安易な選択
勝浦 真凜
何となく、大学に進んだ。
勉強は、ほどほど、できる。
慎重で、神経質。
父親の様に大胆なチャンレンジャーでもなく、
石の橋を壊れるまで、何度も叩いて、落としてしまう程、
慎重なタイプ。
だから、仕事は、楽な仕事が良かった。
メインで、行うわけでもなく。
誰かのサポートで、いい仕事。
適当に相手を見つけて、家庭に入れればいい。
仕事に生きるなんて、向かない。
仕事は、そこそこ、お有料の良い製薬会社の事務だった。
薬とは、全く関係のない食品部。
会議の資料を作ったり、毎日、定時で帰れる仕事。
平凡な毎日が続き、週末の習い事や毎日のランチが関心毎だった。
なのに。
自分が、巻き込まれるなんて、
思わなかった。
いつもの通り、コピーをしていた。
食品部のコピー機が、調子が悪い。
感じの悪い上の階、製薬部門には、行きたくないが、
急ぎのコピーがあった。
データーを取り出し、何枚かを急いで、コピーする。
忙しくて、そのまま、机に置いて、次の仕事に、取り掛かる。
忙しい日だった。
電話の応対や、苦情対応。
感じの悪い上司の接待。
気がつくと、コピーした書類が、乱雑になっていた。
ミスプリがあった。
シュレッダーまで、行くのが、面倒だ。
あとで、やろう。
面倒だから、引き出しに突っ込み、そのまま、ランチへ。
帰宅する事になって、ようやく気がついた。
片付けてから、帰ろう。
最近、ミスが多い。
気をつけなくては。
他の人達が、帰る中、一枚一枚を、確認しながら、シュレッダーにかける。
「う・・ん?」
こんなの、あった?
見慣れないコピーが、混じっていた。
誰かのが、混ざったのかもしれない。
時間が経っているから、再度、コピーしただろう。
内容を何となく、見てしまった。
ワクチン・・・。
その文字が目に入った。
今、流行りの。
そう思ったが、何か、引っかかっていた。
社内で、何日か前の飲み会。
トイレの中で、聞いた洗面所の会話。
海溝深くに沈んだ生物兵器があるという都市伝説。
それを意識したのか、ワクチン開発が、我が社であると言う話。
「ワクチンと沈んだ生物兵器。何が、関係するの?」
洗面所で、メイクを直していた先輩が笑った。
「し!」
幹部と何度か、付き合っているという局が言った。
「大昔、うちで、携わった話よ。万が一の事がある。何年も前に、今起きている事を試みた時があったの」
「そりゃぁ、誰もが、生物兵器は、考えるわよね。炭疽菌とかもそう。」
「もっと、普通に、どこでもある感染症を考えたんでしょうね。いい?どちらが先かは、わからない。開発した時に、ワクチンは、必ず作ってあるの」
「それが、どうしたの。海に沈んであるんでしょう?」
「そう。海の底ね。届かない場所。だけど、それが、爆発したら、どうなるかって話が出ていて」
「だって・・・海の底なんでしょう?感染する?」
「そうよね。感染する訳がない。」
大して、気に留めなかった。
都市伝説。
この界隈には、多くある。
戦国武将の遺恨とか。
海の底に眠る生物兵器。
しっくり来なかったが、そのコピーにあったのは、
ワクチンの廃棄についてだった。
倉庫にあるワクチン。
使用期限切れ。
かなり昔のワクチンだった。
それがあると言う事は、
都市伝説なんかじゃない。
本当に海の底にあるのだ。
生物兵器が。
海溝の奥底に眠る筈が、
海底資源掘削機のすぐ側に。




