ひょっとしての血
「やばい」
僕は、吐夢を抱えた。
感染する。
人なら、そう思うだろう。
生憎、自分は、感染しようがない。
一時、確かに兆候は、見られた。
が。
時間が経つと吸収される様に消えていった。
「何で・・・」
そう思ったが、納得した。
忘れていた自分の血を思い出した。
桜咲里も、感染の恐怖に、駆られているだろう。
顔を見ると、
さして、動揺していなかった。
小さな子が、目や鼻から、出血する姿は、痛々しい。
顔を顰めるが、
逃げる様子はない。
「聞きたかったけど。感染・・・怖くないの?」
これから、感染の広がった地域に真っ直ぐに、向かって行く。
僕を殺したいと思っていても、自分の命が惜しくないなんて、
そこまで、僕に殺意があるとは、思いたくない。
「感染しない」
「しないって?」
僕とは、顔を見合わせた。
「感染しないって・・・言うことは」
まさか、僕らと同じ筈はない。
どう見ても、人としか思えない。
「何で?感染しないって、言い切れる?」
「まさか?」
晴は、心当たりがあった。
「銃弾と同じか?」
「銃弾?」
僕を、一撃で、倒せる銃弾。
手に入れたのは、香港の闇市で、そこで、勝浦と知り合った。
「香港・・・って訳か」
「何?晴?」
恐ろしい事が起きている?闇市で、ワクチンなんて、正気でない。
「何、考えているんだよ」
晴が笑った。
「闇市で、ワクチンなんて、ある訳ないだろう」
「話の流れからして、そう思うでしょ」
「そうじゃない。爆発も感染も、予定通りだったって事だ。問題は、だれが、予定したかって事。」
「侵略と関係ある?」
「ただの侵略なのか。侵略の目的だよな」
「人って、怖い」
「人だけの話かな」
晴と話す間、吐夢の状態は、悪化していった。
それでも、晴は、冷静だった。
「何とかしないと」
桜咲里は、しきりに、吐夢の血を拭う。
「感染した後に、効く薬はない。今の所、ワクチンだけだ・・・ただ。」
「ただって、何?」
「お前と同じなら、感染症城は、治る」
何、言ってんだ。
「晴?」
「仮説だよ。気になっていたんだ。どうして、トムが、俺らの前に現れたのかって?どうして、お前も、爆発の時間に洞窟に居たのかって?」
「それって」
吐夢は、再び、意識を失う。




