第18話 星霊交差のオルビオン
透宇ミラーが映し出した先は、星々がらせん状に交差する空間――
《星霊交差域》と呼ばれる、物理と夢想が重なる未定義領域だった。
「ここが……“オルビオン”……?」
ユイが目を開けると、そこには銀色の流星でできた橋が広がっていた。空には数千の星霊が舞い、それぞれが記憶の光を放っていた。
その中央に立つ、三つの影――
まゆ、みく、かな。あの三姉妹だった。
「ようやく、辿り着いたのね。」
長女・まゆが微笑む。彼女の手には、不思議な光を放つ羽根状の道具が握られていた。
「これが、“星の鍵”……?」
ユイが問うと、みくが頷いた。「正確には、“記憶を開ける鍵”。星の奥に刻まれた、まだ開かれていない記憶を――」
かなが目を閉じた。「でも、開けてしまえば、もう戻れないかもしれない。」
そのとき、星噬獣の低いうなり声が辺境から響き、空間が震えた。
「……やっぱり来たか。」
ユイの脳内に、自動的に“呪文”が浮かんだ。意識で発動するしかない――そう感じた瞬間、彼女の背から光が溢れる。
《セラ=アーク・フォノヴァル!》
宇宙穿梭剣が空間を裂き、星噬獣の動きを一瞬封じる。
だが、それと同時に“生翔機”が突如現れ、宝石のような光を食べながら空中を旋回した。
「お腹空いてたのかな……」
みくがぽつりとつぶやくと、かなが突っ込んだ。「おい、何食わせてんだよ、また星ひとつ食べたらどうすんの!?」
「だって、可愛いんだもん……」とまゆが照れる。
そして、ふいにユイの足元に落ちた小さな光。
それは、富世たけしが過去に“預けた”記憶の断片だった。
《封印された星の心音を、ノウメニアで解くがいい。真実は、夢の奥にだけ宿る》
星霊交差の中心、オルビオンが震える。
精霊たちの輪が崩れ、次なる扉が――開く。
「……行こう。まだ、終わってない。」
――つづく。