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【第10話・降りかかる火の粉を払ってみようか】

 

 ちゃんか ちゃんか ちゃんか ちゃんか ちゃんちゃんちゃん。

 (脳内で、体の弱い、洞窟探検家がお亡くなりになった音楽に、変換してお楽しみ下さい。)


 「終わった・・・。」


 獣人二人に囲まれ、今にも戦闘開始!という状況で、私の最大の武器となる『草』がない。

 文字どり、『藁にもすがる思い』、それなのに、石畳で整備された足元には、草一本生えていない。

 思わず、倒れ込む私に、男の声がした。


 「おいおい、威勢のいいのは最初だけかぁ?」

 

 明らかに、私を挑発している。とはいえ、どうしようもない。思わず拳を握りしめた時に、そんな思いが口をついた。


 「・・・草。」


 その私の声に男達が、あざけるように言った。


 「草?草って言ったか?姉ちゃん、怖さのあまり、とうとうおかしくなっちまったのか?」


 「兄貴、とっととコイツ(革袋)貰って引き上げましょうやあ。周りも何か騒いでいるみたいだし、そろそろ警備兵とか来ちゃいますぜ。やっぱり、威勢がいいだけで、所詮は女、何もできやしませんて。」


 その声に、顔を上げると、男達は、フードを深く被り、歩き出そうとしていた。

 私は、フードの裾を掴んで言った。


 「・・・待ちなさいよ。」


 裾を引っ張られた、悪党の片割れが、戦意喪失していたと、思い込んでいた私の行動に、ちょっと驚きながら言った。


 「おっと、お嬢ちゃん、そんな細腕で、まだ何かやろうってのかい?痛い目見たくなかったら、その腕を引っ込めるこった・・・」


 その言葉が終わる前に、私のチョップが眉間に炸裂した。


 「いでっ!やンのかコノヤロー!」


 不意を突かれ、びっくりしたのか、少し身を引きながら怒鳴る悪党。その声が、私の体を(つんざ)いた時、私の中で、何かが切れ、沸き上がる衝動をそのまま、悪党に怒鳴り返していた。


 「『やんのかコノヤロー!』ってのはウチのセリフや!この場を、このまま不完全燃焼で終わらせるつもりなん!?何や言うてみい!」


 「えっ、え゛ぇ゛ーーーーっ!?」


 「『え゛ぇ゛ーーーっ』て、何間抜けな声上てん!それに何もせんと、勝手に引き上げようとしてん、ウチは『樹木』の召喚師や、何やるにしてもな、草が必要やねんて、ここでウチとアンタ等がドンパチやって、白熱した戦闘を繰り広げてや、知らない間に集まった野次馬にドーン!ドドーン!でワー!みたいなことしようとか、思わへんのか?折角・・・オイシイところなのに、それでもアンタ、ファンタジーの住人?今まで我慢して聞いとったら、セリフも登場の仕方も帰り方も月並み、て、ほならいつまでたっても三流から抜け出られへんで?とにかくな、お姉さんvs小悪党って図式が成り立つんやで?それを、アンタ等ときたら・・・何が『警備兵来るから引き上げようぜ』?はぁ?何言うてん、芸人なら芸人らしく、オマワリ巻き込んでオイシイところをかっさらう、これが芸人ってモンやろ?そんなブレた芸風が本場で通用する思ててん?アホかぁ!」


 怒りに任せてPCの画面上だと10行くらいまくし立てただろうか。すると悪党は後ずさりをしながら


 「あ、え・・・と、何かすいませんでした。ってゆうか、突然喋り方変わるし、この人何か怖いよ兄ぃ・・・。」


 「弟よ、これがいわゆるひとつの『電波さん』というやつだ、風の噂で聞いたところによると、マイワールドの中に引きこもったっきり、帰ってこれなくなる病気なのだそうだ。伝染(うつ)ると、大変なことになるらしい。」


 「と・・・いうことは。」


 「やることは一つ、わかるな・・・。」


 そして、顔を見合わせ、二人無言で頷いたかと思うと、次の瞬間



 『逃げろおぉぉぉぉぉっ!』



 私のお金の入った革袋を放り投げ、一目散に逃げていった。

 


  □■□



 「よぉ、お帰り、ん?何か疲れてないか?」


 とりあえず、あれから何とか食料を買って、レーベンの元に戻る私、そんな私の顔を見て、不思議そうに言った。そんな彼に答える。

 

 「え?あ、いや・・・ちょっとトラブルに巻き込まれそうなっててん。」


 「そうか、無事で良かったよ・・・ってゆうかお前、ちょっと喋り方変わってないか?」


 「あ、そうよね、慌てたりすると素に戻っちゃうのよね、まぁ気にしないで。」


 そう、私は怒ったりすると、関西弁が出てしまう。お父さんは標準語圏の人だけど、お母さんは関西出身。ここ、異世界に飛ばされる前は、周りが標準語だったから、それに合わせて、普段は標準語を喋っていただけなんだけど。

 それにしても、論点が定まっていないキレ方をした私も悪いが、悪党くんだりに『電波さん』と言われちょっと傷ついた。

 そんな私の心境をよそに、いつの間にか、私が渡した『マンガ肉』をペロリと平らげたレーベンは言う。


 「まぁ、無事だったなら、いいさ、でも、今度何かあったらすぐに俺を呼ぶんだぞ。」


 「え?アンタ、戦えるの?」


 そう、以前、彼に襲われたとき、ちょっと手合わせをした時、身のこなしは、素人ではないとは思ったけど、ズブの素人の私が、何とか太刀打ち出来ていたような、そんな気がしてそう言うと

 

 「何言ってんだ、リステル、お前、何か勘違いしてるようだけど、追い剥ぎまがいの事をしたのは、お前が初めて、それまでは、用心棒みたいなことをしていたんだぞ。それに、ズブの素人相手で、怪我させるつもりもないのに、本気なんて出せるか。とはいえ、俺が出張る場面が無いのが一番なんだけどさ。」


 「ふぅん、意外ね、まぁでも、この世界で、剣持って戦える人が居るってのは、心強いわ。」


 「だろ?だから持ちつ持たれつ、ってヤツさ、これからもよろしく頼むよ。じゃ、行くか。」


 そう言って立ち上がった。


 

  □■□



 「デカいな・・・。」


 「そうね・・・。」


 その後、街外れに移動した私達は、ギルドの場所を確認し、建物の前まで来ていた。

 さすがに、大きな街だけあって、人も集まるのだろうか、この街のギルドの建物は、今まで居た村より、はるかに大きかった。

 言うなれば、『掘っ立て小屋』対『体育館』。一歩中に入ると、夏祭りの会場みたいに、人でごった返していた。

 私は、早速、レーベンと一緒に、『樹木』の依頼が貼り付けてある、掲示板の所に向かい、眺めた。

 さすがに、今までとは依頼の量も半端なく多い。

 掲示板を見ながら歩いていると、不意に誰かとぶつかった。


 「キャッ!」


 思わず、よろけて倒れたその時。


 「てめぇ!どこ見て歩いてやがる!」


 乱暴な男の声、そしてまた声がした。


 「樹木の変換師くんだりが、『ヘッジズ』様の行く道を塞ぐとは・・・。ちょっと自分の立場ってものを、分からせてやらんとな。」


 その声に顔を上げると、火の灯ったランタンを持ち、真っ赤なマントを纏った男、その横には、ファイナル何とかというゲームで見たような、ゴブリン的な衣装を着た、男、それがベキベキと腕を鳴らしつつ、私ににじりよって来ていた。

 ランタンを持っている・・・ということは、この『ヘッジズ』という男は、『火の変換師』、その派手な変換術と、攻撃力の高さから、変換師の中でも、花形とされ、皆、一度は火の変換師を目指すとも言われている。

 しかも、生まれ持って火の属性を持っていたとしても、変換師となるのは、すごく難しく、ほかの属性に比べ、人数が少ないという。

 そんなことを先生が言っていたような。私は、元の世界に戻ることしか、興味がなく、変換師を目指すときも、そのまま、生まれ持った属性と言われる樹木を選んだわけなんだけど。

 そのうち、ゴブリン的な男が、腰を降ろし、私の顔を覗き込み

 

 「おい、『ぶつかってすいませんでした。』はどうした?口があんだろ?」


 そう、(あざけ)るように言った。

 思わず睨み返すと、ヘッジズという男も、仁王立ちで、腕組みをしながら、私も見下ろしている。

 ってゆうかコイツ、何様なんだろう、思わず、怒りのリミットが外れそうになるも、ここでまた、関西弁でまくし立てたら、また『電波さん』なんて言われてしまうのだろうか。

 どうやら、この異世界では、関西弁は鬼門らしい。

 この大勢の中、電波さんだと思われるのは、さすがに勘弁してほしい。何も言えず唇を噛むことしか出来ないでいると


 「おいおい、嬢ちゃん相手に、大の男が随分な態度じゃねぇか。それに、お前だってよそ見してたのが悪いんだろ?火だか屁だか知らねぇが、恥ずかしいとは思わねぇのか?」


 レーベンの声がした。そして、私と、ゴブリン男の前に立ちはだかる。


 「何だ?テメェ!」


 「ったく、威勢だけはいいな。でもよ、見たところ、お前じゃ俺には勝てねぇよ、勝負したいってなら、付き合ってやってもいいぜ。」


 そう言いつつ、鞘に納まったままの剣を腰から抜いて、『ガツッ!』という音と共に、地面に垂直に突き立てた。

 その時、フードの裾から、チラリと見えた彼の腕を見て


 「貴様・・・獣人か?」


 「そうだ、だったら何だってんだよ、コイツは俺の連れだ。指一本でも触れてみろ、バラバラにしてやるよ。」


 彼も怒っているのだろうか、フードの中から低く『ガルルルル・・・』と唸っているのが聞こえた。その時


 「バトラー!もういい、汚い獣人くんだり相手にしている暇は無い!行くぞ!」


 赤いマントを羽織った男がゴブリン男に言った。すると


 「へ、へい、わかりやした。お前達、命拾いしたな!旦那さんの言いつけだ、今日のところは勘弁してやらぁ!」

 

 そう吐き捨てると、すでに背中を向けた『ヘッジズ』の後を追う『バトラー』と呼ばれたゴブリン男

 何か釈然としないものがあったけど、とりあえずこの場は、レーベンのお陰でやりすごしたみたいだ。


 「レーベン、ありがと、でもアンタまで酷いこと言われちゃったね。」


 「なぁに、そんなもん慣れてるさ、言いたいヤツには言わせておけばいい。あんな小者に腹立てるなんて、アホらしいだけだ。とにかく、お前に何も無くて良かったさ。」


 そう言うと私を見て笑った。


 つづく

 今回のお酒の紹介

 火の変換師、そして腰巾着のゴブリン男の元ネタとなったお酒ですね


 『ヘッジズ&バトラー』

 

 スコッチですね。

 パっと見、何かこう・・・緑のビンといい、何かスコッチ的な感じがしないなー、なんか、スコッチのバッタもんみたいな何かかなー、なんて思ってましたが・・・


 これって、300年の歴史を持つスコッチだったんですね。


 関係者の皆さん、ごめんなさい。

 これからは、凄いお酒なんだな、という認識の元、眺めることにします。


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