【第12話・得意なもので、勝負してみようか】
【ザザザザザ・・・ズザザザザザ・・・】
目の前の林から、無数の鰹・・・いや、この世界では、『ペリエ』って言うんだった。
そうこうしているうちに、それが、這い出て来た。
それは、『何でもアリ』のファンタジーの世界とはいえ、百歩二百歩譲っても、魚の姿をした生き物が、地面を這う姿に、違和感を感じずにはいられない。
それが、後から後から林の中から湧き出て、私達を襲うでもなく、横を通り抜けると、一直線に、村へと向かっている。その姿を何とはなしに眺めていたその時、さっき、『花屋です』と、名乗った男の大声がした。
「変換師さん!何ボーっとしてるんですか!?」
「あ?え?」
「アイツの大行進を、止めてくださいって言ってるんですっ!」
「そんなっ!いきなり言われてもっ!」
「もう!どうするんですか!このままじゃ、村がまた、メチャクチャにされてしまうっ!」
頭を抱える花屋。それを見て、頭を抱える私。すると
「なぁ、『イカクサ草』この辺に生えてねぇか?お前、花屋だろ?多少草にも詳しいいと思うんだがな。」
レーベンが、間に入って、花屋に言った。
「え?その草なら、珍しい草じゃないですから、その辺に。」
「わかってるんだ、だけどよ、それと良く似た草も生えてるんだよ、俺には見分けがつかねぇし、嗅ぎ分けようとしても、臭いが混ざっちまって、特定出来ねぇんだよ。」
レーベンの言葉に、『そうですね・・・』と、呟きながら、地面をゴソゴソとやる花屋、そして摘んだ草をレーベンに差し出すと
「これでいいんですか?」
「あぁ、いいぜ、そしてリステル!」
「はっ・・・はいっ!」
「お前、変換術で、この草をデカくしてくれ。」
「わかったわよ、そんじゃ、サブスタンスチェンジ!」
私の呪文に呼応するように、花屋の摘んだ『イカクサ草』がデカくなっていった。しかし、それと同時に
イカ臭いっ!
周囲に充満するイカの匂い、この草から出ているのだろうか?
例えて言うなら、漁港の側で、おばあちゃんが大量のスルメイカを欲しているような、その、どキツい匂いと言うのが妥当だろうか。
さすがに、アタリメは好きだけど、この臭いはたまらない。
「ねぇっ!レーベン!これって意味あんの!?」
思わずレーベンに言うと。ベースが犬のレーベンは、この匂いは相当こたえるらしく、顔を歪めつつ、鼻を押さえながら
「あるっ!ってゆうか酷ぇ匂いだぜ!まぁ見てなって!」
すると、さっき、私の横を通り抜けた、かつ・・・いやペリエの集団が動きを止め、私たちに向かってきた。
どんどんと距離が詰まってくる、でも・・・村は救われたけど、私達が救われないじゃない!
「レレレレレーベンっ!こっち来る!こっち来るうぅぅぅぅっ!」
「リステルっ!慌てるな!ペリエの狙いはその『イカクサ草』だ!さっさとこの場から離れるぞっ!」
「本当に大丈夫なの!」
「大丈夫だ!ペリエはこの『イカクサ草』の匂いによく似た生き物を、主食としてるんだとよ、名前までは知らんがな。」
あー、いわゆるひとつの『撒き餌』ってヤツか。ってゆうかレーベンって、たまに物知りなのよね。
彼の言葉に、『イカクサ草』を放置して、その場を離れると、ペリエの集団が、そこに群がっていく。みるみるうちに、銀色の塊が出来ていった。それを見て、レーベンがまた
「リステル、今度は大きな網を作ってくれ、これで文字通り、一網打尽ってヤツだな。
「わかった。サブスタンスチェンジ!」
両手に握った草が、変化して、大きな大きな網へと変化した、後は、コレをペリエの群れに被せておしまい。ばっちり任務完了!するとその時
「お嬢ちゃん、その網、そんな編み方じゃすぐに切れちまうわい。」
私に声をかけたのは、自己紹介で『農夫』と言っていた、お爺さんに近いおじさん。私の作った網を両手で持つと、『ほれ』と言いつつ、ちぎってしまった。
「こんな強度じゃ、折角おびき寄せたペリエに、ちぎられてしまうでの、しかし、草とはいえ、編み方一つで、頑丈になるもんじゃ。」
そう言いつつ、慣れた手つきで、草を編んだ。
「嬢ちゃん、今度は、この編み方をマネして作ってご覧、ワシら農夫ってのは、草ば使うて、色んなものを作っちょるでの、これなら、ちょっとやそっとじゃ破れんモンが出来上がるでの。」
おじさんに言われたまま、編み方を真似して、作る。それが、みるみるうちに、大きくなり、ペリエの集団を覆えるくらいにまでなった。
でも・・・
「この網、どうやって投げよう。」
「あ・・・。」
「レーベン、やってよ。」
「さすがの俺でも、こんなバカでかい網は無理だ。しょうがない、両端を二人で持って引っ張って・・・」
と、その時
「オイラに任せるだ!」
声を上げたのは、『力持ち』
「アナタ、この網、投げられるの?」
「もちろんだとも、それに、こっただ網くらい投げられんだら、村一番の力持ちの名折れだべ!」
そう言うや否や、みるみるうちに、網をまとめあげ、空中に向かって放り投げた。
それが、大きく広がり、ペリエの集団の上に綺麗に覆いかぶさった。
「やった!」
思わず歓喜の声を上げる私に、農夫のおじさんが
「まだじゃ、アンタの力とやらで、隙間から逃げれんように、網の端をしっかりと、草で地面に固定するんじゃ!もうそろそろ、匂いに飽きたペリエが動き出すでの。」
「そっか、わかった。サブスタンスチェンジ!」
・・・。
・・・。
・・・。
「無事、捕獲・・・だな。」
ビチビチと、のたうつペリエを眺めつつ、満足そうに呟くレーベン
「そうね、一時はこのメンバーで、どうなることかと思ったけどね。」
「ま、最初、色々とこだわってたようだけど、各々が、出来ることをやれば、何とかなるってことさ。」
するとその時、花屋、農夫、力持ちの三人が寄ってきて、口々に
「今年は被害ゼロってすごいよな。ちょっと『樹木使い』を見直したぜ。」
「そうじゃの、毎年、なんだかんだで被害が出てたからのう。」
「そうそう、でも、姉ちゃんの作った『草の網』凄い頑丈だな。」
そう言って、成功を喜び合っている。
そういえば、短い間だけど、一緒に立ち向かったこの人達の名前、知らなかったんだよな。
「そういえば、アナタ達の名前、知らなかったわね。私はリステル、そして、彼が私の相棒、獣人のレーベン。」
そう言うと
「俺、花屋の『ガンチア』!」
「ワシは、農夫の『アスティ』じゃ。」
「オイラは力持ちの『スプマンテ』だべ。」
ガンチア、アスティ、スプマンテ。短い間だったけど、みんないい人だったな。そう思い、現場を後にした。
□■□
「いやー、はっはっはっ!今年の被害がゼロで済んだのは、まさしく、アナタ達のおかげじゃ、礼を言う。」
なんだかんだで、全ての鰹・・・いや、ペリエを一網打尽にして、村の被害を食い止めた私達は、再び村長の家に呼ばれていた。
「まぁ、村が無事で何よりですね。でも・・・あのペリエって、そんな凶暴なんですか?どうみても、あの・・・その、食べたら美味しそう、みたいな。」
「は?凶暴とは一言も言っておりませんぞ?アレはたまに、住処を変える時に、集団で大移動をしましてな、ところかまわず突進してくるのですじゃ、そのおかげで、家の壁は壊され、畑は滅茶苦茶、家畜も怪我しましてな、困っとったわけですわ。丁度今時期くらいが、移動時期でしてな、本当は、二三日、様子を見てもらうつもりだったんじゃが、ドンピシャで移動日に当たるとは。」
はー、陸地を泳ぐとはいえ、回遊魚みたいな動き、やっぱりベースは鰹なんだ。それに、あんなのに突進されたら、大きな弾丸が直撃しているようなもんだものね。そりゃあ痛いわ。
「それにしても、いい働きをしてくれました。ありがとうございます。」
そう言いつつ、村長が深々と頭を下げた。
何かいいことをしたような、そんな気がして、ちょっと気分が良かった。それはそうと、一つ、気になることが
「そういえば、あの大量のペリエ、どうするんですか?食べるんですか?」
「食べる!?とんでもない、あのまま焼却処分して、土に埋めますじゃ。」
「えぇっ!?勿体ない。私のせか・・・いやもとい、故郷では、アレを加工して、サラダにしたり、ごはんにかけたり、何か一品足りないときに、重宝するんだけどなぁ。」
「は・・・?」
そんなわけで、村人全員集めての、ツナ作りの講習会。
味は元の世界と、遜色なく、その後、ツナはこの村の名物となりましたとさ。
ん・・・?ってゆうか私達、何しに来たんだろ?
-ここから後書き的なものです-
今回は、すんなりと、話の構図が浮かびました。
当初の案では、鰹の群れは早々にやっつけて、ボス鰹とレーベンが・・・という構図だったんですが、バトルの描写がことのほか苦手なのと、話が暗くなる、普段の本編は、思いっきりコメディで行こうと決めていたこともあり、こういった形で締めることと、相成りました。
バトルを望まれていた方、申し訳ありません。
そのうち、レーベンが大立ち回りをする、そんなところも書けたらいいなぁなんて、思ってます。
そして、定番となりました
お酒の紹介のコーナー パフパフパフ~♪
今回、村人三人衆の名前として使ったお酒
『ガンチアアスティスプマンテ』
スパークリングワインですね。
マスカットの味、そして香り。飲みやすいです。値段もお手頃
アルコール度数も7.5度と軽目です。ってゆうか、ワタクシからすると、この手のお酒はぶっちゃけ
ジュースです。
ビンスコでも行けちゃいます。
とはいえ、一気に飲むと、酔いが回るので、ワイングラスでチビチビと楽しむことをオススメします。
それではまた、作者でした。




