第4章「異能、咲き初めの刻(とき)」
空が割れた日から、三日目。
満腹区全域に、異変が走った。
空に浮かぶ“神の椅子”は、ますます輪郭を強め、
まるで人々の“欲望”を吸い上げるかのように、ゆっくりと回転していた。
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太陽連合・本部
ふー太郎は、肉まんとピザまんを食べていた。
「……戦争前の食事って、うまいんよな」
拳は最強、けれど異能は“無し”。
それがふー太郎という男。
だが組員たちは、疑うことすらしない。
「総長は異能とかなくても……やる時ゃやる人ですから!」
「てか異能ないのに“地獄百人抜き”やったの伝説っすよね?」
ふー太郎は笑ってごまかす。
だがその目の奥に、なにかが揺れていた。
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空風巡回組・第七シマ
「……準備はできてる?」
そらんは、白いレースのドレスを羽織りながら、
自らの“異能”に触れる。
──《魅了念糸》
声と仕草で“感情の糸”を操る能力。
一度絡めた者の理性を、少しずつ狂わせていく。
その力で、彼女はすでに10人以上の首領クラスを従わせていた。
「……せきたて、行こか」
「フフ……うん、そらんちゅわん。殺し方、指定あるぅ?」
現れたのは、血の匂いがする男。
そらん組の暗部、“影”の異名を持つ狂人。
せきたて――
殺しを愉しみ、拷問を芸術と語る“異能の処刑人”。
が、本人すら知らない。
その行動原理のすべてが、背後に立つ“ある女”によって制御されていることを。
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清心会・秘密書庫
リエラは、静かに指を鳴らす。
「では……始めましょうか。透明刃作戦を」
その横に立つのは、
•情報操作の天才・吉師
•元警察の異能観測者・せきたての履歴を追っていたみぅ
•そして、笑顔の裏に深い闇を秘めるあめ
彼女たちはそれぞれの方法で、
“誰よりも目立たず”“誰よりも深く”相手陣営を削っていく。
リエラの異能は、まだ見せない。
だがすでに周囲は気付いていた。
彼女の周囲では、どんな攻撃も“なぜか起きない”。
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混沌の拡大
その夜、街のどこかで――
•ハレが急に、「私、タワーオブGODの娘なんよ?」と放送し始め
•にぇるこが謎の異能配信で「こんにゃろーTV」を開始
•生徒会長が「闇討ちいいね!!」と謎の令状を発行
•馬肉とTSUKiちゃんが“踊る戦闘ユニット”「馬月」を結成
•ぶるべるとゆーすけが、筋肉と乙女心の間で揺れていた
戦いは、加速する……。
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終幕前の静けさ
ふー太郎は、一人、月を見ていた。
(俺は……何を失う覚悟がある?脂肪以外で…)
異能のない男。
だが、それでもこの“神の椅子争奪戦”に身を投じる理由があった。
ふー太郎は拳を握る。
何も持たず、何も誇れず、それでも。
「俺は、守るって決めたんだ!」
その背中が、誰よりも大きかった。
表面積的に。
そして、月明かりの下。
ふー太郎の影が、一瞬――“炎”のように揺れた