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僕にとっての希望

「話しておきたい事がある」


音羽は、洞窟の中で、ポツリと言った。


弱音なんて、吐くなよ。


僕は、そう言いたかったけど、あまりにも、真剣な顔で言うから、


冗談が言えなくなった。


「もう少しで、自分は、消える」


それが、嬉しい事なのか、音羽は、笑みを浮かべていった。


「私が存在する理由がなくなったみたい」


「それは、今、消えていなくなっている人達に、関係しているの」


「たぶん・・・」


音羽を繋ぎ止めていた誰かが、亡くなったという事なのだろう。


「私の念願が叶ったって事」


「じゃあ、おめでとうって言わなきゃ」


「タイミング悪すぎて、笑っちゃう」


そうだよな。


「颯太・・・鼻血」


「うん」


僕らは、この感染症で、本来の問題と向き合う事になる。


自分の存在理由が、突きつけられた。


この世に縛られていた音羽は、ようやく解放されようとしていた。


だが。


「颯太。心配で、いけない」


もしかしたら、僕が、感染したかもしれないから?


「お母さんを認めて」


「え?」


「結局、颯太のお母さんが、今回も守ってくれたと思う。お母さんを許してあげて」


「ちょっと、待って?守ってくれたって、僕は、感染したと思うよ」


「はっきりとは、わからないけど、その程度で、済んでいる。お母さんの血が、颯太を守っているの」


「まだ、わからないよ」


「この洞窟に誘い込んだのは、お母さんだよ。私には、わかる」


「こうなる事をわかって?」


「わかっていたんだと思う。お母さんは、大陸から来たんだよ」


僕は、黙った。


母の噂は、あちこちで、聞く。


殺生石が割れた時、母が何処かに、逃げ去った姿を見たという人が大勢いた。


「颯太を助けようとしたんだよ」


そう言った瞬間、外の空気が変わった。


どん!


空気圧が、洞窟内に伝わってきた。


砂の壁が、入り口に蓋をするように迫っていた。


「人間は、逃げれないね・・・」


「人に造られた物は壊れる。けど、おかげで、助かる命もたくさんあるんだよな」


空を渡る鳥も、砂漠を行き交う爬虫類達も、なんでもなかった。


・・・ように、見える。


南海で、爆発し、この国の半分の人が、消滅していく。


代わりに、他の生き物達が、芽吹き、変わらず、命を育んでいく。


「母が、事前に知っていたのか・・・」


「知っていたとしても、止める気は、なかったわ」


洞窟の奥の闇が揺れて、現れたのは、見た事もないフードを目深に被った人影だった。


「感染したの?颯太」


夢にまで、見た母だった。



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