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第二十八幕 狩人の好奇心

〈…オオカミだよ。ドクバオオカミ〉

「はっ??」

『えっ!?』

二人は同時に声をあげる。

本来、ドクバオオカミは素性を明かすのを嫌う。毛や肉を狙う者に殺されないために。

だからこそお互いほぼ知らない人物に自分の種族を明かした八代に、正気かと驚きの目を向ける。

〈なんだよ〉

〈別に、私を狩ろうってことで聞いたんじゃないんだろ。狩人たる者が獲物にそんな質問するわけない〉

「いや、でも…!」

そう言って樫見に視線を移すと、そこにはただ狩人としてではなく、個人としての好奇心の目を持った樫見がいた。

〈まぁそもそもさっきから耳やら尻尾やら牙やらをじっと見られてたからな。この私がそんな視線に気づかないわけがない〉

【さすがドクバオオカミ…!!】

キラキラとした目で八代を見つめる樫見。

『だ…だとしても、なんでそんなに気になるの…??』

【そりゃあもう…!!】

【噛まれたいから!!】

「………」

『………』

〈…はぁっ?〉

視線には気づいていた八代も、予想外の返答だったらしい。

【だって!!気になるじゃん、毒!!】

そんな様子も気にせず、樫見は立ち上がり、八代へと近づく。

そして片膝をつき、八代の手を取る。

【お願いします!!一回噛んでください!!!】

〈いやいやいやムリムリムリムリ待ってマジで気持ちわりぃ!!!〉

全力で首を振った八代は、座っていたソファを盾にするようにして樫見と距離を取る。

〈はぁ!?なにマジで急に!!自分から死ににいくやつがあるかよ!!!ってか触んな!!!〉

【大丈夫絶対死なないから!!!】

〈無理!!絶ッ対にヤダ!!!キモいマジで!!!〉

「ちょっ、うるさっ!!」

『耳壊れるって!!』

そのとき、ドアが風を切る勢いで開いた。

《何!?どしたの!?りなちゃん大丈夫!?》

〖なんかあった!?〗

騒ぎを聞きつけた天野と矢形が駆けつけてくれたらしい。

一旦樫見を元の位置に座らせ、事情を説明する。

《えっ??マジ??》

「マジ…」

〖えーと…うん…その…〗

《ドクバオオカミの毒って…耐えきれなかったら死んじゃうってこと、分かってます…?》

【もちろんそれは分かってます!】

【でもドクバオオカミに噛まれて死ねるんなら別に…】

想像してしまったのか、恍惚の表情を浮かべる樫見。

〈キモいキモいキモいキモい〉

天野の後ろで顔面蒼白になりながらそう呟く八代。

〈人に急に噛んでくれって言うとかマジどういう神経してんのほんとにありえないんだけど何この人怖い怖い怖い怖い無理無理理無理〉

《ま、まぁ、そう言わないで…》

〖…見た感じ、血管は浮き出てないし…毒入ったら無理だと思う〗

《だよねぇ…》

【血管?】

〖血管がここに一本だけ浮き出てれば、毒に耐えられる証拠なんですけど…樫見さんはそれが無いので耐えられないと思いますよ〗

【そうなんですか!?初めて知った!!】

樫見さんは耐えられない、という言葉は聞こえなかったかのように目を光らせる。

【というか、毒だけではないんですよ?別に】

「と、言いますと?」

【おっきな尻尾とか…耳とか…身体能力の高さも良いですよね!小柄な子とかだとその身体能力とのギャップがまた良いし…ドクバオオカミは意外と単独でも生きていけるっていうのも強くてかっこいいですよね〜、性格にはよりますけど。怒ったときはすっごく怖いのに気を許したあとだとゆる〜くなるのもかわい】

〈もういい黙ってくれ!!!〉

【え〜、まだ喋りたいことあるのに…】

《毬ちゃんぐらいの熱があるんだね…》

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