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取り戻せない日常

僕は、今まで、他の人と変わらない存在だと信じていた。


生まれた時の事。


母を傷つけたと聞いた。


危険を感じた父が山寺に預け、その中で、育っていった。


小学校を卒業する時に、海外に行っていた父親が帰ってきて、


山寺を離れる事になった。


全寮制の中学から、高校に行って、他の誰とも変わらない生活をしていた。


忘れていたんだ。


山寺での日々を。


毎日の楽しさに埋もれて、


僕が何者なのか。


一見、人とは、変わらない僕が、どうして山寺に預けられたのか。


思春期の微妙な時期に、楽しさに埋もれる僕と、マイナスの感情に落ち潰されそうな



僕が、心の奥底に眠っていた。


僕自身。


僕が、何者か。


わからない。


僕は、僕を必要としてくれる人達の存在で、成り立っている。


人なのか・・・。


唯一、人と違うのは、


聴覚だった。


意識せずに、遠くの声が、響く事がある。


晴が、何かを言いかけたと思った。


大事な人。


・・・だった?


どういう事だ。


と思った瞬間。


吐夢の悲鳴が聞こえた。


しまった。


子供を1人、車に残してくるなんて、


誰もいないから、


安全だと思ったのが、間違いだった。


獣か・・・。


まさか、人?


「食料か?」


車の中には、まだまだ、食料が積まれたままだった。


「まずい!」


晴と一瞬、目が合った。


早かった。


晴の姿が、一瞬消えた。


こんな事なら、僕らと一緒に移動する必要はないんじゃないかと思うくらい


僕は、ノロノロと晴の後をついて行った。


「やっぱりだ」


腹を空かせた獣なら、仕方がない。


車を取り囲んでいたのは、飢えたらしき、50台くらいの男三人と、


なんと、桜咲里だった。


「え?」


食料を抱えて泣きじゃくる吐夢を、人質に、車のキーを渡せと叫ぶ男と


対峙する桜咲里。


「何で、ここに?」


後をつけていたのは、知っていたが、どうして桜咲里が、助けに入ったのか、


わからなかった。


「子供を離して!」


桜咲里の銃口は、年配の男に向けられていた。


「子供は、人質だ。早く、キーを出せ!」


「全く・・・人って奴は・・・」


舌打ちする晴。


晴でも、一度に、三人は、無理なのか。


「お前ら、人間だけでは、この先も、無事に出られるか、わからんぞ」


「行ってみないとわからないだろう」


「感染して死ぬか、侵略者に、殺されるか。どちらしかない」


「それは、お前達も、同じだろう」


「俺達?」


晴は、笑った。


「そう見えるか」


早かった。


晴は、吐夢を抱える男の腕をすり抜け、助け出すと、ポケットから、


キーを投げつける。


「ほしいなら、やるよ」


「いつの間に?」


吐夢をしっかりと抱きしめる晴。


「この先は、気をつけて行くんだな。今回みたいに、うまくいくとは、限らない」


そして、銃口を向けたまま、ポカンとしている桜咲里に言った。


「後を付けてくる位なら、一緒に行こうか」


そう言うと、桜咲里の銃を下に降ろさせた。


「君らが、思うより、深刻な事になっている」


桜咲里の車に、吐夢を乗せると振り返った。


「先を進むよ。あの人が待っているから」


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