第九幕 2度目
八代りな目線
〈はぁ…アイツどこ行ったんだよ…〉
勝手に外出やがってマジで…
『く、来るな!!』
〈あ??〉
この方向…あの時の方向か
またアイツ襲われてんのか??
カッピーの周りをオオカミが数匹囲っている。
〈あー…?〉
あのオオカミ…えーー
あーそうフリーズオオカミみたいな名前してたな
でもフリーズオオカミって寒いとこじゃなかったっけ…珍しいな
天野じゃない他のヤブ医者が造った改造オオカミだったりすんのかな…
〈まぁいいや…〉
『あ、あっちいけ!しっしっ!』
追い払い方が子供。
『た、頼むからこっち来ないでってば!』
周りのオオカミが吠える。
『ヒッ…』
ドクバオオカミは近くにあった大きな岩に登る。
〈おいそこのオオカミども!!〉
『えっ』
〈なに人の陣地入ってんだよ!!!〉
オオカミは唸る。
〈お?いいんかお前そんなこと言って??〉
〈こっちはドクバオオカミサマやぞ?〉
〈ドクバオオカミサマの牙やぞ??〉
〈お前らが勝てると思ってんのか??〉
『お前っ、そんなに煽ったら…!!』
オオカミは吠えてドクバオオカミの方へと集中をする。
〈挑発に乗るぐらい短期なんか??w〉
ドクバオオカミの後ろの茂みから音がする。
〈おっ〉
『えっ、何…』
茂みから別のオオカミが出てくる。
〈お〜、やっぱ来てくれたか!〉
『えっ、お、オオカミ増えっ…?!』
〈私の家系ここら辺のオオカミと仲いいんだわ〉
〈普段見かけないオオカミには挨拶しなきゃな?〉
そう言われたオオカミが返事をするように唸る。
〈ボスもそう言ってるっぽいし…〉
〈んじゃあとは任せた〉
そう言って岩から降りる。
「ボス」と呼ばれるオオカミは返事をするように吠える。
〈にしても懐かしいな、この場所は?〉
カッピーの方へと歩きながら言う。
『うっ…』
〈最初もそうだったな〜、カッピーがオオカミに襲われてて…〉
『そ、その話やめろ!!頼むから!!』
〈んで通りかかった私が仲間呼んで助けて〜〉
『やめてくれ!!』
〈なんか噛んだら不死になって〜今に至ると〉
『ああああもう聞きたくない!!』
余程恥ずかしい過去なのかうずくまり耳を塞いでいる。
〈はっはっはごめんごめん〉
〈……〉
『……』
〈…あー、これからどうす〉
『……』
〈なんで無言で泣いてんの??びっくりした〉
『見んなよ』
〈心配してんだから見るだろ〉
『だまれ』
〈なんでそんなこと言うのぉっ!!〉
『泣き真似すんなやめろ…』
〈泣いてんのか笑ってんのかどっちかにしろよ〉
『……噛んでないよな』
〈噛むわけないだろ、あんだけお前が擁護してんだから〉
〈私だってやりたくないし〉
『じゃあなんで噛むんだよ』
〈お前が可哀想だろ、先に同居人が死んでまた寂しい思いすんのもアレだから〉
『…………ふん』
『あっそ』
〈は??何お前??〉
『帰るぞ』
〈なんでお前がリードしてんの??〉
〈なんか玄関壊れてんだけど〉
『もしかして…』
『〈ただいまー〉』
「おー帰ってきたか」
「助けてくれないか??」
〈なんでクマに囲まれてんの?〉
『なんで中に入れたの??』
「いやーちょっとまぁ力が強くてですね」
〈は??〉
〈まぁいいや、今日のご飯にしようぜ〉
『量多くない??』
〈んまぁ他のやつにもおすそ分けしよう〉
『オオカミに?』
〈いや?人間〉
『え??』
「は??」
〈あー…まぁ用事もあるしちょうどいいか〉
〈あとで2人とも着いてこい〉
第九幕番外編
弓門衣吹目線
「いや〜出かけちったな…」
これは館を探索するチャンスなのでは…?
「よし…じゃあまず…」
オオカミの部屋……
「いや無理だな。人の部屋に勝手に入るのはちょっと」
じゃあ物置…?
物置の扉を開ける。
「失礼しまーす…暗っ!!」
これ懐中電灯無しじゃ無理だな…
持ってきたリュックを漁る。
「えーっと懐中電灯懐中電灯…あ」
「電池…切れてる…」
どこも探索できねぇじゃねぇか!!!
仕方ないしリビングとか明るい場所の棚とか調べるか…
そういえばアイツカッピーのとこ行けたかな〜
棚の引き出しを開ける。
「お、なんだこれ」
引き出しの中にあるものを取り出してみる。
「……注射器か?これ」
「オイオイ…なんかやってるぞアイツら…」
これこのままここにいたら死ぬんじゃ…??
でもそれだとこれからの仕事が…!!
クッソどうすればいいんだこれ…!!
「ん…?説明書…」
注射器と一緒にあった説明書を開いて読む。
【1日1回必ず血液を採取すること!】
【貧血のときは採取しないこと!】
【体調不良のときは採取せずに病院に来ること!】
【1週間後の定期検診のときに何かに入れて持ってくること!】
【しっかり栓をして、常温か人肌温度で保つこと!】
血液を採取…?
定期検診…??
これオオカミのやつか?それともカッピーか?
どっちにしろ獣人にも病院ってあるんだな…
玄関からまた大きな音がする。
「うわぁっ何!?」
玄関の方へと歩いていく。
「は、はーい…」
玄関を開ける。
「え?」
クマ?
玄関を勢い良く閉める。
待て待てまずいまずい
オオカミから言われただろ館の近くのクマに殺されるなって!!
マジで来るとは思ってなかったんだが!?
てかこれ玄関破壊されそうなんだけど
玄関が外からの力で曲がりそうになっている。
「ヤバイヤバイやめてくれ!!」
玄関の一部が壊れ始める。
「あっ」
あ〜これ無理だわ…
クマが玄関を壊して入ってくる。
2匹いるし…終わった…
「こっち来ないでくれ…!」
「ズリズリと寄ってくるな…!!」
第九幕本編終盤に続く