第121話 残響の星環――集結する九聖龍の宝
第121話 残響の星環――集結する九聖龍の宝
響界門を越えたその先――そこは、音が時間を紡ぐ“星環交響の領域”だった。
空間に浮かぶ無数の円環。
そのひとつひとつが、今までに通過してきた記憶と試練の軌跡を投影している。
「ここ……まるで、今までの旅が楽譜みたいに並んでる……」
ユイの言葉に、スイミーが小さく頷いた。
そのとき、星環の一つが強く震えた。
音を発する環。それは――土龍の残響。
「座標を確認。次の目的地は、“地殻に眠る記憶帯”」
響きとともに、空間が開かれる。
星の芯に吸い込まれるようにして、ユイたちは次なる領域へ跳ぶ。
――そこは、巨大な地層都市〈オルド・テクト〉。
地面が記憶を保持するという、“記録地質学”で構成された大地。
「この場所では“歩いた記憶”が化石になるの」
そう語りかけたのは、茶色の鉱石肌を持つ精霊。
名を――テルラ=ノーム。
「君の“重み”が本物なら、宝は応じて開かれる」
試練は、「地を踏みしめる」こと。
走ることも、跳ぶこともできない。
ただ“重く、確かに進むこと”が鍵。
地鳴り。揺れる大地。
封じられし宝――「大地の圏環〈テラ・グラヴィス〉」が、少しずつ輪郭を現していく。
ユイの歩みは、確かだった。
仲間の記憶を踏みしめ、夢を背負って、確かに――進む。
スイミーの声が響く。
「次は“雷”。そして最後、“金”――」
そう、物語は、終わりの始まりへと向かっていた。
――つづく