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人も大地も枯れ果てる

皮肉だ。


遠く地平線に、砂嵐が上がるのが、見える。


壁が迫ってくる。


この日本で、こんな光景が見えるなんて。


遠く鳥達が、ざわめき始め、


音羽は、姿を保てなくなっていた。


「見て・・・」


か弱くなった音羽が、空を仰ぐ。


「嵐が来る・・・鳥達が、逃げてくる。彼らは、なんでもないのね」


「人ではないから」


人だけが、感染する。


再生する前に、破壊があるように、大地から人は、消えたが、それ以外の生物達は、


変わりなかった。


人がいなくなった事で、暴走した科学の産物が、暴走し、破壊され、全てを焼き尽く


したが、人の手の入らなかった世界は、何一つ、変わらなかった。


「残った人達は、北へ逃げるって」


空を覆い尽くす砂の壁を見上げながら、音羽は、言った。


「颯太は、大丈夫なの?」


免れたのか?


そんな訳ない。


僕は、元封雲の亡骸を見下ろしながら、思った。


人に感染する。


僕の鼻腔を満たす鉄の臭い。


生暖かい、ぬるっとした物が、鼻の奥から垂れてきた。


「颯太?」


僕の顎に触れる音羽の手。


冷たく生気はない。


「・・・そうだった・・・」


諦めた様に、笑った。


「半分は、親父の血が流れていたんだ」


皮肉だよな。


一番、憎んだ母親の血に助けられるなんて。


「感染した」


元封雲の亡骸が、笑った気がした。


「あの砂の壁が・・・」


睨みつけるように、音羽が言った。


「感染を運んでくる」


母の血と父の血が闘っている。


人として、死ぬのか。


獣のような母と同じく生きるのか。


僕を洞窟に誘い込んだ妖は、母だったのか。


僕を守る為に、誘い出したのか、それは、わからない。


けど。


母の努力は、泡と消えた。


確かに、


僕は、感染している。


「北へ、行きましょう」


「ダメだ。いけない。助けを求めに行く事で、他の人を巻き込む」


「颯太でも、この場所では、生きれないよ。晴を探そう」


「晴なら、何か、方法を知っているかもしれない」


「かもしれない事で、他の人を巻き込むのか?」


「前と変わらないよ。元々、颯太は、人と一緒にいなかったでしょう」


人といないと言うより、人と分かち合うのが、苦手なだけだ。


「私が・・・消えていなくなる前に、晴に託したい」


「いつになく、弱気な事言うな」


「こうなる前から、わかっていたんだよ。もう、私の存在する意味はないから」


「逃げるなよ。状況が悪くなっていくのに」


格好つけようとしているのに、鼻血が止まらない。


鼻を垂らしながら、格好つける僕って、余裕ある。


「とにかく、存在価値を賭けて、颯太を守る」


「音羽。今更、告白って事?」


「そんなんじゃない」


そう言いながら、僕らは、再び、洞窟へと戻っていった。


砂の嵐がくる前に。


この辺は、広大な砂漠と化していた。



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