その時、光は走る
僕には、悪友が居た。
果たして、友達と言っていいのか、今となっては、わからない。
早くに、母親に捨てられた僕を途方に暮れた父親は、山寺に預けた。
山寺。
胡散臭い場所だった。
文字通り片田舎の山奥にあり、観光地とは遠い場所だった。
様々な伝説があるのに、観光地としては、さっぱりな山寺は、
その怪異現象の為、礼儀のないYouTuber達のせいで、誰も、
寄り付かなかった。
子供の歓声が上がる事もなく、
鳥や木々が風に揺れる音だけが、響く山間で、
僕は、寂しい少年期を過ごした。
そこで、知り合ったのが封雲だった。
早くに親に捨てられた封雲は、僕と同じ境遇だった。
互いの傷を舐め合うように育ち、
時には、押し除けようと、
競うように育った。
もう1人の写し鏡の様だった。
いつも、視線の先には、封雲がいた。
それは、封雲も同じ。
そのバランスが崩れた。
僕に与えられた一本の数珠。
嫉妬があった。
僕にとって、その真実は、苦しみに等しいのに、
封雲にとっては、許せない事実だった。
僕の能力が開花したから。
悪しき血が、目を覚ました。
ようやく迎えに来た父親と、寺を後にして、
普通の生活をしていても、寺での過去が追いかけてきた。
「お前に、逢いたがっている人がいる」
封雲の罠だった。
友達だと思っていた。
信じたかった。
一緒に育った、僕らの間に友情があったと。
僕を、追い詰める為、母を使った。
決して、許されない方法。
長い間、逢う事を、夢見ていた僕にとって、
封雲に利用される事は、耐え難い苦痛だった。
封雲は、僕を苦しめる事で、満たされなかった親への思いを満たしていた。
「今しかないんだ。颯太、逢うなら・・・」
その言葉を信じた。
穏やかな日。
晴は、その事を知っていたんだ。
「裏切り者」
後から、僕は、罵った。
「基本。俺は、人の歴史に関わらない事。それが、信念」
「それで、一体、何千人・・・?何万人が、死んだと」
「誰が、仕組んだ」
「それはさ・・・人だよね」
「そう・・」
そうだよ。君は、風の様に気ままに生きる。
そういう奴。
あの時の僕は、そんな風に、考える事はできなかった。
晴が、黙って、僕の前から消えた日に、それは起こった。
何もかも、不運が重なった。
地殻変動も、
掘削機も。
まるで、誰かが、仕組んだかのように、
あの潜水艦の壁に穴を開けていた。




