表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

41/53

センチメンタルと政変

こんな顔見た事あるか。


晴。


吐夢の側に居ろと言って、花束を持って行った。


黙って、後ろ姿を見送る?


そんな事ない。


しばらくして、吐夢の安全を確認すると、僕は、距離をとって、


後をつけた。


気づくかも知れない。


でも。


本当は、これも、僕を誘い出す作戦なのでは。


そう思いながら、毒ガスの渦巻くハゲ山に向かった。


温泉観光地のずっと山深く入った人気のないハゲ山。


地元の人達は、吹き出すガスや、辺り一面に転がる小動物の骨から、


地獄谷と呼んでいた。


その寂しい一角に、殺生石と呼ばれる殺伐とした岩があった。


周りを太いしめ縄で、囲まれ、異様な空気に包まれている。


「あぁ・・・」


晴のため息が聞こえた。


何とも言えない悲しい息。


じっと、その表面を見つめ、微動だにしない。


その視線を先を見て、


僕は、ゾッとした。


その岩は、真っ二つに割れ、その一方は、崩れ落ちていた。


僕は、ふと、思い出していた。


岩に閉じ込められていた音羽。


あの山寺が、守る地で、


音羽は、忌み嫌われ、長い間、岩に閉じ込められていた。


「何があった」


晴は、花束を添える事を忘れ、その岩に触れようと手を差し出すが、


しめ縄に弾かれ、慌てて、手を押さえる。


「何だよ!畜生!」


何度も、叫びながら、持っていた花束で、しめ縄を叩き続ける。


晴の行動にしては、あまりにも、感情的すぎて、僕は、思わず、飛び出してしまった。


「やめろ!」


余りにも、哀れで、みっともない。


「颯太・・」


一瞬、泣きそうになる晴。


「らしくない。どうしたんだよ」


「・・・」


ボロボロになった花束を、投げ捨てる晴。


「備えるために、持ってきたんだろう?」


僕は、拾い上げ、その岩の前に置いた。


「お前は、触れる事は、できるのか?」


「僕?」


僕は、そっと手を伸ばす。


晴が、緊張しているのが、わかる。


僕の右手は、晴の緊張をよそに、しめ縄を超え、割れた岩に触れる事ができた。


「だよな・・・」


晴の口元が、緩む。


「お前だもんな」


「どういう事?」


何が、可笑しいのか、晴は、笑い出していた。


「だよな・・・いつまでも、居る訳ないよな」


僕は、感じた疑問を口にした。


「音羽は、昔、山寺のある裏山に封印されていたんだ。それも、岩の下に・・・。晴。ここには、誰か居たの?」


「ここか・・・」


晴の瞳が揺れた。


「ここは・・・」


その時は、僕は、吐夢の叫び声を聞いていた。


吐夢の身に危険が迫っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ