第122話 雷撃の鼓動――閃電龍の目覚め
第122話 雷撃の鼓動――閃電龍の目覚め
地層都市〈オルド・テクト〉にて「大地の圏環〈テラ・グラヴィス〉」を手に入れたユイたちは、
次なる目的地――雷龍の領域へと導かれていた。
光速をも凌駕するような雷の振動が、空間を撕くように走る。
そこは“雷撃の天階”と呼ばれる、天と地の境界に浮かぶ絶縁の空域だった。
「ここ……空気が震えてる。雷の呼吸みたい」
ユイの耳に、雷の鼓動が直接届いてくる。
一歩踏み出すたびに、足元の雲が帯電し、弾けた火花が音となって舞う。
その中心に座するは、巨大な雷の塔〈ライデン・ネクサス〉。
螺旋状に天空を突き上げる塔の内部には、封じられた宝が眠っているという。
「この塔の最上層に、“閃電龍”が封じられている……」
ネルがそう言い終えるより早く、塔全体が雷鳴を上げた。
黒い雷が逆流し、空間が歪む。
そこに現れたのは、鎧のような雷を身にまとった番人――
名を、ボルト=ジャッジ。
雷の審判者。
「雷の意思を試す者よ……その魂に、裂かれる覚悟はあるか」
ユイは剣を構えた。
雷撃は意志を砕く。心が脆ければ、一瞬で崩される試練。
「大丈夫……私は、“夢”を貫きに来たんだ!」
雷撃が降り注ぐ。
斬撃と鼓動が交差する。
そこに、スイミーが叫ぶ。
「ユイ、雷と調和して! 心の鼓動を、雷の拍動と重ねて!」
――次の瞬間、ユイの剣が雷光に包まれた。
塔の最上層へ到達したユイの目の前に、
ゆっくりと姿を現す龍。
翼の代わりに雷のアークを携え、瞳は稲妻のように閃く。
それが、九聖龍のひとり――**閃電龍**だった。
雷がユイの心を読み、静かに語りかける。
「我が宝を託す。名は――“雷鳴環〈ヴァル=ボルテックス〉”」
その瞬間、空間が光で満たされる。
ユイの手には、稲妻の輪が握られていた。
「これで……あとひとつ。“金”だけ……!」
スイミーが頷き、仲間たちは雷の光を背に、次なる領域を見つめる。
物語は、最後の九聖龍のもとへ――。
――つづく