最終章①「最後の咆哮」
【中央神域・神椅子直下】
――爆音。
神椅子の真下で、世界が燃えていた。
ふー太郎の拳が、地面を割り、空を焦がし、
タラバガニの重拳が、それを真正面から受け止める。
「どけッ!!俺は、そらんを――助けに行くッ!!」
《陽誓爆心・ブレイジングオース》、フルドライブ。
周囲の風景が、熱の奔流で歪んでいた。
タラバガニは言葉を発さない。
だが拳が、その意志を語る。――「それでも行かせはしない」
「ごめんな、ふー太郎」
せきたてが歯を食いしばる。
《八連ツッコミ》がさらに加速、爆笑の渦が空を裂いた。
「そらんは今、誰にも近づかれたくないんや!!お前の“優しさ”でさえな!!」
ふー太郎は叫ぶ。
「それでも行くって決めたのはオレだッ!!」
二人の防衛線を、意志と覚悟が突破する。
ふー太郎の全力の拳が、タラバガニの拳を砕き、
せきたての笑いを貫く。
沈黙――
「負けたわ、ふー太郎……お前、ホンマただのでぶぅじゃなかったなぁ」
せきたてが、笑って8リットルの血を吐いた。
タラバガニは無言で膝をつき、ふー太郎に背を向けた。
八本の脚の内、1本引き抜くとふー太郎に渡した。
「非常食だ!美味いぞ!ほら!行け」
足からは12リットルの血が流れていた…
⸻
【別戦線:葉月 vs びび】
「さぁて……この舞台も、そろそろ“最後の出番”やなぁ♡」
傘を回す葉月の瞳が、狂気で黒く染まる。
《異能:絶笑制裁・惨型式ザンガタ》
罪なき者さえも“お笑い”で罰する狂気の力。
対するびびは、一歩も引かない。
「俺は、恩を返す。そのためだけに拳を振るうんだ」
《異能:報恩拳・断義》
すべての攻撃に“感情の価値”を乗せる、渾身の一撃。
衝突。
数十秒――それは永遠のような時間だった。
そして――
ズシャァァァァン!!!
空気が裂け、びびの拳が葉月の傘を打ち砕く。
「終わりだ……葉月」
葉月はふわりと笑い、口元から血を垂らしながら呟いた。
「……せやな。でも、終わらへんねん。まだ、“もう一人”のアタシが、おるから――」
崩れ落ちる葉月。
その背中に、別の影が静かに寄り添う。
⸻
【つき:闇の共鳴】
「わたし……わたし、ふー太郎のこと……どうしたら、よかったんだろ……」
涙を浮かべるつきの背中に、
みいるが、無意識に異能を暴走させていた。
《異能:願心共鳴・リクエストコール》
それは、他人の“願い”を拡張・増幅させてしまう力。
みいるの心――「ふー太郎を救ってほしい」が、
つきと葉月、ふたりの“想い”と重なった。
次の瞬間――
「ひとつになろっか……?♡」
葉月とつきの身体が共鳴する。
笑顔と涙が混ざり合い、全身が“黒薔薇のドレス”に包まれる。
「融合体“ツキヅキ葉月”爆誕♡」
その声は、天の神椅子にすら届くほどに響いた。
⸻
【戦況:神椅子が震える】
無人のタワーオブGODが、再び軋むような音を立てる。
「――選定、開始」
空間に浮かぶ“椅子”が、世界のルールを書き換えようとしていた。