最終章②「誰もが“普通”に戻る日」
【開幕:神域、崩壊】
融合体「ツキヅキ葉月」が、指先をひとつ鳴らす。
その瞬間――
ドゴォォォォンッ!!!
中央街区のビル群が、1ブロックまるごと崩壊。
爆風が空を裂き、神椅子の周囲に重力の渦が生まれる。
「壊れろ♡ 世界全部♡」
その声は、甘く、狂っていた。
笑い声とともに、融合体は次々と構成員を圧倒。
対異能特化部隊、タラバガニ(脚七本)、せきたて(瀕死)、びび(童貞)――
全員が手も足も出ず、地に伏した。
「ふー太郎……あの子、“隙”が、無い……」
吉師が息を詰める。
「“正義と愛”が合わさった異能って、もはや神だよ……」
神椅子が応じるように、黒く光った。
「選定完了。現・支配者――“融合体ツキヅキ葉月”」
空間そのものが、彼女を“王”として認め始める。
⸻
【覚醒:ふー太郎、終願の誓い】
「終わらせるしかねぇ……!」
ボロボロになったふー太郎が、歯を食いしばる。
《陽誓爆心・ブレイジングオース》では通じない。
それがわかっていた。
だから、ただ静かに、想いを込める。
「オレは、異能なんてどうでもいい……
でも、“誰かの願い”だけは、絶対に無視できねぇ……!!」
その瞬間、彼の中で何かが“燃え尽きる”ように、光った。
異能、最終覚醒――
《陽誓・終願式》
全ての異能を“抱きしめ”、光で終わらせる――“祈りの異能”。
ふー太郎の背後に、光輪が現れる。
「オレの異能は、“誰かの最期の願い”を、形にする力だ」
彼の拳が、空気を割った。
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【決断:リエラ、戦局を変える一手】
「待って、ふー太郎――そのままじゃ、届かない」
リエラが立ち上がる。
静かに、凛とした瞳で融合体を見つめる。
「わたしが、“隙”を作る」
融合体が笑う。
「うふふ、無駄だよ? ウチはもう、神やから♡」
「だからこそ、届くものがある」
リエラの異能《思念透律》――
過去に誰かが発した“心の声”を再現する力。
リエラは発動する。
「……葉月……つき……わたしたち、ただ一緒に、笑いたかっただけだよね」
声が、融合体の心に刺さる。
刹那。
融合体の“瞬き”――そのわずかな隙間に、
「今だッ!!!」
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【終焉:最後の光】
ふー太郎が、20cm跳んだ。
その拳に、すべての願いが込められていた。
「願ってくれたすべての奴らに――ありがとうッッ!!」
光が爆ぜる。
神椅子が、ヒビを入れながら崩壊を始めた。
融合体が叫ぶ。
「やだ、まだ終わりたくない!“アイツ”のそばにいたい!!」
「お前の気持ちは、ちゃんと……受け取った!!」
拳が、融合体の中心を穿つ。
──タワー・オブ・ゴッド、崩壊。
空が、静かに晴れた。
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【その後:異能なき世界】
異能は、すべて失われた。
神椅子の跡地には、白い花がひとつ咲いていた。
瓦礫の中に立つ、ふー太郎。
彼の前に、ひとりの少女が歩いてくる。
――りおん。
何の力も持たない、リアリティで
配信してるだけのただの少女。
けれど、優しい光を抱いて、微笑んでいた。
「ふー太郎……おつかれさま」
「おかえり、りおん」
ふー太郎は何も言わずに手を取った。
「触るな!いきなり何すんねんきっしょい!」
その背後で――
いつの間にか起きてたAちゃんが、雑居ビルの影でそっと見届けた。
「これで……終わり。
でも、“普通”って、
こんなにまぶしかったっけ笑笑笑笑」
スカピー!!
あれ?寝れない?そっか…異能が…
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【エピローグ:それぞれの“普通”】
•リエラ:校舎でひとり、紅茶を注ぐ。「ねえ、また戦ってもいい?」
•みいる:日記を破って笑う。「わたし、今日からちゃんと生きる」
•タラバガニ(脚6本):田舎の畑で大根を抜く。「……」(ニヤッ)
•せきたて&うかんむり:商店街でギャグショー開幕
•ガバチョと髭もぐら:謎のおかまバーで将棋中。「時は……また巡る……」
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【最後の1ページ】
ふー太郎が、そっと空を見上げる。
「なあ、そらん。……“普通の毎日”ってさ……結構、悪くねぇよな」
空に、ほんの一瞬、そらんの声が聞こえた気がした。
「せやろ?」
――終わり。そして、始まり……。