【第18話・飛び込んでみようか】
「レーベンの嘘吐きいぃぃぃぃぃっ!」
【ガコォ!】
「うわわわわわ!俺だって、ここまでとは思ってなかったんだ!」
【ズドォ!】
ギルドの依頼で訪れた、屋敷のとある部屋の一室、私たちは、宙を舞う、椅子やテーブルの猛攻を、タンスの陰に隠れつつ、防いでいた。
こんなことなら、ギルドの依頼掲示板の隣にあった依頼『芝生の再生です。』にしておけば良かったんだ。
確かに、その依頼の報酬は安かった。
前回の件で、多額の賞金を手に入れた私達、最初は良かった。街から街への移動は馬車を使い、宿は、ちゃんと風呂がある、ちょっとランク上の宿。いいものを食べて、観光気分で日本に還る手段を探していた。
悪銭身につかず。
とはいったもの・・・いや、悪いことをして稼いだわけじゃないから、この例えは変か。とにかく、自らと釣り合わない、多額のお金は手元に残らないとは、良く言ったもので、一ヵ月も経たない内に、ほぼ、使い切ってしまった。
しょうがないので、ふらりと訪れた変換師のギルドで、久々に、手頃な依頼を探していた時に見つけた、この件。そこには
『観葉植物の位置が、日が変わると、別のところに移動しています。原因追求のため、樹木の変換師、求む!』
そう、書いてあった。何か、嫌な感じはしたものの、他の属性と比べ、報酬がデフレスパイラル真っ只中の、樹木使いの依頼としては、破格だった。
「・・・レーベン、どうしよう。」
隣に居る、シベリアンハスキーと、人間の合の子、獣人のレーベンに意見を求めた。すると
「ま、大丈夫だろ?樹木ってのは、危険な依頼ってのはほとんど無いっていうし。それに、この報酬の額は破格だな。入ったばっかりの依頼だし、他のヤツに取られない内に、さっさと契約しちまおうぜ!」
彼は彼で、すごく乗り気だった。
「本当に、大丈夫かなぁ・・・。」
何か引っかかる、女の勘が、心の奥底で警鐘を鳴らしていた。すると
「何だよリステル、お前にしては、随分慎重じゃねぇか。大丈夫だって、どうせ『ヨナカニウゴキマワリ草』とか、夜行性の草だろ?それなら、他の生き物に危害は加えねぇって言うし、一晩で原因究明。何なら、お前、寝ててもいいぞ。」
不思議と草の生態に詳しいレーベンが、そんなことを言うものだから、それに乗って、依頼を受けたのだった。
□■□
「すご・・・いね。」
「すご・・・いな。」
ギルドがくれた、地図を頼りに、依頼主の家を訪れると、大きな屋敷にたどり着いた。
その屋敷は、以前、テレビで見たことのある、ビバリーヒルズのお金持ちが住む、屋敷そのもの。
正面から、数を数えただけでもクラっとくる窓の多さだった。
「あの窓が、全部部屋だったら24LDKはあるわね。」
思わず呟く私に、レーベンが
「『LDK』?何だそりゃ?」
「リビング、ダイニング、キッチンよ、厳密に言うと、24個の部屋に、それぞれ足して、27部屋。日本じゃありえないわ、これだからファンタジーの世界は・・・。」
「リステルって、たまに変なことを口走るよな。」
「放っておいて頂戴。」
そんなこんなで、門をくぐり、一歩中に入ると、玄関の外に立っていた執事らしき人が、やってきて
「お待ちしておりました、樹木の変換師、リステルさんと、剣士のレーベンさんですね?旦那様がお待ちです。ささ、どうぞ。」
ドラゴン何とかにありがちな、杓子定規な挨拶をして、屋敷の中に通された私達。
玄関のドアから、一歩、中に入ると、目の前には、上へと続く階段、と、そこに敷かれているのは、フカフカな赤い絨毯。
それを見て思う、フアンタジー世界のお金持ちって、個性を無くすんだろうか?
そんな私の思いをよそに、さっきの執事らしきヒゲのオジサンが
「私はこの『ダーク家』に仕える執事、セバスチャンと申します。ささ、旦那様がお待ちです、二階の書斎へどうぞ。」
・・・セバスチャン!?
思わず、全身の力が抜け、その場にへたり込む私に、レーベンが
「いきなり膝から崩れ落ちるなんて、どうしたんだ!?腹でも痛いのか?」
私のことを心配して、顔を覗き込んできた。
「あ、ありがと、でも、私が何かあるごとに、腹具合を探るのは、やめてくんない?」
「何だ?腹じゃないのか、じゃあ、腰か?」
「腰でもないから。」
冷たく言い放つ私に、不思議そうな顔をするレーベン、しかしまぁ、どうして執事の名前って、ことごとく『セバスチャン』なんだろうか。
日本に還ったら、まずコレをググってみよう。
何とか立ち上がり、執事、セバスチャンの後に続いて、二階の書斎の前に着いたところで
「さ、旦那様がお待ちです、中へどうぞ。」
そう言いつつ、セバスチャンが、『ギギギィ・・・』っと、重たそうな、ドアを開けた。
そのまま、中に入ると、窓を背にして、大きな机を前に、これまた黒髪の、ナイスミドルというのだろうか、40歳前後の男性が堂々と、座っていた。
その、彼が放つ、何とうか、威厳ともとれる、そんな雰囲気に、思わず会釈をすると、彼が言った。
「待っていた。ギルドの方から、既に名前は聞いている、『樹木』の変換師、リステル殿に、剣士のレーベン殿ですな。私は、この館の主で『マイヤーズ=ダーク』という『マイヤーズ』と呼んでくれて結構。」
「あ、よろしくお願いします。」
「とりあえず、そこのソファーに腰掛けてくれないか?話はそれからだ。」
「それじゃあ、失礼して・・・。」
と、一歩踏み出した時、レーベンが
「お・・・いや、私も座っていいのか?」
あぁ、獣人だとうことを、気にしているのかな。そう思ったとき、マイヤーズさんが、笑いながら言った。
「構わん、座ってくれないと、ゆっくり話も出来んだろ?今、セバスにお茶の用意をさせるから、ちょっと待っていてくれ。と、質問に答えていなかったな、レーベン殿は、剣士だから立っていろ、そう思われたのかな?」
「あ、いえ、その・・・。私は獣人ですので。」
「獣人だから何だっていうのだ、もしかして、獣人は、痔病持ちか何かで、椅子に座れないとかなのか?それなら穴の空いたクッションをだな・・・。」
レーベンが、獣人だということを、全く気にしていない様子だった。
それにしても、この世界にも、痔病持ちの人のための『穴空きクッション』が存在することに、ちょっとびっくりしていると
「いえ、大丈夫です。それじゃあ、遠慮なく。」
そう言いつつ、私が座るのと同時に、レーベンも、腰を降ろした。
それを見計らったのか、マイヤーズさんが、真剣な目つきで私達を見ると
「早速だが、仕事の話をしよう。依頼の内容は知っていると思うのだが、観葉植物の配置が、毎日変わっていてだな、最初は数センチ動いているくらいだったのだが、日を追うごとに、動きが大きくなっていってだな、この間は、ベランダへ続く窓の鍵が開いていて、その外に置いてあったんだ。最初、物取りを疑ったのだが、泥棒が入った形跡も無くてな、困っているのだ。アレは二年前、亡くなった妻が、大事にしていたものでな、うっかり割れで、枯れてしまったりしたら、私が死んだ時に、顔向けも出来ん。草ということもあってな、『樹木』の変換師殿に、何とかしてもらいたいのだ。とにかく、動かないように、何とかして欲しい。」
その話を聞いて思う、この人は、奥さんを本当に愛していたんだな。
「わかりました。とりあえず、原因究明に勤めてみますね。それで、動き出す時間帯とかは、わかりますか?」
私が、マイヤーズさんに言うと
「それが、わからんのだよ、日が沈んでからということは、間違いないのだが、セバスや、私が徹夜で見ている時には、一向に動かないのだが、監視の目を休めると、次の日には、動いているんだ、不思議なものだ・・・。」
遠い目をしながら、呟くように、言った。
とりあえず、有力な情報は無し・・・と、ま、昼間には動かないみたいだから、勝負は夜中か。
「わかりました、早速、今晩から、私と、レーベンが、見張ってみます。その時、異変があったら、どうしたらいいですか?」
私がマイヤーズさんに、そう言うと
「すぐに知らせてくれ、私の寝室は、同じフロアにある。鍵は開けておくから、どちらでもいい、すぐに来てくれ。」
「わかりました。」
その後、イチ客人には豪勢すぎるほどの、晩ご飯のもてなしを受けて、とっぷり日が沈んだ頃、私と、レーベンは、問題の部屋に二人、待機することになったのだった。
つづく
-ここから後書き的なものです-
今回から、ワタクシ得意(?)の幽霊物です。とはいえ、ほんのさわりの回となりました。
次回から、盛り上がりますよー・・・と、言いたいところですが、ワタクシの文章力でどこまで出来るかわかりませんが、頑張ってみますね。
そして
以前、読者の方から、『、』が多いのでは?という指摘を受けましてね、三回程前から、こっちに転載するにあたって、若干ではありますが、句読点を減らしてみました。
いかがだったでしょう?読みやすくなっているでしょうか?
そして、意見をお寄せいただいた方には、大変感謝しております。基本、一人で書いているので、至らない点がありましたら、お寄せください。
とはいえ、ワタクシ、精神防御力が、事のほか弱いので、やんわりと、そして、ソフトに、お願いします。
最後になりましたが、恒例となりました、お酒の紹介のコーナー
今回は、貴族男性の名前に使った『マイヤーズ・ダーク』
ラム酒です。
これが、飲み物だと知ったのは、つい最近のこと
それまでは、家にも、小さなボトルがありましたし、ケーキを作る、調味料だと思ってました。
ワタクシは、直接、お酒として、飲んだことはありませんが、これを愛飲する方には、ラムというお酒は、美味しいらしいですね。
そのうち、堪能してみたいと思っております。
それではまた、次回をお楽しみに!作者でした




