第3話
「ただ、少し言いづらいのだが、国内に聖女が二人もいては、色々と混乱をきたすのでな。お前には、この国を出て行ってもらいたいのだが……」
「全然かまいませんよ。聖女に頼らなきゃ国民を守れないようなしょぼい国に、長々と住み続けたいだなんて思ってませんでしたし、自由の身になったら、まず最初に旅行にでも行くつもりでしたから」
「そうか。話が早くて助かる。……今、我が国をしょぼいと言ったか?」
「聞き間違いですよ~。それじゃ、私、行きますね。さよなら~」
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そして私は、結構な金額の報酬をもらい、大喜びで国を出たのでした。
街道を歩きながら、解放感に、自然と表情が緩んでしまう。
ああ嬉しい。
これで、疲れる上に退屈で、変わり映えのしない聖女の暮らしとおさらばできるし、あの、愚鈍そうな王子とも結婚せずに済む。何もかも、全部シャノーラのおかげだわ。
シャノーラも、念願かなって聖女になり、私にも勝つことができたんだから、幸せでしょうね。うんうん、私も幸せ、シャノーラも幸せ、素晴らしいことだわ。シャノーラは私のこと嫌いだって言ってたけど、別に私、シャノーラのこと、嫌いじゃないもの。だって、姉妹だもんね。
ただ、『あの程度の結界』を張るのに、汗だくで、必死になってたのがちょっと気になるけど、まあ大丈夫でしょ。あの子だって、『自分ならできる』って思ったから、策略まで使って、『真の聖女』になったんだろうし。
いやぁ、でも、参ったなあ。ただでさえ、ご近所での私の印象は最悪なのに、これで、前科二犯の上に、聖女を騙って国を追放された、超凶悪人物になっちゃったじゃないの。まっ、人にどう思われようと、別にいいんだけどね~。
その時だった。
街道の草むらから、いきなり魔物が出現した。
狼に似た、かなり強力な種族だ。
魔物は私に向かって唸りを上げ、襲い掛かって来る。
私はすぐに、自分の周囲に結界を張った。
先程シャノーラが見せた結界の、十倍は強力なやつを。
あまりにも強力過ぎる結界に触れた魔物は、それだけで腕を痛め、悲鳴を上げると、大慌てで逃げて行った。あらら、ちょっとやり過ぎたかしら。別に、怪我させるつもりはなかったのに。最近、長時間ゆるい結界を張ることしかしてなかったから、加減を間違っちゃったわ。ごめんね。
今やったように、短時間、強力な結界を張るのは、たやすいことだ。私がその気になれば、今の魔物くらい、結界の力で消滅させることだってできる。
本当に難しいのは、一定の強度を保ったまま、長時間、休むことなく結界を張り続けることだ。……シャノーラ、そこら辺のこと、ちゃんと分かってるのかしら? まあ、心配ないわよね、あの子もなかなかの秀才だし。
さてさて、お金もいっぱいあるから、旅費には困らないし、これからどこに行こうかな。ああ~、天気もいいし、自由って最高! よし、とりあえず、目的地なんか決めずに、気の向くまま、道の果てまで行ってみるとしますか!
……と思ったけど、よく考えたら面倒だわ。道の果てって、遠すぎだし。
やっぱり隣の国あたりで、適当に食べ歩きでもして遊ぼうっと。
次回からは、シャノーラの視点で物語が進行します。
姉から聖女の座を奪い取ったシャノーラでしたが、聖女の役目を果たしていくのは、想像していたよりはるかに大変だったのでした。




