第129話 ラグナ=ノヴァ襲来(しゅうらい)――記録(きろく)なき戦場(せんじょう)
第129話 ラグナ=ノヴァ襲来――記録なき戦場
記憶の楽譜が破れ、空間は“忘却の海”に呑まれ始めた。
その中心から現れたのは、巨大なる竜――**虚音竜ラグナ=ノヴァ**。
その姿は、音も色も持たぬ影。
翼は虚空を裂き、爪は過去の出来事すら切り捨てる。
そしてその眼は、“あらゆる存在が記録される前”を見つめていた。
「こいつが……記憶そのものを否定する存在……!」
ユイの声が、震えていた。
だが、彼の瞳は強く、仲間を見回す。
「絶対に、記録を奪わせない。
この旅のすべてを、君たちの想いを、何があっても……!」
◆
ラグナ=ノヴァが咆哮した。
その一声だけで、記憶の地形が崩れ、空間そのものが削られていく。
ノンコードたちすら飲み込むその音は、“記録なき戦場”の幕開けを告げる破滅の鐘。
「この空間……名前が消えていく……!」
稲森晴佳が驚愕する。
彼女の手の中にあった“名前の記録書”が、空白になっていく。
「“記すこと”そのものが消されていくなんて……!」
◆
しかしその時、ノエルが静かに手をかざした。
「記憶は、ただ“保存”するだけのものじゃない。
“誰かと共有し、繋がる”ことで、初めて強くなる」
彼女の手から輝いたのは、夢精霊の力――
「夢律連鎖」。
ユイ、ノエル、スイミー、そして正義の五星戦士たちの記憶が一つに結びつき、
宇宙の中心に**共鳴円陣**が広がっていく。
「行くよ、ユイ!」
白鳥秀樹が水の力で盾を張り、
如月龍一が雷光を纏って突撃する。
◆
そして――ユイが叫ぶ。
「全記録連結技――**煌記爆奏〈メモリオ・ブレイズ〉**!!」
光と音と想いが合わさったその一撃は、
ラグナ=ノヴァの胸を穿つ。
虚音が崩れる。
だが、ラグナ=ノヴァはまだ倒れない。
「記録が……連結されるほど、
我は強くなる――忘れられぬ記憶は、永遠の渦と化す……!」
それは、記憶を破壊する存在でありながら、
同時に“最も深い記憶の守人”でもあるという矛盾。
「ならば僕たちは、矛盾ごと抱きしめる!」
ユイの瞳に燃えるのは、“完全な否定”ではなく“受け入れ”の意志だった。
◆
戦いの果て――
ラグナ=ノヴァは深く沈黙する。
そして、その胸の奥から一片の宝石が浮かび上がる。
最後の九聖龍の宝――
**金音結晶〈オリヴ・ミラージュ〉**
「これで……全ての宝が揃った……!」
スイミーが呟くと同時に、空間が光に満ちた。
「鍵の扉が――開かれる!」
次なる舞台は、“創造の核心”――すべての始まりと終わりが交錯する場へ。
――つづく