自分が存在する理由
地縛霊。
簡単に言うとそんな存在?
颯太が笑う。
微妙な間柄。
圧倒的な霊能力を持つ人間。
そう思っていた。
山寺に預けられた孤児。
そう思っていた。
小さくてひ弱な男の子。
イタズラして、脅かすと、よく鼻を垂らして泣いた。
自分は、何者?
そう思っていた。
体の上に、重い石が乗っていた。
思うように動けない。
「悪さをする怨霊め!」
そう言われて閉じ込められた。
貧しい僧正だった。
大陸から流れてきたと聞いた。
「若い男に騙されたとは言え、人に悪さをするのは、見逃せない」
そう言われた。
あたし・・・何をしたの?
騙されて遊郭に売り飛ばされた。
一緒になろうって言われたのに。
嘘の約束を信じて待った。
その男の顔も思い出せない。
怒りに任せて、火を放った。
祝言の日に、着ようと思っていた晴着を着て、
火を放った。
バチが当たった。
自分は、死のうとしても、死ねなかった。
怨霊とかして、
人を傷つけた。
「少し、反省しなさい」
優しく諭した僧正に逆らった。
逆らったから、更に酷く、その場に縛られた。
何年も。
何十年も。
月日が流れた。
山寺に、鼻を垂らした男の子が現れた。
よく、母親を慕って、泣いていた。
同じ匂いがした。
だが。
人の子だと思った。
自分を押し込んでいる石碑を割るまで。
「良いか。そこを出る時がいつの日か、来るであろう。だが、二度と人を傷つけることがあったら、お前が一番、心を許した者に会えなくなる。約束が、守れるか」
「そんな奴が、現れる訳がない」
「お前をそんな風にした、人間にも罪がある。お前の気持ちが変わる事を期待しよう」
「何を偉そうに。お前の命は、すぐ、燃え尽きるだろう。大陸より、恐ろしい妖に出会い、簡単に消されるだろう」
地面に唾を吐いた。
そんな事もあった。
目の前にいたのは、幼い日の颯太だった。
まさかだよね。
日々の中で、颯太は、成長し、どうして、自分が、恨みに囚われているのか、わからなくなっていた。
大事な存在。
そんな存在が、また、できたのか。
側にいて、母であり、姉であり、友達だった。
・・はず。
大事になっていた?
どんな存在なのか。
人を襲わない。
そんな約束。
大事な者を失うかもしれない。
そう思った時には、消えていた。
自分の事より、颯太を守りたかった。
一瞬で、自分は、消えた。
風の中に散った。
そう思っていた。
「くそ坊主」
誰かが、言った。
「だれ?」
そう思った瞬間、自分は、別の地に飛んでいた。
東京。
辺りには、感染した人間が、山を築くように倒れていた。




