彼女の為に
彼は、そういう奴。
期待もしていない。
だから、不意打ちにあったように、銃弾が、僕を襲った時に、
笑った。
今までも、そうだったんだよな。
恨みもしない。
目があった。
撃たれる。
そう思った。
丸腰。
僕には、逃げるしか、方法はない。
だって、
相手は、人間だし。
僕の相手にしてきた輩とは、違う。
術がきく訳がない。
「待って!話せばわかる!」
何が?
自分で、言って可笑しくなった。
桜咲里の銃弾は、避けれた。
そう思った。
けど。
傭兵は、何人いた?
音羽が、僕を見た。
この銃弾は、僕だけを狙うもの。
音羽や晴には、効かない。
僕だけを追い詰めたいのだ。
「当たる!」
その瞬間、スローモーションって言うだろう?
晴と目があった。
奴は、僕らの歴史に関わらない。
きっと、僕に何があっても、動じない。
僕を助ける事はしない。
だよな。
一瞬、晴の瞳が揺れるのがわかった。
「どっちだ?」
晴自身の意識が戻ったか?
邪神の意識に呑まれたか。
僕は、どちらを期待した?
人間性で、言えば、晴なのだろうが、
この場面では、邪神の能力か。
結局、僕は、邪神に期待しているのか?
「話せば・・・」
次の言葉が出てこなかった。
「じゅっ!」
嫌な音がした。
肉が弾ける音がした。
同時に、鉄が漕げる臭い。
「お“お“!」
思わず、左肩を抑える。
「颯太?」
音羽の顔色が変わった。
何かをしでかす。
「寄せ!」
僕は、音羽を止めた。
彼女を暴走させてはならない。
僕を狙ったのは、傭兵だ。
幸か不幸か。
桜咲里ではない。
「大丈夫か?」
二発目、三発目を撃ち込んでくる。
晴は、ヘラヘラ笑いながら、構う事なく、僕の様子を見にくる。
「当たったし」
手の中で、崩れた肉が弾ける。
「いい感じに、焼けてるな」
「冗談言ってる場合じゃない。怪我したし!本気で、殺される」
乗ってきた車を縦に、僕は、叫んだ。
「僕は、身を守る方法がない!」
「殺ろうと思えば、できるだろう?」
「晴!そういう訳には、いかないよ」
「綺麗事、言っている場合でない」
きっと、晴と言い争っている場合では、なかったんだろう。
音羽が、動いた、
ふわりと音もなく。
彼女が、僕と一緒にいたのは、長い。
山寺で、出会ったのは、封雲だけではなかった。
音羽。
永年、成仏できなかった霊。
僕に憑いていた彼女が、
桜咲里に襲いかかって行った。
「やめろ!」
音羽。
約束。
人を襲ったら、消すよ。
音羽は、人を襲ったら、消滅する。
破ってはいけない。
それが、音羽をこの世に、留める約束。
・・・・・だった。
のに。




