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第17話 鍵の殿堂〈ノウメニア〉、封じられた星の心音



夢が波のように引いたその後、ユイはまるで浮遊するような状態で目を覚ました。

辺りは静寂に包まれ、空間そのものが記憶を抱えて震えているようだった。


「……ここは?」


目の前にそびえるのは、月光のような輝きを放つ巨大な門。

扉の上には、古代文字に似た曲線が連なっており、どこか懐かしさを感じさせる音が風に乗って響いていた。


「鍵の殿堂〈ノウメニア〉——」


夢の記憶のどこかで聞いたことのある名前だった。

ここは、“まだ開かれたことのない扉たち”を封印する場所。

ユイが立ち入ったことで、世界のバランスがほんの僅かに揺れた。


そのときだった。


「……あなた、ようやく来たのね」


振り向くと、そこに立っていたのは銀髪に紺の羽織を纏った女性。

その声は、まるで何百年もの時間を閉じ込めた湖のように澄んでいた。


「わたしは――浮殿うきどの 今日子きょうこ。」


ユイは息を呑んだ。名を聞いただけで、何か大切な記憶に触れた気がした。


今日子は優しく微笑むと、殿堂の扉に手をかざした。

すると、扉の一部が透けていき、中から無数の「鍵の欠片」が宙を舞った。


「これは、“未生”の心を繋ぐ鍵。あなたには、まだすべてが見えていない。」


欠片のひとつがユイの胸元に吸い込まれ、光となって溶けた。


——その瞬間、封じられた記憶が波紋のように脳裏に広がった。



星噬獣せいしじゅうの咆哮。

透宇ミラーに映った“もう一つのユイ”。

夢実現マシン(ユーユーマシン)が叶えた“ただの味噌汁”。

生翔機せいしょうきがダイヤをもぐもぐ食べている場面。

そして、水のパスワードを解き、意識供水を起動する水精霊の声——


「……これは、私の記憶?」


だが、その記憶の最後に浮かんだのは、一度も出会ったことのない男の姿。


黒衣の男。

その手にあるのは、古びた筆。

名前も知らないはずなのに、ユイはその名を知っていた。


富世ふせ 武雄たけし……」


その名が、心の奥底に残っていた“鍵”を静かに震わせた。



「あなたの旅は、次の段階へ進むわ」


今日子の言葉とともに、殿堂の奥から“三つの光”が現れた。


紅。碧。金。


それは、まゆ・みく・かな——三姉妹の存在を示す光。

そして、物語がまたひとつ交差しようとしていることを示していた。


ユイは一歩踏み出す。

星の心音が、微かに響いた気がした。


つづく

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