満たせろ!飢えを満たすのは。
「嘘だろう?」
僕は、思わず呟いた。
遠くで、晴が顔を顰めた。
危機感。
僕が、そう感じたら、晴は、極端な行動に出るだろう。
こんな小さか子供まで。
何があったのか。
唇は、乾いていて、明らかな脱水症状だった。
「動くな」
どうしたら、こんな子供が、こんな言葉を言う事ができるんだろう。
「大丈夫だから」
ナイフを突き付けても、大人に敵う訳ないのに。
そこまで、追い詰められているんだ。
「どうしたの、親は?」
僕は、両手を挙げながら、幼子の様子を見た。
こんな状況で、1人で、生きていける訳がない。
近くに、誰かがいる筈だ。
「そんな脅さなくても、助けてあげれる。1人なの?」
男の子は、目を見開いた。
「車。置いていけ」
「僕らは、どうしても、人を迎えに行かなくてはならない。車を置いていっても、君は、動かす事はできない」
「車に乗る」
「運転はできないよね」
少し、力を入れると、折れてしまいそうな細い腕。
僕は、毛布ごと、男の子を抱え上げた。
「やめろ!」
手足をばたつかせる。
「何やってんだ」
晴が、片眉を釣り上げる。
その時。
パーン。
また、あの音が聞こえた。
風を切る音。
あの匂い。
「まただ!」
僕の全身を熱い血液が流れる。
「追ってきた!」
男の子を抱えたまま、僕は、晴の待つ、車に飛び込んだ。
「嘘だろう?」
走り出しながら、大きな口を開けて晴は、笑った。
笑いすぎて、行儀の悪い男の子の存在を一瞬、忘れてしまいそうだった。
「モテる男は、大変だな」
「まさか・・・だろ」
僕は、振り返った。
白いジープが、後ろから現れた。
どこかで、見た。
それも、そうだ。
桜咲里だ。
まだ、諦めていなかった。
怪我を負いながら、僕を追っているのだ。
「執念というより・・・片思いだな」
そこまで、僕を殺したいのか。
「いやいや・・・何ていうか。復讐というより、片思いだ」
「真剣に考えてくれよ」
1人で、追いかけているのか。
「ところで・・・」
今更ではないが。
「何か、拾い物をしたか」
ようやく、男の子の存在に、気が付いた晴が、声を上げた。
車内にあった水を、驚く程の速さで、飲み干していく。
「なかなか、強気なお子様で・・」
「こんな荒れ果てた街に、子供が1人?」
「僕もおかしいとは、思っていて。車をよこせって」
変わらず男の子は、片手にナイフを握りしめていた。
「なかなか、男気の強い子だな」
「子供だからって、甘くみるな」
男の子は、口元を脱ぎながら、晴に凄んだ。
「まずは、名前を聞こうか・・・礼儀だろう」
動ぜず、晴は、後部シートを振り返った。




