【第21話・遭遇してみようか】
この間の幽霊騒ぎの報酬を貰い、ギルドを一歩出たところで、レーベンの肩の上に乗ったままの木の精霊、ドリアードだというマリブに言った。
「アンタ、本当に精霊なの?」
「どゆこと?」
シベリアンハスキーと人間の合の子、獣人のレーベンと私、そして、この間の一件から、私達に付いてくることになったマリブ
当の彼女、見た感じは、10歳くらいの少女とも見れる出で立ち、とはいえ、そこらへんの子供と違うのは、服装。
それはまるで、スーパーに並ぶ、4個入りのミカンのネットを、そのまま被っているようだった。とはいえ、素材は木の精霊らしく、何かの蔦のようなものみたいなのだけど。
子供だからいいようなものの、これが大人だったら、色んなところから、苦情が来たり、R18指定になるんだろうな。
いや、まてよ、最近はどこかの知事が、コレ系を規制する政令みたいなものを作ったとか、作らないとかだったから、ギリでアウトかなぁ。
「いや、もっとさ、精霊ったらこう・・・神々しいとか、神秘的というか、ぶっちゃけ、アンタってさ、普通なのよね。服装以外。」
すると、いつの間にか、レーベンの肩の上が定位置になっているマリブが、彼の上から降りてきて、私の前に立ちはだかりつつ怒った様子で
「むきー!本気で呪い殺してやるぅ!あたしが本気を出せば・・・」
そう、キーキー言っていた。あまりに五月蝿いので、彼女の言葉を遮るように
「何よ、やろうっての?いいわよ、今度はしばり上げてヨーヨーにでもしてあげるわ!」
ポーチの中に手を入れて、草の束を探していると、レーベンが慌てて私達の間に割って入ってきて
「おい、お前ら、止めねぇか。喧嘩なんてみっともねぇぞ。ところでお前、どうして俺達に付いてくる気になったんだ?」
そう言って、マリブを見ると、彼女はプイっとそっぽを向きつつ
「リステルを呪い殺す。」
「そうじゃねぇだろ?本当の事を言えって言ってんだ。いくらお前が精霊だとしても、リステルにゃあ敵わねぇよ、コイツは樹木の変換師、樹を操る能力はからっきしだがな、草に関しては一級品。お前だって、この間のことで、そこらへんはわかってんだろ?何なら相談に乗るぜ。」
レーベンが静かにそう言うも、何か、特別な事情があるのだろうか。マリブは黙ったままだった。そんな彼女に続ける
「まぁ、言いたくねぇならムリには聞かねぇさ、言いたくなったら俺なり、リステルなり、言えばいい。とりあえず、付いてくるのはかまわんが、ケンカすんなら連れてけねぇぞ。リステル、お前もガキの挑発にいちいち乗んじゃねぇ。」
と、私とマリブを見た。
「・・・わかったわよ。」
「・・・わかった。」
私達の言葉を聞いて、レーベンが元気に言った。
「よし、そんじゃ次の街を目指す前にこの街で、次元の狭間とやらを探そうか。どこにあるかわからんしな、怪しいところは全てチェックするとすっか。」
そんな彼の言葉に、不思議そうな声を出すマリブ
「次元の狭間?」
「あぁ、このリステルはな、この世界の人間じゃないんだとよ。『日本』ってところから迷い込んで来たらしいんだ。とりあえず、こうやって旅を続けながら、還る手段を探してんだ。」
「ふぅん。そっか、リステルちゃんも、お家帰れなくて、大変なのね。」
何の疑いもなく、話を聞いているマリブ。ってゆうか、いつの間にか私のこと、『ちゃん』付けになってるし。この世界の人げ・・・いや、生き物って、異世界のことを、すんなり受け入れる性質なのかしら。
「まぁ、そんなところだ。とりあえず、金もあるし、メシでも食いながら情報を探すか。なぁ、リステル。」
「え?あ、はい、ってゆうかアンタ、お腹空いてただけじゃないの?」
「バレたか。まぁ、どっちにしろ情報を集めねぇとな、とはいえ、情報収集の基本は酒場って相場が決まってんだ。あ、でもコイツは未成年か、おい、マリブ、大人ばっかの空間で、空気もあんま良くねぇが、大丈夫か?」
すると、マリブの口から意外な言葉が飛び出した。
「あたしは124歳だもん。子供じゃないもん。」
「は・・・?」
「え・・・?」
思わず目が点になる私たちに
「何よぉ、その顔は。」
プリプリ怒って言った。
「いや・・・あの、すまん。見た目と言動から、そうは見えなくてな。」
「同感。ってゆうかどんだけ長生きなのよ、あー・・・、でも、ベースは樹だからか。それなら何か納得。でも、よくそんだけ生きてて、自分の歳をちゃんと把握してるわね。」
そう言うと
「え?毎年決まった時期になると、ここに薄く筋が入るのよ、それを数えるだけ、リステルちゃんや、レーベンにもあるでしょ?」
そう言いつつ、腕を見せた、確かに、細かく薄い筋が何本も入っていた。年輪・・・とでも言うのだろうか。
「いや、人間には無いなぁ、そういうの。」
「獣人にもねぇな。まぁ、とにかく、俺等よりは、かなり年上ってことだけは、わかった、そんじゃ気兼ねなく入れるな、なら行くか。」
そう言って歩き出すレーベン、その後ろをヒョコヒョコ付いていくマリブを見ながら、私も歩きだした。
□■□
ギルド専属の酒場、私は定食を、レーベンは肉を、そしてマリブは、てっきり水だろうと思っていたのだが、今、食べているのは、まさかまさかの、何かの肉。
その出どころは、自分で頼んだ物ではなく、レーベンの食べているものに、興味を示し、ちょっとわけてもらったのだ。
「・・・アンタ、ベースが樹なのに、何で肉を食べられるのよ。」
そんな疑問をマリブにぶつけると
「そう?初めて食べたけど、結構美味しい。あたしの仲間に、虫取って食べるのも居るし。不思議じゃないと思うんだけどなぁ。」
・・・食虫植物のドリアードも居るんだ。
もう突っ込むのは疲れるからやめておこう、ここは日本じゃない、日本じゃないんだ。何でもアリのファンタジーの世界。
精霊が肉を食べるくらいなど、至って普通じゃないか、うん。とりあえず、ここは話題を変えて・・・と
「ところでレーベン、さっきマスターに色々と訊いていたみたいだけど、何か有力は情報は集まった?」
すると
「あんま無ぇんだよな、でも、ここに長居はしねぇ方がいいってことだけは、わかった。」
「どういう事?」
「この近くの山でな、つい最近、『スピリタス』の目撃情報があったらしいんだ。」
「『スピリタス』?危険なヤツなの?」
「あぁ、動くものなら何でも食い散らかす、獰猛なヤツさ、結構デカいらしい。さっき、ギルドでランタンを持った、火の変換師がいっぱい居たろ?街が招集をかけて雇ったんだとよ。ソイツと戦争する気、マンマンさ。どうなることやら・・・。」
レーベンが、難しい顔をしていた。多分、日本で言うと『熊出没注意』とか、そのくらいのレベルなんだろうな。
「ふぅん、とりあえず、食べたら次目指しましょうか。あまり関わり合いにならない方がいいかもね。」
「そういうことだ。」
と、その時
【ずどぉん!】
轟音と共に、建物全体が揺れた。突然のことに、店の中の人全員がざわついた。
「なっ・・・何!?何があったの?」
慌てる私に
「チッ!まだ時間があるなんて言いやがって、予想、大外れじゃねぇか。リステルっ!マリブっ!さっさと出るぞ!」
そう言うと、剣を握りながら、外へと向かった。
その間にも、何かが壊れる音が、響いてくる。
「どうしたのよ!」
慌てて彼を追いかけようと立ち上がり、駆け出そうとした私の後ろからマリブの声がした。
「リステルちゃん、待ってよー・・・。」
振り返ると、雰囲気で察したのか、立ち尽くし、すでに涙目のマリブ。
咄嗟に、彼女の手を引いて、外に出ると、私の目の前、そこには
半壊や、全壊した建物の姿。
「なっ・・・。」
思わず声を失う私、あまりの外の変貌ぶりに何も出来ないでいると、その建物が壊れた時に、上がった土埃の中から、黒く、うごめくものが見えた。
つづく
-ここから後書き的なものです-
今回から、本格的に、三人の掛け合いが始まりました。
ってゆうか・・・
キャラの書き分けが難しいっ!
一応、マリブに関しては、子供っぽい喋り方を目指してはいるのですが、イマイチ、感覚が掴めないですね。
何かアドバイス的なものがあれば、よろしくお願いします。
そして、
今回のお酒の紹介。
【スピリタス】
ポーランド原産、アルコール度数、96度、口に含んだ瞬間刺すような痛みが走るんですって。
世界一、濃いお酒として、有名だそうです。
地元では、飲用だけでなく、消毒用としても利用されているようですね。
そして勿論
火気厳禁。
飲んでいる間は、喫煙すらもってのほか。
ご丁寧に、瓶の裏のラベルにちゃんと『火気厳禁』って書いているんですね。
そうそう、このお酒ですが、慣れてくると甘く感じるということですが、何だかなぁ・・・ってことで作者でした。




