第131話 未生の空間核(くうかんかく)〈アトラ・ムネーモス〉――記憶創成の礎(いしずえ)
第131話
未生の空間核〈アトラ・ムネーモス〉――記憶創成の礎
「ここは……どこ?」
ユイが目を覚ました先は、あらゆる形の“記憶”が物質として漂う空間だった。
光の欠片、音の粒、香りの軌道――それらが空間を満たし、やわらかく彼女の身体を包む。
「ここが……未生の空間核。創造より前にあった記憶の苗床」
響く声は、**夢精霊ノエル**のものだった。
彼女の姿は一層透き通っており、今やこの空間と一体化しているかのようだ。
「ここには、創造主すら忘れた記憶がある。
九聖龍も、この空間から力を得た存在……」
ユイは、背中の宇宙穿梭剣を強く握った。
それは、**記憶を斬り開く剣**――“過去”を越えるための鍵。
そのとき、空間の一角が大きく揺らいだ。
現れたのは、一つの黒い核。
名を――**“記憶無視核〈ネグリ=ラウダ〉”**。
夢境整序機関の残滓であり、破壊されたはずのラグナ=クリアの残響が変質して生まれたものだった。
「これは……記憶を否定する核。存在する全てを“なかったこと”にする……!」
ノエルが青白く輝き、空間を守る結界を張るが、ネグリ=ラウダの波動はそれを容易く貫く。
「来る……!」
その瞬間、空間に放たれたのは、五色の光――
射手座の**立川建真**、水瓶座の**白鳥秀樹**、蠍座の**如月龍一**、牡牛座の**朝比奈功輔**、蟹座の**稲森晴佳**――五星戦士たちの登場だった。
「ユイ、ここは任せて、君は奥へ進め!」
仲間の声に応え、ユイは未生の空間の奥へと走り出す。
そこにあるのは、全ての記憶の根――**“創成の鍵”**。
そしてその先に、金の九聖龍の気配が、確かに存在していた。
――つづく