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第127話 創造編開幕――記憶の初音(ういね)

第127話 創造編開幕――記憶の初音ういね


未生の扉が開かれたその先――

そこに広がっていたのは、何も存在しない“原初の宇宙”だった。


色も、音も、時間さえもない世界。

ユイたちの姿は、光の輪郭としてかろうじて空間に浮かんでいた。


「ここが……本当に、“創造の前”の空間……?」


ノエルがそっと呟くと、空間の奥から一つの光が降りてきた。

それは、かすかに震えるような音を伴いながら、徐々に形を成していく。


――少女だった。


白銀の髪に、星屑を纏うような姿。

その瞳はすべてを映し、そして――すべてを忘れていた。


「あなたが……“記憶の初音ういね”?」


ユイの問いに、少女は頷いた。


「わたしは“ウイネ”。この宇宙が初めて記憶した“音”――

そして、始まりを歌う者」



ウイネの声が響くと、空間に微かな振動が走った。

空間の中心に、一冊の大きな“楽譜の書”が出現する。


「この“創造領域”では、音がすべてを形作る。

記憶も、存在も、希望も、絶望さえも――すべては“旋律”によって紡がれる」


そう語るウイネの周囲に、九つの光が集まってきた。


九聖龍の宝。

すべてが揃ったそのとき、楽譜の書が開き始めた。


闇命環、夢の記録石、火命の鍵、水精霊の珠――

それぞれの宝が旋律となって書に流れ込んでいく。


しかし――


「まだ足りない。“心の主旋律”が、ひとつも存在していない」


ウイネの表情がかすかに曇る。


「それは、君たち自身の“心の音”。今ここで、君たちが奏でなければならない」



静寂の中、ユイはそっと目を閉じた。


その胸に浮かんだのは、最初に仲間と出会った時のこと。

苦しみ、迷い、救い、笑顔――

そのすべてが、ひとつの音になって響いてくる。


「……これが、僕の音だ」


その瞬間、ユイの体から金色の光が立ち上がり、空間に響き渡る。


続けてノエル、スイミー、ネル、五人の星座戦士たち――

それぞれの音が、順に世界へと放たれていった。


旋律が重なり、響き、膨らんでいく。


ウイネが微笑んだ。


「これで、“創造の歌”が完成する」


書が開かれ、空間が揺らぐ。


「次に現れるのは……“存在の種”」



楽譜の中心から、小さな光球が生まれた。

それは、“存在そのものの起源”――**オリジン・シード**と呼ばれる始まりの種。


「これが、新たな宇宙の“創造核”となる」


ウイネが語る。


「しかし、創造には“対”がある。“破壊の音”もまた、目覚めつつある」


そのとき、空間の彼方に黒い波紋が広がった。


響き始めたのは、不協和音。

すべての旋律を狂わせる“異音”だった。



「これは……ただの敵ではない」


星座戦士の一人、白鳥秀樹が目を細めて言った。


「創造の反対――つまり、“忘却”そのものが動き出してる……!」


そう、“未生”とは生まれないものではない。

“まだ忘れられていない可能性”でもある。


そして、忘却が動き出すとき――

生まれたばかりの命は、最も脆い。


ユイは決意のまなざしで前を向いた。


「僕たちの音で……この宇宙を守る。

この“記憶の初音”を、決して失わせない!」


創造の編章が、いま始まる。


――つづく

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