【第23話・決着をつけてみようか】
「マリブ!アンタ、何しようって言うの!?早く逃げなさいっ!」
正気を取り戻し、スピリタスの前に、立ちはだかったマリブに絞り出すように言うも、彼女の耳には、届いていないようだった。
とにかく、どこまでやれるかわからないけど、今、私に出来ること。それは、マリブとレーベンを、安全な場所に避難させること。
咄嗟に、ポーチの中から、携帯用に持っていた草の束を掴み、物質変換させようとした、その時
『ル・・・ル・・・ゥ・・・。』
まるで、歌を口ずさんでいるようだ。
声の感じから、マリブが発しているのだろうということはわかったけど、何を言っているのかは、わからない。
思わず、彼女の行動を見守っていると、緑色の長い髪の毛が、逆立っていく。
それだけじゃない、小学生の時び理科の時間見た、『植物の成長』という番組の中で、草木の成長を早回しで見た、それと同じように、マリブの髪の毛が伸びていく。
時間と共に、髪の毛の色が茶色や、緑が混ざり、見た感じ、まさに樹木と言うような質感、気が付くと、私の目の前に、マリブの髪の毛から生成された、小さな林が、出来上がっていた。そして
「モウ・・・ユルサナイ・・・コレイジョウ・・・ナカマヲ・・・キズツケサセルモノカ・・・。」
マリブと、最初に会った時の喋り方だ。
そして、体を捻った次の瞬間、髪の毛から出来た、私の身長よりも倍以上長い、幾本もの丸太が、スピリタスに向け、矢のように、襲いかかった。
【ズゴッ!ドシャッ!】
さすがのスピリタスも、丸太の攻撃を一身に受けると痛いのか、悲鳴を上げながら、その場に転がった。
そのままピクリとも動かなくなるスピリタス、それを見計らい、私は、マリブに駆け寄り、背を向けたままの彼女に
「そんな無茶して、アンタに何かあったらどうすんのよ!早くレーベン連れて逃げるわよ!」
そう言うと、一瞬、ビクっとしたものの、すぐに、『あぁ。』と声がして、マリブが振り返った。
その姿を見て、一瞬、言葉を失った。
・・・って、アレ?本当にこの人、マリブなんだろうか?何か違和感があるな。
「マリブ・・・よね?」
「そうだ。リステルちゃん。」
「何かこう・・・大きくなった、というか、色々と成長してない?」
そう、振り返ったマリブは、子供、というより、お姉さんという言葉が似合う感じになっていた。
その姿は、スレンダーで、『ボン・キュッ・ボン』みたいな、女性なら、誰しもがあこがれる体型。
話し方も、いつもの舌足らずな感じではなく、しっかりとした喋り方。
「あぁ、この姿か。本気で力を使うと、稀にこんな姿になるんだ。」
畜生、これだからファンタジーは。
私だって、歳相応、一応出ているところは出てるものの、大人の姿のマリブと、間違ってもプールや海には行けないな。
と、こんな悠長なこと考えている暇は無いんだった。
「マリブ、レーベンを助けなきゃ!」
「わかっている。」
と、レーベンの元へ、走り出す私の横を、空を飛んだマリブが追い越し、みるみるうちに、彼の元へ着いていた。
・・・そういえば、空飛べるんだったわね、あの子。
と、その後すぐに、マリブに追いついた時には、彼女がレーベンの体を抱き起こし、揺すりながら叫んでいた。
「レーベン!レーベンっ!目を覚ましてっ!」
すると
「う・・・うん・・・。」
彼が唸った、大丈夫、彼は生きている。
さっきの一撃で、気を失っていただけのようだ。
マリブと二人、顔をのぞき込むと、ゆっくりと彼が目を開け私を見た。そして
「リステル・・・か、無事だったか。」
「うん、マリブのおかげで何とかね。勿論、アンタも。それに無事で良かった・・・。」
それから、視線をずらし、大人の姿のマリブを見た。
「あれ?こちらさんは、見ねぇ顔だな、どちらさんだ?」
すると、マリブが表情も変えずに一言、言った。
「マリブだ。」
その言葉を聞いた瞬間、口を半開きにしたまま、少し、沈黙してたレーベンだったけど、いきなり
「ええぇぇぇぇぇえええぇぇぇぇえっ!」
かなりびっくりしたのか、さっきまで、気絶していたとは思えないくらい、急に飛び起きると
「イテテ!体中が痛ぇ!」
「アンタ、さっきまで気絶してたの!急に動いたら危ないわよ。」
「それもそうだな、とはいえ、どこも折れたりしてねぇようだ。打撲程度で、済んで良かったぜ。それにしても、マリブの変わりっぷりには驚いたな。」
彼の言葉に、二人で大人マリブを見ると、少しはにかみながら
「あぁ、良く言われる。いや、そんなことはどうでもいい。この姿だと、いつもより樹木を操る力は上がるんだがな、あまり長いこと維持出来ないんだ。さっさとケリつけた方がよさそうだ。」
そう言うと、真顔に戻って、顎を遠くに向けた。その先には、数体のスピリタスに、完全に包囲された、火の変換師の姿。
「完全にヤバいわね、とはいえ、どうしよう。」
私の言葉に、大人マリブが、意外な事を言った。
「多分、アイツ等の火の攻撃、見た目は派手で、効いているように見えるが、さっきから見ていると、スピリタスに大して効いていないようだ。私達が、やった方が早い、こっちに気を向けよう。」
「マジ言ってる?」
「あぁ、リステルちゃんの・・・。」
「ちょっと待った。」
「何だ?」
「さっき、一度、呼ばれた時に、言おうと思ってたんだけど、頼むから、その姿で、『ちゃん』付けはやめてくんない?何だか悲しくなるから。」
そう、パーフェクトボディの大人マリブに言われると、私が子供みたいに思えてしょうがなかったのだ。
「そうか、何か呼びづらいけど、リステルがそう言うなら、この姿の時は、気を付けてみる。それでだ・・・」
と、大人マリブが私達に、これからのことを、耳打ちをした。
「わかった。でも、レーベンは剣技じゃなくて、増幅の能力の方で。」
「増幅?」
聞きなれないのか、不思議そうな顔をする、大人マリブに笑いかけながら
「そう、ね?レーベン。」
「あぁ、俺は、変換師じゃねぇが、変換師の力を増幅する能力があンのさ、それにしても、樹木の精霊に、樹木の変換師、そして、俺の増幅の能力。成り行きで集まったにしては、うまく事が運びすぎて、気味が悪ぃが、これも運のうちだろ?そんじゃ、思いっきりやるぞ!」
彼の言葉に呼応するように、大人マリブが
『ル・・・ル・・・ゥ・・・』
歌を口ずさむような詠唱を始めた。
逆立った髪の毛の中の、樹の部分は、大人マリブが操る、そして、蔦の部分は、勿論私。
レーベンの腕を通して、変換術を唱える
「サブスタンスチェンジ!行くよっ!フルパワーっ!」
私達の場所から、伸びた樹木や、蔦が、まるで獰猛な、生き物のように、スピリタスの群れに襲いかかっていった・・・。
□■□
「・・・終わったね。でも、何匹か、逃がしちゃった。ごめんね、マリブ、お父さんの仇だったのに。」
スピリタスとの戦いが終わると同時に、力を使い果たしたのか、すっかり子供の姿に戻ったマリブ、彼女に言った。
「ううん、いいの、レーベンや、リステルちゃんが無事だったから。」
そう言いながら、私の腰のあたりに、キュっと抱きついてきて、私の服に顔をうずめた。
こうやって甘えるような仕草のマリブを見ると、やっぱり子供なんだよな。
それにしても、親を失うって気持ち、私にはわからないけど、すごく辛くて、悲しいことなんだよな。
私が、日本に還る、その日が来る前に、マリブにも、安心して暮らせる土地を見つけてあげられるといいな。そんなことを思ってしまう。と、その時
「そんじゃさっさと、次行くか、今回の件、何かどえらい事になってるらしいぞ。」
少し前に、街の様子を見に行っていたレーベンが、慌てて戻ってきて言った。
「どえらい事?」
「あぁ、火の変換師が、束になっても叶わなかったヤツを、樹木の変換師が、三人で、どうこうしちまったワケだろ?街は大騒ぎさ、ギルドのお偉いさん方が、俺達を探してる。」
「何かマズいの?」
思わず聞き返すと
「マズいも何も、俺はともかく、リステル、お前は異世界人、マリブは精霊。この異色のパーティがうっかり有名にでもなってみろ、色々と動きづらくなるし、俺もそういった好奇の目に晒されるのは、御免だぜ。それに、プライドの高い火の変換師だ、獣人が混ざってたなんて知られて、難癖つけられたらたまらんからな。さっさとこの場から離れるのが一番だぜ。」
そう言いつつ、もう、歩きだしていた。
「あ、ちょっと!レーベン、レーベンたらぁ!待ってよー!」
私達は、人知れず、次の街へと向け、歩を進めた。
つづく
-ここから後書き的なものです-
どうにかこうにか、簡潔に完結させました。
今回は、マリブがでっかくなっちゃいましたね。
本編を書いている時は、全く気づいていなかったんですが、後書きを書く段階で、フと思ったんです。
これって、FF4の召喚師のリデ…ゲフンゲフンと、かぶってねぇ?
緑の髪といい、急に大人になって、喋り方が、ちょっと変わるところといい。どこからともなく怒られそうな気がしてなりません。
そして、リデ…ゲフンゲフンさん、彼女は、FF4の中で、ワタクシが一番好きな、キャラなんですよね。
ちなみに、二番目は、お兄さんです。
当時、プレイしているとき、最初に装備とか、強化するのは、彼女でした。
セ○ル?カ○ン?ダレそれおいしいの?
話が横道に逸れましたね。
本当は、もっと、戦闘の描写とか、書けば良かったかな?なんて思っておりますが、それはひとえに
尺の都合です。
戦闘シーンにつきましては、読者の皆様の、ご想像にお任せします。エヘ。
別に、戦いの描写が苦手なわけじゃないんだからね!
・・・。
・・・。
・・・すいませんウソつきました。苦手です。
ともかく、次回からは、通常営業戻ります。
そんなわけで、これからもよろしくお願いしますね、作者でした。




