助けを求める君は、君は、一番憎むべき人
闇に呑まれる意識。
僕は、母と思われる人と洞窟の奥に行った。
樹海は、砂漠と化していた。
その一角に残った緑地。
風穴に続いているとも、言われるその地で、
僕の意識は、飛んだ。
どこかで、音羽の短い悲鳴が聞こえた気がした。
争う男性の声。
在りし日の母の匂いがして、
僕は、目が覚めた。
全身に痛みを感じて。
「目が覚めたかい?」
目の前に居たのは、僕をよく知っている人だった。
「久しぶりだね」
その笑みを懐かしいと感じなかった。
恐怖。
君は、僕を憎んでいる。
溶けて消えた封雲より、
互いに憎みあい、
二度と会わないと誓った人。
咲桜里。
彼女が、僕の前にいた。
「なんで・・・ここに」
そう、言葉を発しようとした時、全身に痛みが走るのを感じた。
「なんで???」
混乱。
僕の体は、天井から下げられた鎖に絡み取られていた。
「何が起きた?音羽!」
叫んでも、答えはない。
「音羽?」
彼女は、僕に何かを伝えたがっていた。
何が起きた?
「呼んでも無駄」
彼女は言った。
「音羽は、もういないよ」
「もういないって?そんな簡単にいなくなる訳・・・」
「あぁ・・・知らないんだ」
咲桜里は、くすくす笑う。
気づかなかったが、彼女の後ろには、表情を失った人達が、大勢集まり、
地面に伏している僕を見下ろしていた。
彼らは、感染していなかった。
僕は、体を起こし、周りの人達を観察しようとしたが、
顔を上げると誰かに、蹴られてしまう。
「咲桜里・・・何がおきたか、教えてくれないか?」
「何が起きたかって?」
咲桜里が、合図すると、更に蹴り上げられる。
元々、流れていた鼻血が飛び散る。
「辞めろ!感染るぞ」
僕が、感染しているかもしれないのに、避ける事もせず、血飛沫を浴びる人達。
異常な程、無表情に、僕を見下ろす。
この僕への感情は、何なんだ。
憎しみ?
「そうよ。いつまで、ヘラヘラしていられるのかしら」
「彼らは・・・」
表情がない。
「感染するかもって、心配した?」
こんな形で、再会したくなかった。
「感染しなくて良かった。って言えば良かった?」
口の中が切れて、血を吐き出す。
「やっと、会えて嬉しんだけど。早速、あなたには、私達を助けて欲しいの」
「僕が?」
感染していない人が、感染している僕に助けを求めている。
「人であって、人でない。あなたにね」
何度も、殴られて僕は、再び意識を失った。




