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妹が真の聖女だったので、偽りの聖女である私は追放されました。でも、聖女の役目はものすごく退屈だったので、最高に嬉しいです。  作者: 小平ニコ


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第2話

 それから一ヶ月後。


 今日も今日とて、神殿で祈りを捧げ続ける、退屈な私。


 そんな私の元に、来客があった。

 王様と、王子様と、なんと、シャノーラだ。


 シャノーラは、聖女が身にまとうような純白の衣装を着て、不敵に微笑んでいる。

 王子様は、ぼおっとした様子で神殿の暗がりを見つめ、なにも喋らない。


 私も、黙っていた。『何か御用ですか?』と尋ねようかとも思ったが、何か用があるから来たに決まってるので、今更そんな質問をすることが、なんだか馬鹿げているように感じたからだ。


 そして、王様が口を開く。


「聖女よ。言いにくいことだが、民衆の間で、お前が『偽りの聖女』かもしれないという噂が上がっている」


「はあ、そうですか。……『偽りの聖女』って、なんです?」


「聖女としての役目を果たす力がないのに、手違いで聖女に選ばれてしまった者のことだ」


「へえ~、なるほど~」


 そこで、今まで口を閉じていたシャノーラが、意気揚々と声を張り上げる。


「聖女を務めることができるのは、この国で最も高い魔力を持つ者! それは、この私! 国王陛下、見ててください。今から私が、お姉様よりずっと強力な結界を張って見せますから」


 ふむふむ。

 なんとなく話が読めてきた。


 私が『偽りの聖女』であるという噂を流したのは、きっとシャノーラだろう。この子、こういう陰険な裏工作みたいなの、得意だもんね。たぶん、この前私と別れた後、一生懸命悪い噂を広めて、それが顕在化するのに、だいたい一ヶ月かかったってところなのかしら。


 ああ、それにしても眠たいなあ。今日はまだお昼寝をしていないから、王様の前だけど、自然とあくびが出ちゃう。私は口元を手で隠し、「ふあぁ」とあくびを漏らしてから、言う。


「あの、王様。それじゃ私、結界を消しちゃってもいいですか?」


「うむ。このシャノーラが、どれほどの結界を張れるのか、テストしたいからな。お前は一時的に、結界を張るのをやめてくれ」


「一時的と言わず、ずっとやめたいんですけどね」


「何か言ったか?」


「いえ、何も。それじゃ、消しまーす」


 気の抜けた声と共に、私は、結界を張るのをやめた。


 ああ~、楽だわ~。こうやって、完全に結界をオフにするのなんて、本当にひさしぶり。敵はいつやって来るか分からないし、寝てるときも、無意識で結界を張り続けなきゃいけないから、ほんと、しんどいのよね~。


 結界がなくなったのを確認すると、王様はシャノーラに向き直り、言う。


「では、自分こそが『真の聖女』だと主張するシャノーラよ。結界を張ってみるがいい」


「はい! ……はあああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 わお。

 凄い気合ね。


 結界って、そんなに気合を入れて張るもんじゃないと思うけど、まあ、やり方は人それぞれだもんね。あっ、そうだ。私、今、リラックスして、寝そべっててもいいのかしら? 別にいいわよね。シャノーラが結界を張ってるんだし。


 私はゴロンと横になり、結界を張るシャノーラを見る。


 おおー。

 凄い凄い。


 さすがシャノーラね~。

 けっこういい感じの結界じゃない。


 今まで私が張ってた結界の1・2倍……いや、1・5倍くらいは、強力ね。

 いやもう、結界の色が違うもの、色が。


 この子、『自分の敵』と認定した相手には、手段を選ばずに、割とタチの悪い嫌がらせをするのがちょっとアレだけど(ちなみに私は、過去何度も悪い噂を流され、ご近所の皆さんに、前科二犯の危険人物だと思われている)、実力自体は、ちゃんとあるのよね。


 王様も、「なんという力だ……!」って言って、驚いてる。


 王子様は、相変わらず、退屈そうに神殿の隅っこを眺めている。こう言っては何だけど、その瞳には、知性の光を感じない。この国の第一王子は、あまり利発ではないとの噂だったが、どうやら本当らしい。


 シャノーラは汗だくになりながら、寝そべった私に、勝ち誇ったように言う。


「どう? お姉様! これが私の、真の力よ!」


 私は寝たまま、パチパチと拍手した。


「凄い凄い、いや、ほんと、参りました。私の負けでございます」


「当然よ! 私こそが、本来選ばれるべきだった、『真の聖女』なんだから!」


「いや、まったくもってその通り。私も、最初からそうだと思ってたのよね~」


 姉妹の会話に、王様が割り込んでくる。


「で、では、聖女よ。お前は、自らが『偽りの聖女』であると、認めるのだな?」


「はい。これからは、このシャノーラが『真の聖女』として、国を守ってくれますよ~」


「う、うむ。わかった。聖女の任は、『真の聖女』シャノーラに、引き継がせることにしよう。……さて、こうなった以上、将来結婚するはずであった、我が息子と、お前の婚約については、破棄することになるのだが、よもや、文句はあるまいな」


「ありませんありません。一言もしゃべらず、ずっと神殿の暗がりを眺めてるようなボンヤリ王子様との結婚話がなくなって、むしろ嬉しいです」


「そうか。……今、我が息子を侮辱しなかったか?」


「気のせいですよ~。あの、ところで王様。『偽りの聖女』とはいえ、私、一ヶ月以上も結界を張って、この国を守ってきたんですから、そのぉ、退職金みたいなものって、出たりしませんかね?」


「お、お前、しっかりしておるな……。分かっておる、短い期間だが、我が国のために尽くしてくれたことは事実。それなりの報酬金は出させてもらう」


「やった」

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