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妹が真の聖女だったので、偽りの聖女である私は追放されました。でも、聖女の役目はものすごく退屈だったので、最高に嬉しいです。  作者: 小平ニコ


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第7話(シャノーラ視点)

 その願いが天に届いたのか、三日後の夜、捜索隊が、隣の国で食べ歩きグルメツアーに参加しているお姉様を発見した。


 お姉様は最初、何度『聖女様ですよね?』と尋ねられても、カタコトで『ヒトチガイデス』と言い張っていたが、私がヘロヘロのフラフラで、もうギブアップ寸前であることを伝えられると、すぐにこの国まで戻って来てくれた。


 そしてお姉様は、聖女になってから、たったの五日間でやせ細ってしまった私を見て、心配そうに目を細めた。


「シャノーラ、大丈夫? あなた、魔力の使い方のペース配分、昔から苦手だったものね。いくら強固な結界を作るためとはいえ、一気に力を放出しちゃ、駄目なのよ? こう、グ~ッと溜まってるやつを、カチッと固めるイメージで、それから、ジワ~ッってやってくのよ。わかる?」


 さっぱりわかんない。


 天才の説明は、感覚的すぎる。『グ~ッ』とか、『カチッ』とか、そんなあやふやな言葉で、すべてを理解し、天才と同じ事ができたなら、誰も苦労しない。


 しかし、嬉しい。

 お姉様が帰って来てくれて、本当に嬉しい。


 安堵感から、意識がふっと遠くなる。

 倒れかけた私を、お姉様は優しく抱き留めた。


「おっとっと、危ない危ない。シャノーラ、あなた、ほとんど寝てないんじゃない? もしかして、起きっぱなしで結界を維持してたの? 駄目よ、ちゃんと寝なきゃ。睡眠不足はお肌に悪いんだから。えっとね、寝ながら結界を維持するコツは、こう、夢の中で、フワフワ~ってなってる魔力を、モワッと広げてくって言うか……」


「お、お姉様、もう、『フワフワ~』とか、『モワッ』とか、そういうのいいから、わ、私の代わりに、結界を張って……今、意識が飛んじゃったから、結界が消えて、国が、無防備に……また、魔物が来て……国が、ほろんじゃう……」


 必死な私とは正反対に、お姉様は、ケロッとした様子で言う。


「こんな、聖女に頼りきりで、自衛のための軍隊すらないしょぼい国なんて、別にほろんじゃってもよくない?」


 近くで私たちの話を聞いていた侍女が、お姉様に同調して、笑った。


「あははっ! ですよね~! 私もこの国、色々おかしいと思ってたんですよ~! 一回きれいさっぱり無くなっちゃった方が、スッキリしていいかもしれませんね~」


「でしょでしょ? 破壊なくして、創造なし……古き国がほろぶとき……その残骸の中から、新たなる国が生まれる……これもまた、運命なのよ……」


「わあ、さすが聖女様、詩人ですね~。だいたい58点くらいの出来の詩です~」


「えぇ~、たったの58点? 私的には、75点くらいは行ってると思うんだけど」


「いや、悪くはないんですよ~? ただ、あまりにも表現が直接的すぎるので、そこらへんはもうちょっとぼかした方が、詩としては美しくなるんです~」


「はぁ~、なるほどね~。さすが、高度な教育を受けた侍女ね。勉強になるわ~」


 駄目だ。

 この二人、いかれてる。


 私はふらつきながらも、懸命に抗議する。


「駄目よ、お姉様! 駄目駄目駄目! 確かにこの国は、問題が多いけど、それでも、魔物が攻めてきたら、たくさんの人が死んじゃうのよ! それを、見て見ぬふりなんてできないわ!」


「わかってるわよ~、ちょっとした冗談じゃないの~」


「こんなときに冗談なんて言わないで! ほら、早く結界を張って!」


「は~い」


 そしてお姉様は、結界を展開した。


 お姉様が広範囲の結界を張る瞬間を見るのは初めてだが、その美しさに、私は目を奪われた。まるで、七色のオーロラが広がっていくかのように、柔らかく、そして、強固な結界が、一瞬で国全体を包み込んでいく。


 それはまるで、ダイヤモンドでできたカーテンだ。

 とてつもなく硬く、それなのに、柔軟に姿を変え、広範囲をカバーする。


 二つの相反する要素を、いともたやすく織り込んだ、完璧な結界。

 限られた人間にしか作りだすことのできない、天才の結界。


 もう身にしみてわかってはいたつもりだったが、やはり、ここまで自分との才能の違いを見せつけられると、なんだか切ないような、寂しいような思いが、胸の中で、消えたり浮かんだりした。


 しかし、前にも述べたように、私はもう、お姉様と張り合う気はない。

 素直に自分の負けを認め、微笑さえ浮かべて、私は言う。


「やっぱり、お姉様は凄いわね……私の完敗だわ……お姉様と比べたら、私の結界なんて、穴だらけのボロぞうきんみたいなものね」


「ど、どうしたの、シャノーラ。あなたがそんな、卑屈なこと言うなんて。なんか、いつもの散歩道で、毎回私が通るたびにギャンギャン吠えてきた犬が急に大人しくなったみたいで、心配だわ」


「失礼な例えだけど、まあ、聞かなかったことにするわ……。卑屈って言うか、私、自分の身の程を思い知ったのよ。心の底からね。私程度の才能で、天才のお姉様を追い出して、真の聖女を名乗ってただなんて、今となっては、恥ずかしいわ……」


「そうかしら? あなたの才能も、充分凄いと思うけど」


「やめてよ、お世辞なんて。もっとみじめになるじゃない」

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― 新着の感想 ―
妹へのザマァが少なくても別にいいのですが、姉に「帰ってきて」とか要求するなら、その前に今までの補償をして欲しかったと言うか…。 具体的には、『今まで流してきたお姉さまの悪評(前科二犯くらいに思われるよ…
やっぱり妹のことを犬と同程度に思ってたんだ… そりゃあ突っかかってきても気にならないわ〜
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