憎しみの裏にある執着心
そこまで、彼を憎むという事。
全ての時間を使って、彼を調べた。
初めて見た時。
全てを捨ててしまった様な、投げやりな瞳。
無気力な陰鬱な空気。
「どうして、彼は、こんなに、哀しそうなのか」
不思議だった。
彼の行動が気になった。
街中で、彼を見つけても、目で、追いかけている。
どんな声で話し、笑うのか。
気になった。
あの時まで。
彼が、原因で、自分の大事な人が亡くなった。
悪だった。
あの陰鬱な空気がそうさせるのか。
彼を調べた。
徹底的に。
あの空気は、自分の生への恨みでしか、なかった。
母親の事を知った。
信じられなかった。
彼の生まれたきっかけや生い立ちを追いかけていた。
自分は、惹かれているのか?
桜咲里は、自問した。
彼の行動を追いながら、彼の目線を追いかけていた。
「まさか・・・」
絶対、亡くなった彼の復讐をする。
ただ、トリガーを引くだけ。
自分に言い聞かせていた。
こんな災いが降ってきて、
自分の目標を見失いかけた。
「迷わず、撃つのよ」
自分に暗示した。
彼を倒せば、全て終わる。
その先の事は、考えなくていい。
撃つだけ。
その瞬間、迷った。
隙をついて、音羽が、飛びかかってくる。
「やられる」
そう思った。
その瞬間、吸い込まれるように、宙に音羽は、消えていった。
「こんな事が」
人ではない奴ら。
自分が相手にしているのは、人ではない。
感染も関係ない。
自分が、感染する前に、あいつを倒す。
迷わず、狙った。
そのつもりだった。
「当たった?」
筈だった。
何かが、光を受けて、横にそれた。
「何?」
弾道が逸れて、跳ね返った。
「まさか・・・」
それた銃弾は、桜咲里を撃ち抜いていた。
「!」
「晴!」
一瞬、僕は、何が起きたか、わからなかった。
銃弾は、僕を撃ち抜く事はなかった。
あの瞬間。
確かに、晴は、僕を助けようとした。
だが、
何より、桜咲里の瞳が、揺らいだのを僕は、知ってしまった。
「桜咲里?」
左肩を打ち抜かれた、疼くまる桜咲里。
思わず、手を差し出す僕を晴が止めた。
「行くぞ」
「だって」
僕は、晴を見上げた。
「忘れるな。何があったか」
「どういう事?」
「音羽の事もだ」
音羽。
本当に消えてしまったの?
「振り向くなよ」
晴は、すでにオンボロになった車に乗り込む。
「晴。待って、音羽が・・・」
姿を変えた彼女が、まだ、残っているような気がした。
「もういない」
「まだ・・・いる。そんな気がする」
「甘いよ」
晴は、荒々しく、アクセルを踏み込んだ。




