戦禍に咲く恋?
誰かが、暗闇の中で、叫んでいた。
もう少し、静かにしてくれ。
僕は、じっと闇を堪能していた。
目を覚ましたくない。
どうして。
疑問が湧いた。
僕は、何も見たくなかった。
目を開けさせるな。
この闇に溶けていきたい。
僕は、叫んだ。
誰かと同じに。
お願いだから、そっとしておいてほしい。
「颯太・・・」
聞き慣れた声が響いた。
音羽だった。
「わかるよ・・・」
「何が、わかるの」
僕は、反抗的だった。
「現実から逃げた君に何がわかるの」
「颯太が、悩んでいるの。わかるから」
現実に戻っていた。
あのまま、眠らせてくれれば良かったのに。
「少しは、落ち着いた?」
「いいや」
僕は、頭を振った。
混乱していた。
母の胎内に逃げたかった。
時間を遡り、
僕の機嫌に戻りたかった。
どうして、
僕は、存在する?
人でさえ、滅びゆくこの世界に。
僕らは、荒廃した平野を見下ろす山奥に居た。
以前は、青々とした山や美しい河があったであろう山岳地の横穴に、
身を潜めて。
邪神(晴)は、別れ際に言った。
「どうするか、自分で考えるんだ」
「それは、僕がどう生きるかって事?」
「お前、自身が決めろ!世界は、変わってしまった」
邪神は、僕の起源について、考えろと言う。
「ここからは、別に行こう」
邪神は、僕と別れる事を決めたようだ。
「無事だったら、また、逢おう」
飛びきっりの笑顔で、邪神は言った。
「颯太。君は、悪くない。自分で、決めていいんだ」
邪神なんて、誰が付けた?
彼は、誰よりも、人間らしかった。
「颯太・・・」
暗闇の洞窟で、咽び泣く、僕に音羽が声をかけた。
「本当に・・・まさか、こんな事が起きるなんて・・」
つい、この間まで、僕らは、人と対峙している妖の立場だった。
追われる側だったのだ。
それなのに・・・。
状況は、ある日を境に一転した。
深い海溝で、生物兵器を積んだ潜水艦が、大地震で、爆発した事により、
僕らの運命は、一転した。
地上にまともな人間は、存在しなくなっていた。
人らしく生きようと足掻いているのは、僕らだけになった様だった。
「元々、人でなかったんだから、良かったんじゃない?」
「人でないなんて、思った事はないよ」
「あれだけ、追われて、そう思っていたの?」
「風邪みたいなもんだと、思っていた」
「風邪?」
音羽は、笑った。
「甘い考え。颯太は、否定されたんだよ。人じゃないって」
「人だよ。母だって・・・」
僕の中には、恐ろしい血が流れている。
だけど、一度だって、人でないなんて、思った事はなかった。
人の血だって、流れているんだから。
「結局、誰も、いなくなったのか」
「そう・・・私達、以外ね」
音羽は、、寂しそうに呟いた。
「結局、また、二人か」
僕らは、古い因縁に縛られていたらしい。
遠い日に恋人同士だったという人も居た。
今となったら、どうでもいい事だ。
二人になったからと言って、僕らが、何か始める訳ではない。
「颯太。落ち着いたら・・・ここから、出ないと「
外を見下ろしていた音羽が振り返って言った。
「ヤダ」
ここから、外には、行きたくない。
「出ないとだよ・・・」
音羽が、見つめる方角を見下ろすと、
一列になって、こちらに向かう影が見えた。
「颯太・・・!」
叫ぶ音羽の声に焦りが見えた。




