。みたいな雰囲気を出していた。


 「そりゃそうよ、アンタも124歳の立派な大人でしょ?身銭は自分の手で稼ぐ。それに・・・アンタの見た目、ロリキャラは需要があんのよ。」


 「リステルちゃん、『ロリ』ってなぁに?」


 と、嫌がるマリブを引っ張って、『短期だけど、ちょっと働いてみたいですぅ。』なんて言ったら・・・



 即採用。



 そんなわけで、お金持ちのボンボン息子が、お忍びで通っているという噂の使用人喫茶、『ミス・ピーチ』の使用人として、次の日から、働くことになったのだった。

 

  □■□


 「・・・テルさん、リステルさんっ。」


 「はっ!はいっ!」


 少し、物思いに、ふけっていたところを、マカロンに現実に引き戻された。

 

 「ちょっとちょっと、飲みもの、こぼれてますよ、どうしたんですか?」


 考え事をしながら、彼に飲み物を注いでいたため、知らない間にグラスから溢れ、こぼれていた。


 「あら、ごめんなさいご主人様。ちょっと頭の中のお花畑で、ちょうちょを追いかけていたものですから。」


 慌てて手近にあった、布でカウンターを拭いた。すると


 「リステルさんは、ドジっ子キャラですか?ふっふはははは。」


 クッキーが、何やら喜んでいた。

 

 その後、場の雰囲気にも、だんだんと慣れてきて、会話も弾むようになり、仕事もそつなく、こなせるようになってきた。

 それにしても、大学の時に、ちょっとだけやっていた、水商売のバイトがこんなところで生きるとは。

 人生、何があるか、わからないものね。そんなことを思っていた。それにしても・・・


 ボンボンの息子とやら、早く来ないかな。


 つづく


 変換師とか、変換術とか、全く関係の無い回になってしまいましたね。

 とはいえ、このメイド喫茶の回は、これが始まった頃から構想があったわけで、やっと、今回、それを形にした次第でございます。

 ワタクシ、メイド喫茶には、結構行ったことがあります。

 今まで、かれこれ20回前後、足を運んだことになるのでしょうか?とはいえ



 仕事でですが。



 実は、今日も行ってます。

 本当は、店に入ると、『お帰りなさい』って言われるらしいですね。

 ワタクシはいつも『ご苦労様です』って言われますよ。

 以前、奥さんに、取材も兼ねて、客として行ってみたいということを話したところ、返ってきた言葉が


 「むしろアタシが行きたい!ってゆうか連れてけ。そんなことより、むしろメイド服が着たいっ!ってゆうか、三十路を越えても許されるなら、むしろ働きたい!」


 ・・・ですって。

 ワタクシが行ってみたいという事に関しては、どうでもいいみたいです。

 そんなわけで、少し前から、仲が良くなった、とあるメイド喫茶の客引きさんに、価格設定を聞いてみた感想としては



 ドリンク一杯飲むのに、入場料併せて1000円も払えるかボケェ!



 ってことで、取材はうっかり物書きになれた時に持ち越しとなりました。

 ・・・一生来ないような気もしてなりませんが。

 

 そんなわけで、今回のお酒の紹介

 使用人喫茶の店名として、使いましたこのお酒

 

 【ミス・ピーチ】

 

 桃のリキュールです。

 味については、わかりませんが、持った感じ、ほんのちょっとだけ、ドロっとした感じを受けました。

 サントリーさんから出ております。そして、サントリーといえば・・・


 金麦。


 今日もお酒が美味い!ってことで、作者でした。


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