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第128話 忘却の反奏――異音(いおん)の胎動(たいどう)

第128話 忘却の反奏――異音いおん胎動たいどう


記憶の初音ういねつむいだ“創造の歌”は、

オリジン・シードを誕生させ、新たな宇宙の核を形作ろうとしていた。


しかしそのとき――

空間の片隅、微かにゆがんだ空白から、不協和音が漏れ出した。


「この音は……!」


ノエルの眼が鋭く光る。

スイミーが震える声で続けた。


「“忘却の波動”……! この宇宙に存在してはならない反響はんきょう!」



空間が崩れ始める。

楽譜のしょのページが、突然破れ、逆再生のように音が巻き戻っていく。


現れたのは――黒衣の奏者そうしゃ


その名は、**異音奏主いおんそうしゅグラヴィ=ネフ**。


「初めまして、記憶の残渣ざんさたち。

わたしは“音になれなかった意志”。

旋律に拒まれた、もう一つの世界の胎動たいどうだ」


その声は、耳ではなく“心の内奥”に直接響いてくる。


「君たちが奏でたその“希望の和音”、実にまぶしい。

だが、残念だが――その響きは、わたしを呼び覚ますには充分だったのだよ」



異音奏主グラヴィ=ネフが振るう指先。

空間が裂け、そこから“音を持たぬ存在”たちが現れる。


彼らは、**ノンコード**。

名前も記憶も持たぬ、純粋なる“忘却の兵”。


「記憶はやがて、疲弊し、破綻する。

君たちの旅路もまた、例外ではない」


ウイネが一歩、前へ出る。


「……記憶の初音として、あなたの存在は否定します。

この宇宙の旋律に、あなたの不協和音は許されない!」


しかし、グラヴィ=ネフは微笑ほほえみを浮かべる。


「否定とは、記憶そのものの本質だ。

思い出すことは、思い出せなかったものを捨てる行為……違うか?」



ユイが叫ぶ。


「それでも、僕たちは前に進む! 思い出せなかったものごと――

その悔しさすら抱えて、“未来”へ繋げる!」


その瞬間、ユイの足元から金色の陣が展開した。

――九聖龍きゅうせいりゅうたちの力が共鳴していく。


「ユイ……これは、新たな技だよ!」


スイミーが気づく。

融合された九つの宝の響きが、次なる技を紡ぎ出そうとしていた。


その名は――


**光暁創陣こうぎょうそうじん〈アストラル・オーヴァチュア〉**


ユイが叫び、空間を震わせた。


「創造と記憶のすべてよ、今こそ――奏であえ!」


光がはしり、ノンコードたちを押し返す。


グラヴィ=ネフの顔から、初めて笑みが消える。


「これは……“光と音の共鳴”……!?

まさか、全ての宝がここまで調和するとは……!」



だが、異音の胎動は止まらなかった。

裂けた空間の向こう――そこには、“無限に消された記憶”が渦を巻いている。


「次に出現するのは……“記憶をらう竜”……」


ウイネの顔に緊張が走る。


「それは、忘却の核。異音の中枢にして、

あらゆる記録を“最初からなかったこと”にする、最悪の存在」


その名は、**虚音竜きょおんりゅうラグナ=ノヴァ**


九聖龍に匹敵する、あるいはそれ以上の力を持つ、

“記憶の否定”そのものだった。


ユイたちは、あまりに大きな試練を前にして――それでも、決して退かない。


「僕たちの音は、止まらない……!

たとえ、宇宙ごと忘れ去られても、君たちと歩いた記憶は、確かに“今”にある!」


虚音が鳴り響き、戦いの幕が再び開かれる。


――つづく

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