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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

夏のホラーを執筆してみました!

薄壁の向こうのお隣さん

作者: 紅p
掲載日:2026/07/15

 揺れる揺れる。

 地震かと思ったがそれは地震じゃなかった。

 それから聞える薄壁の向こうから聞こえるあの音は……。

※「夏のホラー2026」参加作品です

 ガダダダダダ!

 宅配のトラックが通り過ぎるだけで部屋中の壁が揺れるボロアパートの一室に俺は住んでいる。

 俺の名は……まあしがないFランの大学生の名など聞いても仕方がないので言うまい。

 ガタカタタタ……。

 ようやく揺れが静まってきた。

 しかし隣の部屋との壁がまだ揺れている。

 本当に部屋の壁の薄さが目立つ。

 カチャカチャ……カチャッ。

 ほら、隣の家の音がここにいても丸聞こえだ。

 鍵を開けてお帰りだとよ。

「……はい、はい。本当に申しワケありません」

 で、帰って早々いつものように平謝りするおっさん。

 見た事もないが声からしたらおっさんだ。

 毎度毎度だらしない声だな。

 どうせ電話で上司にでも謝ってんだろ?

 別に聞こうと思っているワケじゃない。

 俺はどっかの未来から来た猫型ロボットが居座ってる部屋のような造りの部屋に住んでいるだけさ。

 畳じゃなくフローリングのその部屋の真ん中に机が一つ。

 そこが俺の定位置。

 そのすぐ後ろに押し入れがある。

 そこから隣の部屋の声が聞こえてくるってワケよ。

 いつも夜だ。

 今日も、もう午後九時近くだぜ?

 生ぬるい風を運んでくる窓の外は真っ暗。

 そして虫の声一つも聞こえねえ。

 しっかし大人っていうのも面倒臭いものだ。

 こう毎日毎日夜になると謝る声を聞かされちゃあ就職なんてしたくねえな。

 俺が、はあぁと大きな溜息をついた時だった。

「……へっへ、わかっていますよぅ」

 何だ?

 明らかに隣の部屋から聞こえる声のトーンが変わった。

 へいこらと平謝りするつまらないものからわくわくと楽しそうな期待するようなものへと一変した。

 隣のおっさんは何を話しているのだろうか?

 興味、欲望……。

 聞きたいという欲求が俺を責めて来る。

 どうせ分かるはずがないと思った俺はすっと立ち上がった。

 ほんの出来心。

 それが俺を突き動かし押し入れの戸に手をかけさせた。

 音も立てずに戸を引く。

 しかし声は聞こえない。

 もう電話は終わったのか?

 いや、声が小さくなっただけか。

 楽しそうに笑って話している声はまだ聞こえる。

 とにかくその話を聞くために俺は押し入れの中に入った。

 後から考えるとここで踏み止まっておけばよかった。

 まさかあんな目に遭うなんて思いもしなかった……。

 俺は押し入れの二段目に上がった。

 一段目は色んな荷物があり薄壁に耳を当てる事なんてできないからそうなった。

 ここは敷布団が置かれているだけだ。

 ひょいとその上に乗り息を殺して薄壁に耳を近づける。

 暗い。

 少し湿気がこもった臭いなんか気にせずに薄壁に耳を当てた。

 さて、お隣さんは何を話してるんだ……?

 音を立てるな。

 俺が息を飲んだ時だった。

 首に冷たい感覚が現れた。

 妙な感覚。

 有り得ない感覚。

 それが何なのか決して見てはいけないと俺の中で直感した。

 ただ真直ぐ前だけを見つめる。

 額から大粒の汗が流れ落ちた。

 それは真夏の暑さの正だけじゃない。

 体中から危険を知らせるサインだった。

 頬を伝い顎から落ちた一粒の汗はすぐさまピチャッと音を立てた。

 つまり俺の顎のすぐ下にそれはある。

 冷たく大きく鋭い何か。

 それが何故か薄壁を貫通して俺の顎の下にある。

 しかも首にぴったりとつけられている。

 一ミリでも動けば首が斬り落とされる事が容易に分かった。

 どうなってんだよ!

 薄壁から音なんかしなかったぞ!!

 なのに……なのに何でこんなもんがあんだよ!?

 色々思う事はあっても声を出せない。

 カタカタ小さくふるえている俺の耳に薄壁の向こうからこんな声が聞こえてきた。

「いえいえ、こちらの事です。

 えぇ、えぇ、ついでにもう一つ狩っても宜しいでしょうかねぇ?」

 は? カる? ついでって……?!

 いよいよ訳が分からなくなってきた。

 声もさっきのだらしないおっさんの声じゃない。

 こう、ひょうひょうとしているが何か隠しているうさんくさい声になっていた。

 とりあえず分かる事は薄壁の向こうの奴は普通じゃないって事だけだった。

 あの時踏み止まっておけばよかった。

 後悔している俺の耳に今度はこんな声が薄壁の向こうから聞こえる。

「はへ? あぁ……そーですかぁ」

 何とも残念そうな拍子抜けというような声だった。

 すると間もなく俺は顎の下にあった何かから解放された。

「はぁっはぁっはぁっ……」

 どっと出る息と汗。

 力が出ずにその場で何とか息だけを確保している俺に薄壁の向こうからこんな声が聞こえてきた。

「お隣さん? あなたは運がよかったみたいですねぇ。

 ついでにもう一人ぐらい狩っていこうかと思いましたが私、今しがた転勤を仰せつかりまして

その暇がなくなりましたものでして……って聞いてます?」

 ヒラヒラと俺の目の前に白い何かが揺れていた。

 それをよく見ると……白骨の手!?

 人間の手のようにちゃんと関節のある手だった。

 暗い押し入れの二段目にそれが薄壁を貫いて揺れていた。

 それをを見たのを最後に俺は意識を失った。

ー●

 次の日俺はどっかの未来から来た猫型ロボットが眠る所と同じ所で目が覚めた。

 時間なんかわからない。

 しかし押入れの外が明るい事だけはわかる。

 あと、体中が痛くて汗だくだった。

 そりゃそうだろ。

 真夏でこんな所で眠っていたらそうもなる。

 昨日の事は夢だったと思い、ははっと俺が笑った時だった。

「お隣さん? もう私いきますけど盗み聞きはあまりよくないですよぅ?

 あと、溜息もあまりよくないですねぇ。幸せが逃げちゃうって言うでしょう?」

 薄壁の向こうからまたお隣さんの楽し気な声が聞こえてきた。

 夢じゃなかった……。

 笑えなくなった俺に薄壁の向こうのお隣さんは話しを続ける。

「お節介ついでに教えてあげますと私ですねぇ……職業柄、魂を狩りすぎて毎日怒られてたんです。

 ほどほどにしときなさいって注意されてたんですねぇ。

 何でもほどほどに……これは大人からの忠告ですよぅ?」

 薄壁の向こうから聞こえたお隣さんの声で俺はまた意識を失った。

 次に俺が意識を取り戻すと薄壁の向こうのお隣さんの声は聞こえなかった。

 いや、音すら二度と聞こえる事はなかった。

 まずはここまでお付き合いくださり、ありがとうございました!

 と言う事でね、「夏のホラー2026」の参加作品第一号で、し、た♪

 去年の相模よりは真面目に執筆しました! えっへん!

ーー

 うーん……薄壁! ボロアパート生活! 懐かしいねぇ~。

 私、紅pもそのような生活をおくっていた時もありましたのよ? ほほほの、ほ♪

 つまり! このボロアパートのモデルは以前私が住んでいたアパートの一室という事にゃのだ♪

 ほんと、あのアパートはちょっとトラックが通っただけで震度3ぐらいは揺れてたね!

 すき間風はピューピューで凍死しそうだったし、台風で絶対倒れると何度思った事やらね?

 まあ、倒れる事はなかったのですがしょっちゅう水没してました。

 そこは私は1階ではなかったので特に被害は……なかったかな?

 何故かメインの道から1mぐらい下りた所にアパートがありまして

大雨が降るとどばっと雨水が流れ込んできてました。

 そしてそのアパートがあった地域はほとんどのアパートの壁が薄かったみたいです。

 なので友人の家にお泊りに行って夜の8時に女子トークをしていたら

お隣さんからドンッ!!とお知らせがありました(汗)

 そんなに大きな声ではなかったのですがねぇ……。

 お隣さんのTVの音量の方が……。

 と、こそこそとおしゃべりした記憶があります。

 で、私はこれこそが壁ドンの出会いだとずっと思っておりました……にゃはは☆

 あと私もお隣さんからの爆音目覚ましに何度イラっとしたか!

 いやはや……皆様、隣人トラブルには十分ご注意。 紅pでしたを☆


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