表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/132

第7話 星を喰らう獣、そしてスイミー



火の鍵と宇宙穿梭剣に導かれ、ユイは再び時空を跳んだ。


だがその行き先は、予想もしない「星の死角」——

星と星の狭間に浮かぶ、重力も音もない空洞領域だった。


「ここ……空っぽすぎる……」


ユイが一歩踏み出すと、足元の虚空に波紋のような光が広がる。


そのとき——


「グオオオオオオ……ッ」


空間が震える。

響いたのは、獣の咆哮。

姿を現したのは、まるで星そのものを食べてきたかのような巨獣だった。


その名は——**星噬獣せいしじゅう**。


全身が銀の欠片でできたような体。

目は燃える恒星、口元には数えきれない星屑の残滓。


「でか……ってか、今、こっち見たよね……!?お腹すいてる目じゃない!?」


ユイが剣を構えた瞬間、彼女の耳元でふわりと声が響く。


『冷静になってください、主殿。あなたは今、完全に“餌”認定されてます』


「……えっ!?誰!?」


次の瞬間、ユイの肩にちょこんと乗ったのは、水色の羽衣のような存在。

頭には雫の冠、目はくるくる回るスピラル模様。


「わたし、水精霊スイミーです。

主殿が“水のパスワード”を意識下で解読したので、自動展開されました」


「え、え、まって!?そんな自動ログインみたいな!?説明なし!?」


スイミーは小さな手でピッと空中をなぞると、ユイの前に波紋が広がった。


「この空間、既に“星噬領域”に取り込まれています。

急がないと、星も記憶もまるごと飲まれますよ?」


「いやもう、さらっと怖いこと言わないで!?てか、何あの獣!?」


スイミーはクルクルと回転しながら、星噬獣を見上げた。


「“星を喰らい、過去を封じる獣”。でも安心を——彼、指示には従います」


「えっ、誰の指示!?」


「主殿のです」


「聞いたことない命令出しといたの!?」


星噬獣が再び咆哮する。

そのとき、ユイの手の中の宇宙穿梭剣が光を帯びた。


『星還の詞、準備完了』


「えええええ!?また唐突に来たああああ!!」



剣の力が時空の亀裂を切り裂き、ユイとスイミーは空間の外縁に脱出する。


残された星噬獣は、その巨大な身をゆっくりと折り、

虚空に残された星の残骸を口に含んだ。


だが、そのとき——


「……戻すよ」


ユイの言葉に、穿梭剣が共鳴する。

次の瞬間、星噬獣がゆっくりと口を開き、

のみ込んだ星屑が、光となって空へ還っていく。


「命令じゃない。お願い……だから、返してくれてありがとう」


スイミーは、少し驚いた顔をして、ふわっと笑った。


「主殿、やさしすぎです」


「でも、そうじゃないとこの宇宙、きっと壊れちゃう気がする」



穿梭剣が光を納め、時の流れが静かに戻った。


空に一つ、蘇った星がまたたく。


「次はどこに跳ぶのかな、スイミー?」


「ええ、それが問題なんです。次の座標、完全に未登録でしたから」


「え……それって、つまり?」


「ぶっつけ本番ってやつですね」


「またあああああ!?!?」



そのころ。

遠く離れた“仮面の観測者”が、静かに口角を上げた。


『星噬獣が従った、か……面白い』


その目に映るのは、未だ現れぬ“逆意連環の核”。

そして彼の背後には、別の影が忍び寄っていた。


——だが今はまだ、誰もその名を知らない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ