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【第17話・驚いてみようか】


 「この間のお礼をしてやるぜ!ヒャッハー!」

 「今度は、有り金全部、いただくぜ!ヒャッハー!」


 私の目の前で、テンションだだ上がりの悪党二人組、ホワイト&マッカイ

 見た目は、二足歩行の『ブル・テリア』と『雑種犬』。あまり怖いという感じはしないのだけど、これでも立派な悪党。

 現に、彼らの後ろに見える露店が、無残に破壊されていた。


 「・・・ったく、この間、私が指摘してあげたにも関わらず、8話経ってもまだ三流悪党のままじゃないの、悪党なら悪党らしく、どこかの王女の心を盗んだり、トランプが発射できる銃を片手に、警察を翻弄したりしなさいよね!」


 「は?何言ってやがるこの女、言っている事の意味が、さっぱりわからんのだが。」


 ブル・テリア似の獣人が言った。それに続き雑種犬の獣人の方が


 「やっぱこの女怖いよ兄ぃ、電波さんだよ。」


 そう言いつつ、兄ぃと呼んだ、犬の影に隠れた。


 「ビクつくんじゃねぇ!言っていることは、アレだが、ただの樹木の変換師、ロクな攻撃も出来ねぇ!さっさとお礼参りと行くぞ!」


 ブル・テリアが、そう雑種犬に言うと、『うおーっ!』と、言いながら、襲いかかってきた。

 徐々に、私に迫り来る二人、思わず身構えるも、この状態では、勝てるハズはない。

 躊躇している間に、ブル・テリア、ホワイトの手が、私の目の前まで迫ってきた。


 (やられるっ!)


 思わず目をつぶった、その時。

 

 「ちょい待ちっ!」


 レーベンの声がした、恐る恐る目を開けると、彼が、ホワイトの後ろ襟を掴んで、持ち上げていた。一方、雑種犬のマッカイは、兄貴分が宙に浮いた姿を、口を半開きのまま、見上げている


 「なっ・・・何すんだ!?」


 「『何すんだ!?』ってのは、こっちのセリフだぜ。ってゆうかよ、ちったぁ空気読めってんだ。」

 

 そう言うと、レーベンが、ホワイトを乱暴に地面に降ろす、そして、へたりこんだままの、彼に詰め寄りながら


 「あのな?今、この会場で、何やってるかわかるか?」


 「B級・・・グルメ大会です。」


 「わかってんじゃねぇか。俺達はな、今、賞金の出る3位に入れるかどうかの瀬戸際なんだ、こいつを逃したら、売上の半分は、運営に献上しなきゃならん、どういうことかわかるな?そっちの黒いの!」


 今度は、レーベンが雑種犬の方を見る、すると


 「今までの苦労が水の泡ってことでやすか?」


 「そっ、正解。そんじゃ、話を変えるわ、今度は、二人に問題だ。今、お前らのせいで、折角の客が、いなくなってしまいました。この落とし前はどうつけてくれますか?」


 言い方は丁寧だが、レーベンは、明らかに脅しにかかっていた。彼が饒舌なのか、そういった雰囲気を出すのが上手いのか、知らぬ間に、状況をひっくり返された悪党獣人二人組は、おどおどしながら


 「え・・・そう言われても・・・なぁ?」

 「皿洗いとか・・・ですかね?兄ぃ。」


 お互いの顔を見つめ合っていた。すると


 「リステル、お客さんだってよ。」


 レーベンが私にそう言うと、草の束を投げてよこした。そして、こっちを見たまま、イタズラな笑を浮かべつつ、軽くウィンクをした。

 その時、何となくだけど、彼が私に、言いたいことがわかり


 「おっけ、サブスタンスチェンジ!」


 握った草が鈍く光り、形を変え、二本のロープが私の掌から伸びた。

 そう、以前、『ペリエ』と呼ばれる鰹を捕まえる時に作ったことのある、農夫のおじさんから教えてもらった、ちょっとやそっとでは切れない、草のロープ。

 それが、みるみるうちに、ホワイトと、マッカイを縛り上げた。


 「うおっ!何すんだ!」

 「ぼぼぼぼ暴力・・・反対ぃ!」

 

 後ろ手に縛られたまま、情けない声を上げる、悪党二人組


 「何も、殴ったり蹴ったりするつもりなんてないわよ、さっきレーベンが言ったじゃないの、『リステル、お客さんだってよ』って。ささ、お二人様ご案内ぃ~♪レーベン!じゃんじゃん焼いちゃって!」


 「あいよ、店長。」


 そのまま二人を、運営から借りてあった、椅子に座らせて、前掛けをしてあげた。


 「な・・・何するつもりだ!?」


 訳がわからないまま、座らされたホワイトが、声を上げた。


 「何って?」


 そんな彼に、ズイっと顔を近づけて私は言った


 「アンタ達が追い払った、お客の代わりをしてもらうだけよ。あ、そうだ、手だけは自由じゃないと、食べられないから、そこだけは縄解いてあげるわ。でもね、逃げようとか、思わないことね。アンタ達の胴回りにくくりつけてある草の縄、特殊な呪いがかけてあってね。私が解く前に、無理にちぎったりすると、一生解けなくなるから。」


 「な・・・何の呪いでやすか?」


 今度は、雑種犬の方が、不安の色を隠せない表情をしながら、訊いてきた。


 「何って?寝たときに見る夢が、必ず悪夢になるっていう呪いよ。『樹木使い』を舐めないでよね。」


 じとっとした目で、どんよりと言うと。マッカイが、泣きそうな目でホワイトを見ながら言った。


 「兄ぃ、やっぱり電波さんと、関わり合いにならない方が良かったんじゃ・・・」

 

 「クソっ!夢をタテに取るとはな、やることが、えげつねぇぜ・・・しゃあねぇ!煮るなり焼くなり好きにしなっ!」


 さすがに兄貴分だけあって、最後まで威勢良く『ガンッ!』っとテーブルを叩いた。


 「何言ってんだ、俺がするのは焼くだけだ。ちゃんと残さず食ってけよ。」


 ホワイトの声に、少し離れた焼き台で、レーベンがもう、お好み焼きを作っていた。そして

 

 「リステル、とりあえず10人前、上がったぞ!まだまだ焼くから、俺は手を離せねぇ!お前、運んでくれ!」


 彼が私を呼んだ。そして私が彼の側まで行ったその時、そっと耳元で


 「・・・リステル、呪いとか、ハッタリかまして良かったのか?」


 「大丈夫よ、アイツら腕っ節はアレだけど、オツムの方はかなり弱いから、このくらいやってもバレないわよ。」


 「そうか、ま、俺は材料を使い切るまで焼くだけさ、後は頼んだぞ。」


 「まっかせといて!」


 と、焼きたてのお好み焼きを彼らの前へ、積み上げた。


 「な・・・何だよ、これは。」


 「これは私の世界の食べ物、『お好み焼き』って言うの、散っていった客の分、ちゃんと食べてくのよ。」


 「・・・はぁい。」


  □■□


 「・・・マッカイ・・・お前・・・何枚食べた?俺、20枚。」


 「・・・兄ぃ、俺は22枚・・・もう・・・ムリ・・・。」


 自分でも、うんざりするほど積み上げたお好み焼きを全部食べ、テーブルにつっ伏す悪党二人組。そんな彼らに聞いた。


 「はいはい、良く食べたわねー、どうだった?お味の方は?」


 するとホワイトが


 「旨・・・かった。最初の方は。」

 

 続いてマッカイも


 「あっしも・・・です、でも、粉物って、後から来るんでやすね。」


 二人共、顔を上げずに言った。


 「それじゃあ、食べた分は、ちゃんと払って貰わないとね。はいこれ、請求書。ちょっとオマケしておいたわ。毎度ありぃ~♪」


 と、請求書を差し出すと、未だ顔をあげようとしないまま、チラリと見たホワイトが、『ガタっ!』と縛られていたのもあり、腰に椅子をくっつけたまま立ち上がると


 「こっ・・・ちょっ!高くねぇか!うぇっぷ!」


 「何言ってんの、適正価格よ、お好み焼き42枚分。あ、ちなみに、運営にツケもきくみたいだから、店の評価としては、売上半分の計算になるけどね。」


 「・・・そんなぁ。」


 と、その時、遠くから声がした。


 「おたずね者の『ホワイト&マッカイ』!窃盗に恐喝、暴行、お呼び職務執行妨害の罪で逮捕する!神妙にしろ!」


 今頃になって、運営の呼んだ護衛団がやってきたようだ。

 満腹で動けない彼らは、ロクに抵抗も出来ないまま、そのまましょっぴかれて行ったのだった。


 その後、結果発表があり、私達の店は、最後の追い上げが、功を奏し、総合3位に食い込んだ。

 流石に100万マッカランとはいかなかったものの、お尋ね者を捕らえた謝礼と併せて、一夜にして私達は、結構なお金持ちになったのだった。


  □■□


 「ねぇ、さっきのと、どっちがいい?レーベン、レーベンったらぁ。」


 私は、街の洋服屋で、真っ赤なパーティドレスを試着して、カーテンを開くと、試着室前で待っていた、スーツ姿のレーベンに見せた。すると


 「どっちでもいいって。俺には良くわからん。ってゆうか、もうコレ脱いでいいか?」


 さすがにスーツは着慣れないのか、はたまた着たことが無いのか、さっきから落ち着かないレーベン


 「もー、レーベンは乙女心がわかってないー、こういう時はね、『どっちでもいい』ってのは禁句なのよ。どうして女心がわかんないかなぁ!」


 「そんなこと言われてもなぁ・・・。」


 そう、これから私たちは、浮いたお金で、ちょっと贅沢をしてみようと、騒動から数日経った後、立ち寄ったとある街で、王族も通うという、レストランを見つけ、そこに行くことにしたのだ。

 いつもの、薄汚れた格好では、バツが悪いということで、ドレスと、スーツを新調し、これから出かけるための準備をしていた。


 -王族のレストラン【クール・ド・リオン】-


 一歩中に入ると、そこは格調の高い調度品や、石像が壁に綺麗に配置されていた。

 私達の着いた席は、テーブルの脚、一本一本、綺麗に磨きあげられ、清潔感のある、敷布、テーブルの中央には、キャンドルが、静かに温かい光をたたえていた。

 

 「しっかしまぁ・・・ファンタジーって『中世ヨーロッパ』が好きよねぇ。」


 以前、本か何かで読んだまんまの店の造りに、思わず呟くと


 「ん・・・?リステル、何か言ったか?」


 「え?いえ、何でも。」


 そんなこんなで、前菜やら、スープやら、出された料理を堪能していた。感想としては、さすがは王族、と、言ったところだろうか。

 一方のレーベンは、終始、落ち着かない様子だった。そんな彼にだけ聞こえるように、小声で


 「大丈夫だって、アンタが獣人でも、お金さえ払えばお客様。ソワソワしてると格好悪いわよ。」


 「いや、そうじゃねぇんだ、この、『スーツ』てのが何とも・・・」


 「ま、アンタずっと、ゆったりめのフードだったしね、あ、ちょっと席外すから、待っててね。」


 「あぁ、早く戻ってきてくれよ、一人じゃ何とも落ち着かんからな。」


 「わかってるわよ。」


 と、久々にしたのもあって、メイクがちょっと崩れてきたので、化粧室に立つ私の耳に


 「ご来場の皆様、今日は一風変わったメインディッシュを堪能していただきたく存じます。この間、シェフが面白いものを見つけて・・・」


 最後まで聞こえなかったけど、男の人が、興奮しながら大きな声で喋っているのが聞こえた。

 そろそろメインディッシュか、早いところ戻らないとな。


 ――――――――――――――――


 「良かった!間に合った。メインディッシュはまだみたいね。」


 化粧を直し、席に戻ると、座ったまま硬直したレーベンに言った


 「あぁ、でも、もうそろそろみたいだぞ。」


 「そういえば、今日のメインって、何か特別なものみたいね」


 「そうだな、確か『オックォノ・ミッヤーッキ』って名前らしいぞ。」


 ん?何だろう。既に、嫌な予感しかしないのは私だけだろうか。

 その時、厨房のドアが開き、何人ものボーイさんが、ゾロゾロと、銀色のプレートを持って出てきて、各々のテーブルへとついた。

 

 「さぁ!今回の新メニュー!この間、シェフが『グルメ大会』に行ったとき、目新しさと、味に感動し、それを忠実に再現した『オックォノ・ミッヤーッキ』を堪能ください!それでは、どうぞ!」


 その声に、ボーイさんが、被せていた蓋を取り、私の前に出したその料理は、案の定・・・




 お好み焼き。




 どうしてこうなった・・・?


 つづく

 -ここから後書き的なものです-


 お好み焼き回、今回で終了です。いかがでしたでしょうか?

 半ば、強引な感じになってしまいました。が、後悔はしていない。

 

 そして


 ちょっとだけ、宣伝。

 同時進行で、もう一本、小説をうpしています。

 ちょっと長めですが、よろしければ、そちらも目を通してみてくださいね。

 よろしくお願いします。


 最後に・・・


 今回のお酒の紹介

 【クールドリオン】

 

 リンゴのブランデーです。

 値段も、お手頃・・・とはいきませんが、ちょっとした贅沢をしたい時くらいには、気軽に買える値段です。

 ワタクシも、これに関してだけは、飲んでみたいな、なんて思ってます。

 そういえば、コレではないのですが、リンゴがそのまま丸ごと入ったブランデーもあるんです。味よりも


 どうやって入れたかが、気になってしょうがありません。


 それではまた、作者でした。

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