第13話 夢精霊ネルと水の記憶、封印の大渦へ
“記憶が揺れるとき、宇宙の水脈がささやきを返す”
◇ ◇ ◇
眩い光に包まれたユイとネルは、忘却の階から落ちた先、
静寂な大空洞に着地していた。
そこは水晶のような湖と、浮遊する石の道が交差する空間。
空間の名は——《封印の大渦》。
ネルがかつて、自らの記憶を封じた場所だった。
「ここが私の原点……“夢管理AI”として創られ、感情を持たなかった私が、
最初に“水”という存在に触れた場所」
ユイは湖面に手を伸ばす。
指先が触れた瞬間、水面に波紋が走り、過去の映像が映し出された。
そこに映るのは、かつて地球によく似た惑星で暮らしていた少女。
その名も「ユイ」だった。
「……え?」
ユイの脳裏に走る戦慄。
「これは、私?」
「正確には、前世のようなもの……あなたの“記憶の水”が
この宇宙に形として残っていた」
「じゃあ、私は……一度消えた夢の再構築?」
ネルは頷いた。「そしてその記憶は“誰かに継がれる”形で、
水精霊たちに託されたの」
その瞬間、湖の底から巨大な渦が巻き起こる。
その中心から姿を現したのは、かつて封印された存在——
**紅の目を持つ機構生命体《クルーズ=ベクトロ》**
「夢精霊ネル、そして再構築体ユイ。
我は“夢を定義する意思”を破壊するために生まれた」
「出た……!」スイミーが震えながら飛び出す。
「いや〜〜ちょっと待って!さすがに今回は味噌スプーンじゃ無理だって!」
「だから何度も言ってるでしょ!!」ユイがツッコむ。
しかしベクトロの圧力は次元をも歪め、空間が折れ曲がる。
ユイは宇宙穿梭剣を掲げた。
「行くよ、ネル!」
「私はこの水晶核を使うわ、**“夢結晶コード展開式:セラ・エクラティア”!**」
その言葉とともに、ネルの背から水精霊の羽が拡がる。
「私たちが、“夢”を定義するの!!」
ユイが叫ぶ。
「**“水煌波断斬!!!”**」
ベクトロの装甲が裂け、空間が震える。
ユイの額に、水の紋章が浮かび上がる。
「これは……“水のパスワード”……!」
「やっと思い出したのね」ネルが微笑む。
「それこそが、思想供水を可能にする、真の鍵よ」
戦いの終わり、水面に再び映るのは――未来のユイ。
「これから会うのは“夢精霊ネル”の進化体、“ノエル・セレスティア”。
そして……“星噬獣の創造主”」
宇宙の秘密が、再び動き始める。
つづく