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思慕

乾いた風が、抜けていく


何時間も、走り抜けていると錯覚を覚える。


人が居なければ、生きて行けない生き物もいる。


あの原発事故がもたらした悲劇を繰り返しては行けない。


誰もが、


そう思っていたのか、


何かが、起きているのか、


僕が、走り抜けた街で、


悲しい光景を見る事はなかった。


人だけが、


この世から消えていた。


いつも、誰かが、そばに居て、


僕は、自分の存在価値を感じていた。


ただ、ひたすら、東京を目指し、車を走らせる僕は、


もう、誰とも、話していなかった。


あのうるさい音羽すら、


懐かしく思える。


あの時、


音羽が、珍しく怒った事を思い出していた。


海外からの客。


それは、僕の友人でもあり、


最終的に音羽が、心を許した相手でもあった。


「もう、誰かを信じる事なんて、ないよ」


そう言わせてしまった。


いつも、いるのが、当たり前だった。


いなくなって、初めて知った。


僕にとって、音羽は、なんだったのか。


彼女が、他の誰かに、心を寄せて、初めて知った。


僕の喪失感。


空港で、僕らを待たせるだけ、待たせて現れた彼が、


あとで、僕らを苦しめる事になった。


こんな時に、思い出すなんて。


「弱っている」


誰に聞かせる訳でなく、呟いた。


僕と音羽の関係は、


今も、単なる友人関係。


そう思っている。


思いたいのかもしれない。


妹。


いや・・・姉だな。


家族を取られた感覚だったのかな。


空港での出来事は、まだ、閉まっておこう。


音羽を苦しめる事になるから。


柄にもなく、


感情的になった。


ジープをとめ、持ってきたペットボトルを開けた時だった。


「パ・・・・・ン!」


乾いた音が上がった。


「!」


何も、動く気配のない中で、周りの空気が揺れていた。


「待って・・」


何が起きたのか。


一瞬、わからなかった。


持っていたペットボトルが吹き飛び、


指先が、赤く滲んでいた。


「狙われた?」


そう思った瞬間、2発目だった。


僕は、思わず、身を潜めた。


低く、体を運転席に沈め、相手の様子を伺う。


次が、来るのか。


息を潜め、様子を伺う。


乾いた街の中は、色付いている者の姿はない。


「やったか?」


僕は、聴覚が、人並み以上だ。


まぁ、人と言う事に抵抗は、あるが。


どこか、遠くで、会話する音を聞き分けていた。


あぁ・・・この声。


男4名と女1名。


そう、その1名の女。


咲桜里。


後を付けてきたな。


僕を殺しに来た訳だ


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