シュークリーム暴走族
「夜明け前のこの街には、まだ“真実の甘さ”がねえんだよ」
そう呟いたのは、伝説のパティシエにして、元・暴走族総長。
彼の愛車はバイクじゃない。
オーブンだ。
最高温度250℃で焼き上げる、甘くて危険なシュークリームを引っ提げ、
今宵、かつての仲間たちを呼び戻す――
“スイーツバイカー連合・DEATHホイップ団”
「お前の生クリーム、
ヌルくなってんじゃねえか?」
「やかましい!
俺の絞り袋はまだ現役だッ!」
夜の商店街、ケーキ屋のシャッター前で火花を散らす。
対するは、
新興勢力**“焼きプリン連合”**。
「なあ、俺たちはただ固めたいだけなんだ―
―この世界をな」
カラメル仕立ての冷たい言葉が、夜風に溶けていく。
そこへ現れた伝説の爆走パティシエ《クレーム・ブリュレ》。
「お前ら、甘さってのはただの糖度じゃねえ……“情熱の温度”だ」
彼の手に握られた一丁のパイピングバッグが、静かに唸る。
この街は一夜にして、味の戦場と化した。
信じられるかい?
一夜でだぜ(ドヤ顔
――血なまぐさいスイーツ抗争が、今ここに勃発するう!
バターの香りが充満する中、
フレッシュクリームが弾丸のように飛び交い、
カスタードが火花を散らしながら暴走する。
「食らいやがれッ!俺の“魂のシュー”ッ!!」
渾身の生地が空を切り、焼きプリン連合のトップ・カラメル鬼龍の胸元に炸裂する。
その瞬間、世界が静まり返る!
「……うまい……だと……」
鬼龍がそう呟いたとき、夜はもう明けていた。
⸻
読者のみんな?
この物語のラストシーンを知りたいかい?
じゃあ、お前らの耳元にそっと囁いてやるよ……
他言は無用だぜ……。
朝焼けの空の下、倒れたカラメル鬼龍に手を差し伸べながら、ブリュレは静かに言った。
「なあ……甘さは罪じゃない。
俺たちはその“罪”に、命かけてんだよ」
鬼龍は口元をハンカチで拭いてから囁いた。
「まさにシュークリームクライム(登り)だな……」
――そして伝説は、再び生き始める。