表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/132

第9話 時の縁と千年未来の願い



——夢とは、過去に帰りたいという欲望か。

それとも、未来へ逃げたいという希望か。


◇ ◇ ◇


「スイミー、今、私……なにか、見えた気がした」


「主殿? ……どうしました? 顔色が——」


ユイの足元に、白い花びらが舞い降りる。

だがここは宇宙。花など存在しない。


「……時空、ずれた?」


その瞬間、ユーユーマシンがかすかに光を放った。


『思念反応確認。過去接続ポイント、開示。』


「わわっ!? 待って、それって——」



気づけば、ユイの周囲は霧と風に包まれていた。

草木が生い茂る、見たこともない古い神殿跡。


「ここ……何百年前の世界……?」


「おそらく、“千年前の空白の王国”ですね。

伝承によれば、ここでは“夢”という言葉が禁じられていました」


その時——


「夢を語る者よ、貴様、何者だ」


低い声とともに、黒い羽織を着た少年が姿を現す。

腰に奇妙な短杖を差し、額には逆三日月の印。


「名乗るまでもない。

だが問おう、お前は“精霊”を見たか?」


「精霊……?」



その刹那、空間が震える。

地面がひび割れ、そこから湧き出たのは——


「火精霊!? いや、暴走体だ!!」


「退け!やつは夢を喰らう精霊の抜け殻——!」


ユイの足元に火が絡みつく。熱く、ただ、哀しい。


「……違う、精霊は敵じゃない!」


スイミーが叫ぶ。


「主殿!“術式”を! あなたなら使えます!」



ユイの意識に、かつて聞いた名がよみがえる。


《水精霊のパスワード……そして、第一の想念出力式》


彼女は深く息を吸った。


「お願い、力を貸して!——

**“焔煌旋掌えんこうせんしょう!!”**」


掌から放たれた螺旋の炎が、火精霊の暴走核を包み込む。

その瞬間、世界が凍ったように静まりかえった。



少年は、目を見開いて言った。


「お前……名は?」


「ユイ。夢の記憶を追って、この時代に来た」


少年は数秒の沈黙の後、呟くように言う。


「……俺はリクト。

夢を禁じられた国の、“最後の王族”だ」



風が止み、空が動く。


ユーユーマシンが再び光を放ち、画面に数字が浮かぶ。


『転移位相:+1000年。目的地:未来意識都市フューテリア


「スイミー……また行くの?」


「はい。夢の起点が、もう一つ先にあるようです」


リクトは、少し寂しげに言った。


「お前が未来でまだ生きているなら、俺の“夢”も……少し、思い出してくれ」



ユイが頷いた瞬間、世界が反転する。

霧は消え、空には巨大な人工衛星と虹色の都市が浮かんでいた。


「……ここが未来の都市?」


「その名も《フューテリア》。思念によって全てが動く都市です。

ただし、“夢”はすでに……規格化され、政府に管理されています」



ユイの前に、立ちふさがる謎の人物。

その背後には、機械化された精霊たちの残骸。


「君も、“夢を定義できない者”か」


彼は無表情で、手を振りかざした。


「ならば排除しよう。——

**“次元閃滅じげんせんめつ”!!」**



つづく


物語はついに“未来の夢の戦争”へと入る——

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ