表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妹が真の聖女だったので、偽りの聖女である私は追放されました。でも、聖女の役目はものすごく退屈だったので、最高に嬉しいです。  作者: 小平ニコ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/5

第5話(シャノーラ視点)

「はぁ……それで結局、何の用なの? あんたの言う『手順』ってやつを踏んでいいから、早く用件を言いなさい。まったく……私が必死に結界の維持をしてるのが、わからないわけでもないでしょうに……」


「えっ? でも、結界の維持って、多少は疲れるけど、別に必死にならなきゃできないほどのことじゃないんですよね? 前の聖女様は、そう言ってましたよ~?」


 ぐっ……

 この女……

 人がムッとすることを、平然と言ってくれるわね。


 そりゃ、姉さんにとっては、『必死にならなきゃできないほどのことじゃない』でしょうよ。でも、私にとっては大変なことなのよ、この汗だくの顔を見れば、それくらい分かるでしょ? 私、こういう無神経で図々しい奴、大っ嫌い!


 あっ。

 しまった。


 さっきから心が荒れ気味ではあったが、今の怒りが最後の一押しとなり、大きく集中力が乱れ、結界が弱まってしまった……


 一度弱くなった結界を再び強固にするには、倍の集中力がいる。


 急いで、集中しないと。


 私は侍女を無視し、真剣に祈りを捧げ始めた。


 そんな私の気持ちなど知らずに、侍女はペラペラと話し続ける。


「えっと、シャノーラ様~。用件なんですけど、前の聖女様に頼まれてためずらしいお菓子が、今日、やっと手に入ったんですよ~。でも、ほら、前の聖女様、国を出ちゃったじゃないですか~。それで、このお菓子、どうすればいいかなと思って、聞きに来たんですよ~」


 やかましいわね!

 こっちは真剣に集中してるのよ!

 くだらない質問してんじゃないわよ!


 私は『どっかに行け!』と言うように侍女を睨み、祈祷を続ける。しかし、鈍い侍女には私の気持ちが伝わらず、それどころか、侍女は、ゴソゴソとお菓子の包みを開け始めた。


 そして、露になったお菓子を、ゆっくりと私の口元に差し出してくる。


 私は、叫んだ。


「い、いらないわよ、そんなもん! あんた、馬鹿じゃないの!? 祈祷中にお菓子なんて、食べられるわけないでしょ!?」


「えぇ~、でも、前の聖女様は、適当にお祈りしながら、ムシャムシャおやつを食べてましたよ~。だから、シャノーラ様も、おやつを食べたがっているのかと思って、サービスしたんですけど~……」


 おやつを食べながら、適当にお祈りしてたですって!?


 嘘でしょ!? 


 食事をすると、ぼおっとして、どうしても集中力が低下するから、私なんて、この二日間、ほんのちょっとの精進料理と水しか口にしてないのに。だいたい、おやつを貪りながらお祈りするって、聖女のふるまいとしてどうなのよ……


 い、いや、この際、『聖女のふるまい』については、どうでもいい。重要なのは、そんなふざけたお祈りの仕方で、高度な結界を維持し続けていた、お姉様の凄まじい才能だ。


 ……やっぱり、お姉様と私じゃ、ものが違うって言うの?


 そんな。

 そんなの、認めないわ。


 いいわよ、私だって、おやつを食べながら、結界を維持してやるわよ。


 私は顎をしゃくり、侍女に言う。


「わ、わかったわ。口までお菓子を運んでちょうだい。ただし、ゆっくりよ」


「はーい、では、どうぞ。召し上がってください~」


「ちょっ、馬鹿っ! ゆっくりって言ったでしょ! ああっ、もうっ! 唇のまわりが、ベトベトになっちゃったじゃない!」


「えぇ~、だって、シャノーラ様が動くから~、人のせいにしないでくださいよ~」


「私は少しも動いてないわよ! あんたが乱暴に……」


 あっ。

 ああああ。

 しまった……


 くだらないことで言い争いをしているうちに、完全に集中力が切れてしまい、結界が、消えてしまった。一度、ゼロになってしまった結界を、広範囲に張りなおすには、相当の時間がかかる。


 私は涙目になり、いまだにぶつくさと文句を言っている侍女を無視して、血眼で祈りをささげる。しかし、思うようにいかない。これまでの疲れのせいか、スムーズに結界が構築できないのだ。


 しばらく経った頃、神殿の入り口に、衛兵がやって来た。

 衛兵は、息も絶え絶えだ。ここまで、走って来たのだろう。

 彼はずかずかと私の元まで近づき、怒鳴った。


「聖女様! 何をしておられるのですか! 国を包んでいた結界が、消滅してしまいましたよ!」


 うううう。

 あんたに言われなくても、そんなこと、わかってるわよ!


 だから、必死に張りなおそうとしてるんでしょ!?

 集中力が乱れるから、黙っててよ!


 しかし、衛兵は黙らない。

 彼は、私の正面にまで回り込んで、思いっきり叫ぶ。


「間の悪いことに、魔物の大軍が、すぐ近くにまで迫っています! このままでは、この国はおしまいです! ふざけてないで、早く結界を張ってください! ああ、もうっ、今までこんなこと、一度もなかったのにっ!」


 魔物の大軍ですって!?

 ちょっ、それって、本格的に大ピンチじゃない!


 なんという、不運。


 どうして、私が聖女になった途端に、こんなことになるのよ!


 ……いや、たぶん、不運とはちょっと違うわね。

 魔物たちは、ずっと見てたんだ。


 お姉様の完璧な結界が消え、その代わりに、私の作る、不安定な結界が国を包むようになったから、『この様子なら、すぐに侵攻できるチャンスがやってくるかもしれない』と思い、じっと、機会をうかがってたんだわ。


 どうしよう。

 どうしよう。


 今すぐ結界を張らなきゃ、私のせいで、国が亡んじゃう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ