表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/40

【第19話・反撃してみようか】


 「何も起こらないね。」


 「そうだな。」


 部屋に入り、すでに小一時間くらい、経っただろうか。

 だだっ広い部屋に、テーブルと、椅子と、ベッド。それに、化粧台、マイヤーズさんの、亡くなった奥さんが使っていた部屋なのだろう。

 主を失って、結構な月日が流れたであろうこの部屋だけど、使用人が定期的に、掃除をしているのだろう、今すぐにでも、使うことの出来る感じだった。

 それにしても、何も起こらない。ただただ、無音の時間だけが、いたずらに流れた。

 そして、レーベンがの予想も外れた。部屋に入り、最初にレーベンが、問題の観葉植物を調べたんだけど『さすがの俺でも、何の植物だかわからんな。ヨナカニウゴキマワリ草じゃないことは、確かかな。』なんて、呟いていたっけ。

 さすがに、時間を潰す物も、何もない中、ただただボーっとしていることに飽きてきたその時、あることを思い出し、ポーチの中を探った。


 「え・・・っと、確かこの辺に・・・。」


 変換師になった時に、ギルドから支給された、いくらでも物が入るポーチ、通称『四次元ポケッツ』の中を探る。私が探しているもの、それは、この世界に飛ばされる時に持っていた

 

 

 携帯電話。



 もう電波もなく、ただのプラスチックの塊となってしまったのだけど、不思議と電池が切れないコレ、とりあえず、メニューを開いて、カメラを起動させた。

 そして、問題のひとりでに動く、鉢植えの観葉植物に向け、携帯を構えようとした時、レーベンが話しかけてきた


 「リステル、何だ?その赤いの。」


 「え?あ、コレ?携帯電話よ。・・・っていってもわかんないか、遠くの人と、喋ったり、手紙みたいなものを、送ることの出来る道具よ。」


 「凄いな、さすが異世界人だ、色々不思議なモン、持ってんだな。」


 そう言いつつ、納得しつつも、物珍しそうに私の携帯を見ていた。そして続けた。


 「で?どうやって、喋るんだ?」


 「ん・・・まぁ、こうやって耳にあてるだけなんだけど、ここでは、というより、この世界じゃ使えないわね。コレと同じようなものを、相手が持っている必要があるし、そもそも電波が無いもの。」


 「言っていることの大半は、意味不明だけどな、とりあえず、使い物にならないことだけはわかった。なのに何で、お前、それ取り出したんだ?」


 「それはね・・・。」


 そう言いつつ、携帯をレーベンに向けて、『カシャッ!』とやった。すると当の本人は、慌てた様子で一歩引きつつ


 「わわわわわっ!いきなり何すんだ!」


 「大丈夫よ、アンタには何も起こらないって、ただ、写真を撮っただけ。」


 「写真?」


 「そっ、アンタの顔を写・・・えぇと、一瞬で、似顔絵を描いたの、見る?」


 と、画面を彼に向けると


 「おっ・・・俺だ、鏡に写ってるみたいだな。しかし、異世界人ってのは、すごいんだな。」


 レーベンは、そう言うと、マジマジと、さっき撮った写真を眺めていた。

 その言葉を聞いて思う、ここに来て数ヶ月。今ではもう、すっかり慣れてしまったけど、何もないんだよな、テレビも、ゲームも、車も、そして、電気すら。

 凄く不便なはずなのに、私には、こっちの世界での、のんびりとした雰囲気が、合うような気までするから、不思議だ。

 『まぁね。』そう彼に呟きながら、今度は問題の、観葉植物の傍に寄って、携帯を向けた、その時


 【パチッ!パチッ!】

 

 指を鳴らすような音が、周囲に響く。これは・・・もしかして、もしかすると『ラップ音』というモノだろうか?

 その瞬間、背筋が、凍りつくのを感じ、思わずレーベンに飛びついていた。

 

 「おっ・・・おい、リステル、どうした?」


 慌てつつも、ギュっと私のことを抱きしめてくれている。


 「レーベン、怖いよ・・・何か、この部屋、妙な気配がするの。マイヤーズさん呼ぼうよ!」


 震える声で、彼に訴えるも、平然とした顔で私に言った。 

 

 「落ち着けって、まだ、何も起こっちゃいねぇ。こんな真夜中にたたき起こして、ハイ、何もありませんでした。なんてなってみろ、さすがに迷惑だろ?もうちょっと、様子を見ようぜ。」


 レーベンは、平気なのだろうか?胸に押し付けた顔に聞こええる心音は、全く早くなっていなかった。


 「でも・・・。」


 「何だ?幽霊が怖いのか?お前から色々と聞いた話じゃ、元居た日本って世界からすると、俺や、お前の先生、そしてホワイト&マッカイなんて、化け物じゃねぇか、なのに、どうして今更。」


 「そりゃあ日本で、獣人や、亜人の姿を見たら、悲鳴の一つでも上げるわよ、でもね、ここは異世界、それが常識ならちゃんと生きてるんだもん、怖くは無いわ。でも、何でもアリのこの世界だって、死んだら生き返ることは出来ないのよ!」


 「わかった、わかった、とにかく落ち着け。ここで、何かあったら、俺にゃあ何も出来ん。変換師としての、お前の力が頼りなんだ、とりあえず、何があってもいいように、草、ちゃんと握っておけよ。」


 レーベンの大きな、毛むくじゃらの掌が、私の頭に触れた。と、その時、どこからか


 

 【オマエタチ・・・ナニモノダ・・・。】


 

 掠れたような、男とも、女ともとれるような、声が、周囲に響いた。

 彼に、抱かれていることもあり、恐怖はいくぶん和らいだけど、これは、ガチだ。

 思わず念仏を唱え・・・って、念仏って、どうやって唱えるんだっけ?

 とりあえず、見知った言葉を呟く


 「なんまいだー・・・なんまいだー・・・」


 すると


 「おいっ、いきなり皿を数え始めるなんて、どうしたんだ!?」


 とんちんかんな事を言う、レーベン。ということは、この世界では、この念仏とうものは、通用しないのか。するとまた



 【ベタっ!ベタッ!】



 壁の方から、何かが這う音、それと同時に、壁にかけられた燭台の炎が、静かにユラユラと揺れている。


 「キャーーーーーーー!何かいるっ!この部屋、絶対何か居るって!もう嫌っ!マイヤーズさん呼んでくる!」


 ドアに駆け寄り、ノブを勢い良く回す。が、しかし、無情にも、いくら押しても、ドアは、固く閉ざされて、開かなかった。


 「何よ!何なのよ!」


 更に、閉ざされたドアに向けて、体当たりをしようとした、その時


 「リステルっ!危ねぇ!」


 レーベンの声と同時に、私は、床に押し倒された。

 倒れながら、目に映ったもの、それは、さっきまで、テーブルの傍にあった、椅子が、真っ直ぐに私に向かって飛んで来ていた。

 それが、目標を失い、ドアに当たって、落ちる。


 「何か、やべぇぞ、コレ。」


 レーベンが、そう呟くと、私を担ぎ、壁につけてあった、タンスを乱暴に倒すと、その影に隠れた。

 私達が、その影に滑り込むのと同時に、今度は、 ベッド脇や、部屋の隅の引き出しが開き、中から、細かな小者が、私達を狙って、襲いかかってきた。

 『カツン、カツン』と、乾いた音が、タンス越しに響く。その音がするたびに、私の小さな心臓が、キュッと握り締められる感じを覚え、あまりの恐怖に、吐き気までしてきた。


 「レーベン・・・もう・・・私・・・限界・・・。」


 壁と、タンスの隙間に作った、狭い空間に、必死に隠れるために、しゃがみこむ体勢にも、疲れ果て、ゆっくり仰向けに倒れ、天井を見上げる形になった、その時。目に映ったもの、それは


 

 私達を見下ろすように、悲しげにジっと見つめている、女。



 「ヒッ!レーベン・・・レーベンっ!あっ・・・アレ・・・っ!」


 咄嗟に、レーベンの肩を叩き、カタカタと、震える手で、天井を指さす、それに彼も気づいたのか『なっ・・・!?』と声を上げるも


 「俺も見るのは初めてだが、正体がわかれば、こっちのもんだ。」


 そう言いつつ、脇から短剣を抜くと、飛び上がって斬りつけた。

 しかし、その体を捕らえたはずの剣は、虚しく空を切るだけだった。あまりの手応えの無さに、首を捻るレーベン。そんな彼を見て思う、幽霊にいきなり斬りつけるとは、獣人っていう種族は、平然と無茶生き物なのだろうか?

 そのうち、彼が、全くといっていいほど、幽霊を怖がっていないのに引きずられて、私もどんどん冷静になっていった。

 ここはファンタジーの世界、もしかしたら・・・そう考えを巡らせる私に


 「リステル、どうした?恐怖のあまり、声も出なくなっちまったのか?」


 未だ、フヨフヨと漂う幽霊に、短剣で斬りつけるレーベンの声がした。


 「え、いや、ちょっと試したいことがあって。」


 「何だよ。」


 ゆっくりと立ち上がると、幽霊に向かって手をかざし


 「この世に未練を残す人の子よ、ここはお前が居ていい場所ではない、成仏せよ・・・。」



 『ニフラムっ!』



 ・・・。

 ・・・。

 

 周囲に流れる沈黙、と、いきなり


 【ヒュンっ!】


 という風を切る音と共に、ペーパーナイフらしきものが、私の頬をかすめ、後ろの壁に突き刺さった。


 「わー!やっぱダメだったー!レーベンっ!もうムリっ!」


 慌ててタンスの影に隠れる私に向かって


 「お前、一体何がしたかったんだ!」


 「だってー、頑張ったら魔法の一つくらい、即興で使えるかと思ったんだもんっ!」


 「アホかぁ!魔法なんて、そんなファンタジックな技使えるか!」


 「アンタがファンタジーなんて言うなぁ!ニフラムってのは、対幽霊用の魔法で・・・。ん?ケアルの方が良かったのかな?」


 と、言葉が終わると同時に、【カカカカカッ!】と音がして、私のすぐ真上の壁に、ペンやら、ナイフやらが、突き刺さった。

 畜生、何か、幽霊にまで、突っ込まれている感じがして、腹立つんですけど。

 するとその時、レーベンが頭を覆いながら叫んだ。


 「リステルっ!お前には、草使いの才能があンだろ?どうせ勝負するなら、そっちど勝負しろよ!」


 「『草』って言うなぁ!『樹木』って言ってよ!」


 と、その時、この騒動が起こる前、見張っていた鉢植えが、目に入った。

 それを見て、ふと思う、これだけ、椅子やテーブルで襲ってきているのに、鉢植えだけは、その場から微動だにしていないのだ。

 

 これって・・・もしかして・・・。


 次の瞬間、私は隙間から這い出で、鉢植えに向かっていた。


 「リステルっ!どうしたっ!危ねぇぞっ!」


 後ろからレーベンの声がしたが、お構いなしに走り、草に触れた。そして


 「サブスタンスチェンジっ!」


 次の瞬間、私の声とイメージに、呼応するかのように、勢い良く伸びた草が、何本も、宙を漂う幽霊に向かって伸びていった。



 つづく

 -ここから後書き的なものです-

 

 ここに転載するにあたり、色々と加筆、修正をする機会が多くなりました。

 改めて読み返してみると、色々なことに気がつきますね。

 本来、メインで連載しているところは、このお話より、大分話が進んでおりますし、勢いで書いているだけなので、設定自体、色々と忘れてしまっている部分も結構ボロボロ出てきている始末。

 まだまだ経験が足りないなぁ、なんて思いつつ、書いているわけでした。 


 そして


 今回、『恒例となりました、お酒の紹介』のコーナーはお休みです。

 今度は、どこから引っ張ってこようか、カタログを見ながら考え中です。

 そんなこんなで、作者でした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ