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墓跡と思慕

迷う。


彼を追うのは、何故なのか。


時間をかけて準備してきた。


長い月日。


彼のそばに居た女が気になった。


人ではない。


音羽と言った。


不思議な影のような女だった。


それでいて、艶やかで。


真夏の陽炎にも思えた。


音羽が、襲い掛かってきた瞬間。


嬉しくもあった。


このまま、消えてしまえば、


彼の記憶に残ると。


なのに。


簡単に音羽は、消えた。


砂の様に。


あの時の颯太の顔。


胸が苦しくなったのは、何故だろう。


自分は、ここまで、彼を苦しめる事は、できるのだろうか。


音羽を失った彼の顔。


苦しめばいい。


そう思っていたのに。


ここまで、彼を苦しませた音羽が、


羨ましかった。


東京に向かう彼らを追った。


今なら、できる。


何度も、標準を合わせた。


もう、準備した銃弾は、なかった。


それでも、追いかけた。


なぜか、彼らは、途中で、子供を保護し、


進路を変えていた。


山奥へと入っていく。


そこは、草木も生い茂らない毒ガスが、蔓延している地域。


火山帯の一角に向かっている。


自分は、そこまで、行けない。


途中、待つ事にする。


何の目的で、そこに向かうのか。


そこにあるのは、殺生石。


九尾の狐の伝説のあった場所だった。


*     *     *     *     *     *


「どうしても、行くんだ」


僕は、言った。


吐夢が、トランス状態になった事も、気になったが、


晴が、ムキになって、突き進む方が、理解できなかった。


「子供を連れて行くのは、やめたほうがよくないか?」


「あぁ・・・ここで、待っててくれればいい」


「何、それ?」


1人で、行きたいって事か?


なら、僕らと別れて、行動すればいい。


その位、能力のある晴なら、できるだろう。


「できれば・・・な」


僕をチラッと見た。


「お前を連れて行けたらと思っていたんだけど」


「僕?」


「ここから先、何があるか、わからない。一度、見せておきたかった」


「いやいや・・・どうしたの?晴?」


センチメンタルすぎる。


「吐夢、1人置いて行けないよ」


「あぁ・・・いいだろう。1人で、行くよ」


晴にしても、寂しい笑顔だった。


「どうしたの?」


「いや・・・いい」


晴は、車から降りると、さっと、一つの花束を取り出した。


どこで、手に入れたのか、気になっていたけど、


花束を捧げる場所に、向かうらしい。


「そんなセンスあったんだ」


「俺だってな」


「・・・」


晴は、柄にもなく、小さな花束を大事そうに抱えて、はげ山を登り始めた。


あちこちから、白い煙が上がり、その向こうや、窪地は、きっと、毒ガスが、渦巻いているのだろう。


そこに何があるんだい?


毒ガスの中に、向かわなきゃならない程。


君を惹きつける何かは、どんな存在なの?

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