追う者。追われる者
勝浦は、嫌な予感がしていた。
桜咲里。
自衛隊に居たらしい。
やけにサバサバしていたが、出会いが不自然だった。
異様に、颯太を気にしていたのが、印象的だった。
感染者が出ている。
誰もが、感染を恐れる中で、桜咲里だけは、違った。
優先順位が、颯太だった。
「あいつは、人なんかじゃないんだ。だから、感染とは無縁だろう?」
娘の救出に迷っていた時に、それを聞いた。
チャンスだと思った。
おそらく娘の居る界隈は、感染が蔓延している。
生死は、定かではない。
この間まで、通じていた、連絡も充電がなくない、途絶えた。
一刻も早く、娘を助け出したい。
頼みの綱は、颯太だった。
「感染しているかもよ」
颯太の鼻血を見て、そう悔しそうに呟いていた。
感染していないなら、こいつになら、
頼めるかもしれない。
そう思っていたのに。
桜咲里が、居なくなった。
傭兵達を引き連れて。
香港で会ったのも、それが原因だった。
「颯太を殺させてはならない」
勝浦は、桜咲里を阻止するべく、追った。
彼女に、彼を殺させてはならない。
桜咲里の銃撃の腕を、勝浦は、知っていた。
* * * * *
「子供か・・・」
「いや・・・子供です」
拾ってきた、子供は、吐夢と言った。
音羽の生死がわからないまま、迎えた幼い子。
颯太の心を汲んだ晴の計らいだった。
これから先が、どうなるのか、思いやられたが、
意外と、うまくやっていけるかもしれない。
吐夢の食べっぷりを見て、颯太は、考えた。
本当は、寂しいだけの子なのかもしれない。
あんな、荒れた街の中で、倒れていたなんて。
「どこから、きたんだ?」
晴が、聞いた。
「んま!んま!」
貪るように、口一杯にカレーを押し込む。
「ママは、どこだ?」
その一言に、吐夢は、動きを止めた。
「ママは・・・んじゃった」
よく聞き取れなかった。
「なんだ?」
再度、言わせようとした晴を慌てて、颯太は、止めた。
「言わせてだめだ・・・」
手を止めて、溢れる涙を拭う吐夢。
「ママ・・・死んだの。死んだの・・・」
胸をギュッと掴まれた気分だった。
「晴・・・」
僕の胸も押しつぶされそうだった。
こんなに、小さな子が、親を亡くして、必死に生きようとしている。
目の前の吐夢の姿が、颯太と重なった。




